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ねぎは大きく分けて「白ねぎ(根深ねぎ・長ねぎ)」と「青ねぎ(葉ねぎ)」があります。東日本では白い部分を食べる白ねぎが好まれていて、西日本は根元まで青い「青ねぎ」が一般的になっています。
 どちらも食べる部分は「葉」ですが、白ねぎは深いところまで土寄せをして日に当たらないようにすることで白い部分を多くしています。白ねぎは甘味があって煮込み料理や焼き鳥などに最適。青ねぎは香りがよく、炒め物や薬味に活躍します。

 ねぎの原産地は諸説ありますが、中国の西部または西シベリア南部のアルタイ地方ではないかといわれています。中国では古代から栽培されていて、6世紀頃の書物には栽培法が記されているそうです。
 ヨーロッパへは16世紀の終わり頃に伝わり、アメリカへは19世紀に入ったと考えられています。ただしヨーロッパでは西洋ねぎの「リーキ」が好まれたため、ねぎは普及しませんでした。ちなみにリーキの原種は古くから存在し、古代エジプトやギリシャ、ローマなどで栽培されていたといわれています。

 2千年前の中国の文献の『礼記(らいき)』では、ネギは「野菜の中の筆頭」だとさえ述べられ、その調理法も記されています。
※ 膾:春用蔥,秋用芥、豚;春用韭,秋用蓼。(礼記「内則」より)
  訳 膾(かい、二句のなます)には、春は葱を付け合わせ、秋は芥子を付け合わせる。また、豚肉には、春は韮を付け合わせ、秋は蓼をつけあわせる。
 『爾雅(じが)』(前2世紀ころ)に「茖(かく)、山葱(さんそう)」(茖は山葱である)とみえ、荘子(そうし)は「春月飲酒茹葱(くうねぎ)、以(もって)通五臓(ぞう)」と語り、『礼記(らいき)』(前1世紀ころ)には「凡膾、春用葱」(膾(なます)は春にはネギを用いる)と載っています。古代の中国では重要な野菜で、『斉民要術(せいみんようじゅつ)』(6世紀)には葱、葱白、葱頭をあわせて67の調理法が記述されていますが、それはショウガに次いでいます。

 日本の平安時代中期に作られた辞書である『和名類聚抄』の記述を根拠として、ネギは中国から日本に伝えられたと考えられています。

 5世紀までに渡来したと推定され、『日本書紀』の仁賢(にんけん)天皇6年9月条に秋葱(あきき)の名が出ています。

 平安中期の『倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』は葱和名紀(き)、冬葱和名布由木(ふゆき)をあげ、品種の分化をうかがわせます。

 貝原益軒の「大和本草(1709年)」には、ネギによって死人を蘇らせる話が紹介されています。かつてネギは、薬用に用いられたのみならず、呪術的色彩をも持っていたのです。それ故に、神事や祭事に使われていたのです。

 ネギの名は江戸時代に広がり、千住、加賀、九条の3系に大別されるネギの品種群も、江戸時代には成立しました。加賀系は耐寒性強く、積雪に耐える北方型のネギで、葉は太くて、分蘖(ぶんげつ)は少ないようです。その代表の下仁田ネギ(群馬県)は200年余りの歴史をもち、江戸の将軍に献上したので、殿様ネギともよばれたそうです。

 ネギの日本での古名は「き」といい、このことから室町時代にはネギを隠語で「一文字(ひともじ)」ともいいました。「き」には「葱」という字が宛てられました。江戸中期に編まれた国語辞書『倭訓栞』によれば、「き」という名は「臭気」の「気」に由来しているといいます。「葱(き)」の根と考えられた部分(実際には葉の基部)を食べることから、次第に「根葱」と書き表すようになり、「白根」や「根深(ねぶか)」という別名も付けられました。

 「分け葱(わけぎ)」とは葱が株分かれしているという意味ですし、「浅つ葱(あさつき)」とは比較的香りが弱い葱という意味です。また、色を表すときにも使われています。「萌葱(もえぎ)」とは「葱(き)の芽のような緑色」のことを指しますし、「浅葱(あさぎ)」という色は薄い青緑色を指す言葉です。「萌黄」や「浅黄」と書かれる場合もあるようですが、これは音から当てた字であり、黄色には関係ありません。さすが、古くから食べられてきた「ネギ」だけあって、ずいぶん生活に関係しているようです。

 芸人仲間にて浄瑠璃や歌謡の節の下手なことを「葱(ねぶか)」といいます。葱には節がないからいつたものです。上方にては葱のことを「ねぶか」といいます。


 


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