葦を詠める歌7
巻13‐3272:うちはへて思ひし小野は遠からぬその里人の.......(長歌)
原文:打延而 思之小野者 不遠 其里人之 標結等 聞手師日従 立良久乃 田付毛不知 居久乃 於久鴨不知 親<之> 己<之>家尚乎 草枕 客宿之如久 思空 不安物乎 嗟空 過之不得物乎 天雲之 行莫々 蘆垣乃 思乱而 乱麻乃 麻笥乎無登 吾戀流 千重乃一重母 人不令知 本名也戀牟 氣之緒尓為而
万葉集 巻13‐3272
作者:不明
よみ:うちはへて 思ひし小野は 遠からぬ その里人の 標結ふと 聞きてし日より 立てらくの たづきも知らず 居らくの 奥処も知らず にきびにし 我が家すらを 草枕 旅寝のごとく 思ふそら 苦しきものを 嘆くそら 過ぐしえぬものを 天雲の ゆくらゆくらに 葦垣の 思ひ乱れて 乱れ麻の をけをなみと 我が恋ふる 千重の一重も 人知れず もとなや恋ひむ 息の緒にして
意訳:ずっと前から思っていた小野は、遠からぬ里人が標(しめ)を結んだと聞いた。そう聞いた日より私はどうしてよいか手段も浮かばず、お先真っ暗になり、居ても立ってもいられなくなった。住み慣れた我が家すら、草を枕の旅寝のごとく思われ、胸の内は苦しく、やり過ごすことが出来ない。ゆらゆら揺れる天雲のように、また葦(よし)垣のように思い乱れる日々。桶のない麻のように思い乱れ、この恋いごころも千に一つも彼女に知られることもなく、人しれずしきりに恋い焦がれるばかり、息も絶え絶えに。
左注:右二首
注訓:右二首
巻13‐3279:葦垣の末かき分けて君越ゆと人にな告げそ事はたな知れ
巻13‐3345:葦辺行く雁の翼を見るごとに君が帯ばしし投矢し思ほゆ
巻14-3445:港の葦が中なる玉小菅刈り来我が背子床の隔しに
◎当時の東国の庶民の家は、竪穴式住居で、単室でした。そこに家族が皆でいるわけで、なにかプライベートなことがあると、間仕切りが必要になってきます。寝床に間仕切りをするとなると、だいたい何をするか推察がつくでしょう。
港の遊行女婦が宴会などで歌った、との説もあります。皆の笑いを誘い、楽しい会になるのでしょう。あるいは、葦苅り作業中の女たちの歌、とも。当時の状況、生活様式ならではの歌です。
巻14-3446:妹なろが使ふ川津のささら荻葦と人言語りよらしも
巻14-3570:葦の葉に夕霧立ちて鴨が音の寒き夕し汝をば偲はむ
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