瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
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  同じ『補助定理集』(Book of Lemmas)の中には、角を三等分するArchimedes(アルキメデス)の挿入法が示されているという。
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0c70c4bb.jpeg Archimedes(アルキメデス〕によれば、「二箇所に印のついた物差し (これは普通に売っている, 目盛り付の物差しで十分である) とコンパスを用いると、 角は容易に三等分される」というものである。(左図参照)
 
 以上示すようにArchimedes(アルキメデス)は目盛りを打つことができる定規を作図問題に取り入れている。これを使えば、線分を写す、二つの直線(または円)を書く、点をとるといったようなことができるので、与えられた点を通りその点で互いに交わるいくつかの直線を描いて、それらに交わる別の直線から、与えられた線分と同じ長さのところにある点をとるといったようなこともできる。これをギリシャ人は直線が点に向かっていくように見えることから「傾向」という意味の neusis(ニュアシス) と呼んだ。
 この作図はユークリッドの原論が扱っている幾何学の範囲を超えるものであり、ユークリッドの幾何学では neusis に関する公理も定理もそもそもその存在さえも扱われておらず、したがってそれをつかった作図もすることはできない。この広い意味の幾何学では、既知の長さから三次または四次方程式の解として得られる比を持つ長さならば作図できる。これは目盛りの打てる定規と neusis を使えば角の三等分および立方倍積ができるということである(一方、円積問題についてはやはり不可能なままではあるが)。これによって、正七角形などいくつかの正多角形が作図可能となり、John Horton Conway〔ジョン・ホートン・コンウェイジョン・ホートン・コンウェイ、 1937~ 、イギリスの数学者」はその様なもののいくつかについて作図法を与えているという。それでも正十一角形など無数に作図不可能なものが存在するのである。
 
 作図題に言う「定規」「コンパス」は現実世界にある実物のそれではなく(参考にはしているけれども)、可能な作業が決まっている仮想的な存在である。そのため、思考実験の一種としてサイズに関しては現実的にありえない無茶なことも想定できる代わりに、実物にできることのいくつかははっきりと禁止される。
 「コンパス」はいくらでも小さく、またはどこまでも大きく半径を取ることのできる、仮想的なもので、広げて任意の長さを測り取ることもできる。ただし、測り取れるのは既に作図されている二点間の長さとしてだけである。なお、「コンパス」本体に角度を表示する目的などで目盛りなどの印を打つことはできない。また、作図の作業においては軸は既に作図された点に固定されるものとし、定規や線の上を引きずって線を引くような用途には使用できない。
 「定規」はいくらでも長くまっすぐな線を引くことができる。ただし、「定規」に目盛りを打つことは許されない(目盛りがあっても長さを測るのには使わない)。また「定規」だけで引けるのは同時に一本だけであり、複数の平行線を同時に引くようなことはできない。「定規」でできるのは既知の任意の二点を線分で結ぶこと、およびそれを延長して直線にすることである。
 仮に目測や近似を使って何らかの作図ができたと主張しても、それは作図問題に答えたことにはならない。間違いなく確実に決まっていることが必要なのである。もちろん(いくらきちんと点や線が作図できたとしても)、目盛りのある定規を使ったり、変形コンパスや分度器その他の道具、手段を利用してはならない。そのようにして得たものは定規とコンパスを用いた作図問題の解決とは無関係な存在だからである。
 
 これらの条件から、定規とコンパスによる作図でできることは原理的には次に挙げるような作業のみであり、既知の点、直線、円たちからはじめて、それらの作業を有限回組み合わせて繰り返すだけで必要な点や長さを得ることができるならば目的の作図が可能、できなければ目的の作図は不可能であるということになる。
e5e21a5a.jpeg ①既知の二点に対し、それらを通る直線を引く。
 ②既知の一点を中心とし、それ以外の既知の点を通るような円を描く。
 ③互いに平行でない既知の二直線から、その交点を得る。
 ④既知の円と直線から、その高々二個の交点を得る。
 ⑤既知の二つの円から、その高々二個の交点を得る。  (以上、左図参照)

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