瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
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c74fa1df.jpeg 牛の問題:問題は「おお盟邦の友よ、ヘリオスの牛の群れを算(かぞ)え給え…」で始まる22の対句、44行のepigram(エピグラム)という詩の形で示されている。白、黒、黄、斑の各色にそれぞれ牡と牝がいて、牛の種類は計八種類である。Archimedes(アルキメデス)が発見し、アレクサンドリアにおいてこのような題目の研究に携わっている人びとにあてた形をとって、Cyrene〔キュレネ、現リビアにある古代ギリシア都市〕のEratosthenes〔エラトステネス、BC275~194年)宛の手紙に入れて送ってきたところの問題という。
 
おお盟邦の友よ、ヘリオスの牛の群れを算(かぞ)え給え
もし君が綿密で知恵をもっているならば。
昔あるとき、シケリアの島のトリナキエの野に幾頭の牛が草を食(は)んでいたのか、
毛色を異にする四つの群れに分かれ
一つは乳白色に 別の群れは黒色に輝き、
ほかの一つは黄、もう一つは斑色(まだらいろ)。
おのおのの群れの牡牛(おうし)は多さにおいて勝(まさ)り
こういう割合になっていた-
白いのは、黒牡牛の半ばと三分の一とに黄なのを合わせた総和に等しく、
おお盟邦の友よ、
黒いのそれ自体は、斑色の四分の一と五分の一とに黄なのを加えた全体に等しいと思い給え。
残るところの斑色のは、白牡牛の六分の一と七分の一とに黄なのを加えた全体に等しいとみなし総え。
つぎに、牝牛(めうし)についてはこうなっていた-
白いのは、黒の群れの総和の三分の一と四分の一とにきっかり等しく、
黒いのそれ自体は、斑の牝牛が牡牛もろとも牧場にいったとき、その全体の四分の一と五分の一との和に等しかった。
黄の群れの五分の一と六分の一との和に等数の多さを、四色斑の牝牛はもっていた。
そして、黄なのは、白の群れの三分の一の半ばと七分の一とに等しいと数えられた。
盟邦の友なる君よ、ヘリオスの牛は幾頭たるか、正確にいい給え、 よく肥えた牡牛の数を、
また牝牛は幾頭なのかを、おのおのの色について別べつに。
君は数について不案内だとか苦手だとかといわれたくはあるまいが、
これっぽっちではまだなかなかに知恵者の数にははいらないのだ。
さあ、示し給え、ヘリオスの牛がまたこういう性質をすべてもつように-
白い牡牛がその頭数を黒いのに混ぜ合わせたとき、奥行きも幅も等しい長さ(正方形)にぎっしりと居並び
四方八方にさしも広いトリナキエの野もその頭数で埋め尽くされてしまったという。
また、黄のが斑のと一つ塊(かたまり)に集まったときには、その数が一からはじまってしだいにふえ
ちょうど三角数を形づくったときのような形に居並んだ-
ほかの色の牡牛が加わることもなく、また余ることもなしに。
おお、盟邦の友よ、もし君がこれらの条件を同時に満たすように発見できるなら
これらを心の中で結び合わせてすべての測度を示すことができるなら勝利を占めて誇ろうではないか、
そして、君がこの種の知恵にかけて完璧(かんぺき)であると判定されるにいたるのをみようではないか。
 
 William Wordsworth〔ウィリアム・ワーズワース、 1770~1850年、イギリスの代表的なロマン派詩人〕が『The Prelude〔プレリュード、序曲〕』第10巻の終わり近くに、「山に生まれ、羊飼いのあいだで育った私は/ごく幼い小学生のころから、シチリアを夢みるのが/大好きだった。……」といい、この島の生んだ著名な人として、「哲学者ないし詩人の、あのEmpedocles〔エンペドクレス、BC490?~430年頃、古代ギリシアの自然哲学者、医者、詩人、政治家〕とか/深く静かな魂の持主、Archimedes(アルキメデス)! とか/それに、ああテオクリトスよ、……」(国文社、昭43)と歌っているように、アルキメデスにやや先だって、同じくSiracusa(シラクサ)から最初の牧歌詩人Theocritus〔テオクリトス、生存はBC310乃至318~270年頃とされるが詳細は不祥〕が出ているが、この詩でつづられた「問題」は、牧歌の故郷から大都市アレクサンドリア在住の数学者たちに贈るにふさわしいものであったのである。
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