手の「ゆび」の語源をしらべてみると、
〔指の語源は諸説あるが、古くは「および」と言い、さし出して物に及ぶところから、「及び(および)」の意味とする説がよい。/現在では手足ともに「ゆび」と呼ぶが、元は手のものを「指(てゆび)」、足のものを「趾(あしゆび)」といって区別していた。/漢字の「指」は、「手」+「音符旨(シ)」からなる形声文字で、まっすぐに伸びて直線に物をさすゆびを表している。/なお、「旨」には「うまい」の意味があるが、「指」の漢字では音符に過ぎず「うまい」といった意味は含まれていない。〕(語源由来辞典より)
とあります。
指のそれぞれの名前は、親指・人差指・中指・薬指・小指ですが、昔の和語では、おおゆび・塩なめゆび・丈高(たけだか)ゆび・紅さしゆび・ちいさゆびと呼ばれていました。漢語では、拇指(ぼし)・食指・中指(ちゅうし)・無名指(むめいし)・小指(しょうし)といいます。
親指の意味:西洋文化では親指以外の指を握り、親指を上へ向けてのばす動作は良い状態、あるいは肯定を表します(Thumbs up〈サムズアップ〉)。そのまま親指を下へ向けると、否定、もしくは「死ね」を表すことになります。一説には古代ローマの剣闘士における生死をかけた真剣勝負に負けた側の処遇を指示する仕草に由来し、健闘むなしく負けた剣士には賛辞と慈悲の助命としてサムズアップを、卑劣な戦いや臆病な行動に対する不満には親指を下にして止めを刺すよう求めたといいます。こと後者は西洋でははっきりとした敵意のイメージを相手に与える動作として使われています。ゆえに、西洋でむやみにこれを使うと人間関係が破壊されることもあります。
中世の日本では「おほゆび(大指)」と呼ばれ、江戸時代から「おやゆび」の用例が見られるようになったといいます。親指の呼称が定着したのは明治時代以後のことです。日本のボディーランゲージでは、親指は「男」を意味します。日本手話でも「男」または「彼(三人称の代名詞)」)という意味で使われるそうです。「霊柩車を見た時は親指を隠す」「野犬に吠えつかれた時は親指を隠す」など、俗信の対象ともなっています。
人差指の意味:文化によっては、人差し指で他人を指差す行為は無礼に当たり、挑発行為と見なされる場合もあります。人差し指を立て、横に振ることは相手に対する不同意を示すことになります。唇近くで人差し指を立てることは「静かに」「音を立てないように」と相手に注意を促す意味を持ちます。
日本においては、人差し指を鉤型に曲げると窃盗を示します。イタリアでは、子供が美味であることを示す場合、人差し指を頬にあて、ねじるように動かす行為をします。飲茶の習慣では、他人にお茶を注いでもらった際などに人差し指と中指でテーブルを2回叩くことで感謝を表現します。一方、フィリピンでは指でテーブルを叩くことは無礼なこととされているのです。
漢語では人差指を食指と言い、食欲や物事についての興味をしめすことを「食指を動かす」と言いますが、これについては以下の故事があります。
『春秋左氏伝』宣公四年より
楚の人が黿(げん、すっぽん)を鄭の霊公に献じた。公子宋と公子家とが、連れ立って朝廷に上がったところ、子公(子宋)の食指がぴくぴくと動く。子公はその指を帰生(子家)に見せた。
「今までこういうことがあると、わたしはきっと珍しいご馳走にありつくのだよ。」
君の前に出ると(果たして)料理版が鼈を割いているので、二人は思わず顔を見合わせて笑った・公が気づいて笑うわけを訊いたから、子家が(食指のことを)話した。それなのに、大夫たちに鼈のお相伴をさせる段になって、わざと公子を召しておきながら、食べさせない。子公は怒り、すっぽんの鼎に指をすりつけ、その指を嘗め嘗め退(さが)った。公は腹を立て、子公を殺してやろうと思った。子公は子家に先手を打とうと持ちかけたが、子家はとめて、
「家畜でも飼いなれたら殺しにくいものだ。まして主人ではないか」
すると子公は(それならば)子家を公に謗ろうとしたので、子家はやむを得ず従って、夏、二人で霊公を弑(あや)めた。―― 平凡社、中国古典文学大系2、春秋左氏伝より
中指の意味:手の甲を相手に向けて中指だけを立てるジェスチャーは、欧米社会などの英語圏で相手を侮辱する"Fuck You" を意味し、日本でもファックサインと呼ばれています。(くたばれ、くそくらえ)などの侮蔑表現に相当する卑猥で強烈な侮辱の仕草なのです。サインを出した後、突き上げるようにするとさらに意味が強くなるといいます。
古英語の時代には「こんにちは」のあいさつ、中・新英語の時代は「鳥をすばやく投げる」という意味で、元は汚い意味ではありませんでした。
ちなみに日本の指文字の「せ」は中指だけを立てますが、手の甲を自分に向けます。また、日本手話においての「兄」は手の甲を相手に向けて中指のみを立てるのだそうです。
薬指の意味:薬指はパソコンの語源由来辞典によれば、次のようにあります。
【薬指の語源・由来】
薬指を古くは「ナナシノユビ」「ナナシノオユビ」「ナナシノオヨビ」といい、中世頃から「クスシノユビ」「クスシユビ」、江戸時代から「クスリユビ」「ベニサシユビ」と呼ばれ、明治後半以降、「薬指」が一般的な呼称となった。/「ナナシノユビ」「ナナシノオユビ」「ナナシノオヨビ」の「ナナシ(名無し)」は、中国で薬指のことを「無名指」と呼んでいたことから、その訳語と考えられ、「オユビ」「オヨビ」は「指」をいう古語である。/「クスシノユビ」「クスシユビ」の「クスシ(薬師)」は「薬師如来」のことで、薬師如来が印を結ぶ際に使う指だからという説がある。/「ベニサシユビ(紅差し指)」は紅をさすのに使う指の意味で、「クスリユビ(薬指)」は薬をつけたり、薬を水に溶かしたりするのに用いる指からと考えられている。/「薬師指」から「薬指」への変化は、上記の役割からと考えられているが、それ以前に「薬師(やくし)」を「くすし」と呼んでいる点に疑問が残る。/「薬師」を「くすし」といった場合、「医者」や「薬師(くすりし)」を表し、その語源は「くすりし」の略や、治療する意味の「くすす」からと考えられている。/そのため、「薬師指」と呼ばれていた時点で、薬を水に溶かしてつけるのに用いる指という意味があったとも考えられる。
薬指の由来は、昔、薬を水に溶かす際や塗る際にこの指を使ったことによるという説、薬師如来が右の第四指を曲げている事によるとすめ説があります。和語では薬師(くすし)指、医者指といった、薬と関連する用例の他、紅差し指(紅付け指)ともいいます。最も古い名無し指(漢語では無名指との呼び方がある)もあるそうです。方言の分布状況としては西日本で紅差し指系の用例が多く、東日本では薬指系の用例が多いといいます。
薬指の名称が薬師如来の印相に由来するという説では、第四指が薬指と呼ばれるようになった以降、呼び名からこの指で薬を塗るなどの俗習が広まったとします。
英語ではfourth fingerですが、ring finger が一般的です。婚約指輪は右手の、結婚指輪は左手の薬指に着用するのだそうです。
小指の意味:小指という名は最も小さい指であることに由来しています。漢語では小指(しょうし)、又、「季(すえ)の指」ということから季指との呼び方もあります。
日本では小指は「女」を意味します。「コレ」と言いつつ小指を立てると、(女性の)「恋人」「愛人」などの意味にもにります。
欧米の一部では、男性に向かって小指を立てるサインが重大な侮辱と取られる場合があるそうです。
日本では相手に対する誠意や忠義を示す風習として小指を切るという行為があり、かつては遊女が客に対して自分の小指を切断して渡すという行為があったといいます。また、現代の日本の暴力団では、落とし前の付け方として、小指を詰めることがしばしば行われていました。
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日本語で、指は指示や指摘の意味で用いられることが多く、それらに纏わる慣用句がたくさんあります。
・指を折る:指折りの、屈指の、多くの中で指を折って数え上げるほど優れていること。また、数える時の動態。
・指を差す:モノを指で示すこと。人をあざけりそしること。手を出すこと。
・指一本も差させない:他者に少しも非難を許さない潔癖な状態。また人に干渉させないことを言う。
・指の股を広げる:太鼓持ちが遊客をおだてて機嫌を取るさまを言う。
・指果報:指紋を見て占いをすること。転じて、思いがけない幸せ。
・指を咥える:うらやましがりながら、手を出せずにいる。また、きまり悪そうにする。恥ずかしそうにする。
指を用いて数える時は、人差し指を立てて 1、さらに中指を立てて 2、さらに薬指を立てて 3、さらに小指を立てて 4、さらに親指を立てて片手を広げて 5 を表します。両手を使うと 10 までを表せます。また左右の手の指に限らず、親指と人差し指で円を作ることで 0 を意味することがあります。
独特ではありますが、二進数の表記に指を用いることがあります。またその時は片手で 31 まで、両の手で 1023 までを表すことができるのです。ただし、数によっては(特に薬指を立てる場合)表すのが困難なものがあります。
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