瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
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c6961b38.JPG 盗跖(とうせき、春秋戦国時代の大盗)の手下が、跖に問うた。「盗みにも道があるんですかい」/跖、「あるどころか。①考えて獲物の当たりをつけるのが聖よ。②先に押し入るのが勇よ。③殿(しんがり)に逃げるのが義よ。④公平に山分けするのが仁よ。⑤潮時を見るのが智よ。 この五つを備えずに大盗となれた例(ためし)はない」/ことほど左様に、盗賊の心も聖人の道をたよって流行るのである。/はてさて『老子』にはいう。「絶聖棄智、民利百倍(聖を絶ち智を棄つれば、民利百倍す)」(淮南子・道応訓第十二より)

 『荘子』盗跖篇では、この大泥棒の盗跖が孔子と問答して言った。「……世間で賢者といわれる伯夷・叔斉は孤竹国の王位を辞退して首陽山で餓死し、屍は野晒しとなった。鮑焦は行いを飾り世を誹っていたが木を抱いて死んだ。申徒狄は諫言して聴かれないので石を背負って河に投身し魚の餌となった。介子推は至忠の男で、文公に自分の股肉を切って食べさせたが、文公が後に子推を見捨てたのを怒って木に抱き付いて焼け死んだ。尾生は橋の下で女と会う約束をしたが女が来ない。そのうち水嵩が増してきたのに待ちつづけ、橋桁に抱き付いて死んだ。この六人は磔にされた犬、溺れ死んだ豚、割れ瓢箪をさげて物乞いして歩く者と変わらない。みな名を重んじて命を軽んじた。命を大切にすることが根本であることを忘れている。……」と、儒家の信義を嘲った。/結局、孔子は再拝して小走りで門を出ると、車に乗り、手綱を取ろうとして三度も取り落とし、目は茫然としてみえず、顔色は死人のようで、軾(しょく)に縋(すが)って頭を垂れ、しょげかえったというのである。
80859c72.JPG 『史記』蘇秦列伝では、縦横家で名高い蘇秦が燕王に言った言葉として、「信なること尾生の如きは、女子と梁下に期して女子来たらず、水至るも去らず、柱を抱いて死せり」という記載がある。尾生を信義厚い男と誉め、ついで自分も尾生と同じく信義に厚いと売り込んだのである。

 マニフェストを金科玉条として、信義を貫くのも善かろうが、くれぐれも溺れ死ぬ豚にならぬようにお願いしたいものだ。今朝の3大紙の社説から。
社説:民主党予算要望 公約を「密室」で破るのか ―― 政権の信頼に直結する問題である。民主党は来年度予算編成に向けた要望でガソリン税などの暫定税率の維持と「子ども手当」支給への所得制限の導入を求め、マニフェスト根幹部分の事実上の転換を要請した。/さきの衆院選で民主党が国民に示したマニフェストの実現については、私たちも優先順位をつける必要を認め、各種の世論調査でも完全実施にこだわるべきでない、との意見が強い。だからといって、十分な議論と国民への説明もなく党の要請で唐突に変更するのでは、国民との約束は何だったのかということになる。/政治責任をかけて公約を「必ず実現する」としていた鳩山由紀夫首相の過去の発言は重い。仮に転換するのなら理由をきちんと説明し、国民に謝罪すべきである。/「党の要望は国民の思いを背に受けた要望で大事にしたい」--。小沢一郎幹事長からの要望に関し、首相は記者団にこう語ったという。だが、首相の心中にあるのは身動きが取れなくなった中で、助け舟を出された安堵(あんど)ではないか。公約実現に必要な財源確保には国債の大量増発しか道がなく、首相が追いつめられていた客観状況は理解できる。/かといって、小沢氏主導の下、党の要請で予算編成直前に主要公約をいきなり転換しようという、今回の過程はあまりに乱暴だ。党が集約した陳情は「国民の思い」ともちろん、イコールではない。しかも、公約転換という重大決定に理解を得るための党内論議が国民の前で尽くされてもいない。そもそも鳩山内閣は政府・与党の一元化による政治主導実現を目指していたはずだ。党の要望通りにさっさと公約を転換するのであれば、自公政権以上の「党高政低」である。/特に「子ども手当」への所得制限の導入は首相が「子どもを社会全体が育てる発想。所得制限を考えないのが基本線」と説明してきたはずの制度の理念の変更にかかわる。実際に導入する場合の「線引き」や、所得把握の問題をどう、解決するのか。定額給付金の同じ問題で麻生政権が迷走した轍(てつ)を踏まぬためにも、制限の見送りを求めたい。/ガソリン税の暫定税率に関しては、民主党が公約していた廃止の見合わせはやむを得ないと私たちも指摘してきた。ただし、それは環境税制をめぐる制度設計の議論などと並行すべきであり、問答無用のような転換では、国民の理解は得られまい。/政権公約の完全実施をめぐり寛容な世論があるからといって、あからさまに軽んじるようでは、国民から必ず手痛いしっぺ返しを受けよう。首相は決して、有権者を甘くみてはならない。(2009年12月18日付 毎日社説)

438a581b.JPG 来年度予算 バラマキ公約の是正は当然だ ―― 民主党が、来年度予算編成と税制改正に関する「重点要望」を政府に提出した。/衆院選の政権公約(マニフェスト)で掲げた主要政策に修正を加え、一部の政策では事実上の撤回を求めた。/税収の大幅な落ち込みで、必要な財源確保のめどが立たなくなったためだが、もともと、巨額な費用がかかる項目を並べた公約自体に無理があったといえる。/修正・撤回は当然だ。政府はこの要望を踏まえ、税制改正の取りまとめと来年度予算の編成作業を急ぐべきである。/民主党の要望で最も注目されるのは、政権公約の目玉であるガソリンの暫定税率の廃止をやめるよう求めたことだ。/鳩山首相が、来年4月から暫定税率を廃止する方針を再三強調し、政府税制調査会もその方向を打ち出していた。だが、実際に廃止されれば、国と地方はあわせて2・5兆円もの税収を失う。/政府税調はこの税収減の穴を埋めるため、地球温暖化対策税(環境税)の創設を検討してきた。/しかし、暫定税率を廃止すると同時にそれに見合う新税を導入すれば、税収は確保できるが、実質的な公約違反との批判を受ける可能性もある。/むしろ暫定税率をそのまま維持する方が正直でわかりやすい。/環境税に対しては、景気や企業経営への悪影響を懸念する声が強い。慎重に対応すべきだ。/要望には、子ども手当に所得制限を設けることも盛り込まれた。初年度となる来年度の子ども手当の支給額は、半額の月1万3000円だが、それでも2・3兆円の予算が要る。/子ども手当に対しては、景気刺激効果が薄いバラマキ政策だ、との批判がある。どうしても実施する場合は、何らかの歯止めが必要だが、所得制限はその手段の一つになろう。/ただ、手当の財源を捻出(ねんしゅつ)するため所得税の扶養控除を廃止すれば、所得制限を超える世帯は、子ども手当はもらえず、負担だけが増えることになる。所得の線引きや所得を把握する方法などを、早急に詰める必要があろう。/公約の修正・撤回は、小沢幹事長ら党側が“指示”する形になった。「政策決定は政府に一元化する」という当初の政府・与党の合意から見ると、疑問が残る。/政策の現実化は評価するが、マニフェストを変更するのなら、首相はその理由を国民にしっかり説明しなくてはならない。(12月18日付・読売社説)
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