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 ビロウド(ポルトガル語: veludo、スペイン語: velludo)は鵞鳥の羽に似て光沢があるので天鵞絨(てんがじゅう)の漢字が当てられました。 柔らかで上品な手触りと深い光沢感が特長で、フォーマル・ドレスやカーテンに用いられます。レーヨンやシルクが一般的で、縫いずれし易く、きれいに縫製するには高度な技術が必要です。英語のベルベット(velvet)です。江戸時代には既に京都で生産されていたらしく、西鶴は雪を頂いた富士山を「白いビロード」にたとえているそうです。当時は高級品で一般庶民は身に着けることも出来ませんでした。

 メリヤスの日本への伝来は、南蛮貿易時代の永禄10年(1567年)から寛永12年 (1635年)の間というのが定説となっています。語源は、当時のポルトガル語のメイアス(meias)、あるいはスペ イン語のメディアス(medias)のいずれかであろうとされます。両語とも意味は「靴下」です。この当て字には「女利安」「女利夜須」「女利弥寿」「莫大小」などが使われていたようで、享保4(1719)年に出た「長崎夜話草」(西川如見)には、メリヤスに ついて、『「女利安」紅毛詞(こうもうことば)なるゆえに文字なく、足袋、手覆(ておお い)、綿糸または真糸にて漉きたるものなり。根本紅毛人、長崎女人におしえたり、 色ものみぞ次第なり……。』といっています。

 古代、魚をとる網やカゴやむしろなどに原型があり、英語でメリヤスをHOSIERY(ホーズ)といいます。ホーズは「靴下」の意味であり、編物の歴史は靴下から始まったということが分かります。1589年イギリスのウイリアム・リーが靴下機を発明したのが今日の編物(ニット)の発端となりました。メリヤス編機が日本に入ってきて、靴下が作られるようになったのは明治になってからです。そして、メリヤスがニットといわれ、織物と肩を並べるまでに発展し、衣料分野で大きな割合を占めるようになったのは戦後になってからのことです。


 


 文政9年頃に編纂されたと思われる「緩草小言」という随筆の中に、『……「莫大小」をメリヤスと言う。石川公勤(詳細不詳)曰く、メリヤスというものはのびちぢみありて、 人の大小あれどいずれへもよく合うものなり。さらば大小と莫く合うという義にてあるべきや、また、俗曲にメリヤスというあるは戯場のあい手に用いるものにて、何の戯にもよく合うものから、これも名くること同じ意なるべし……。』との記述があります。


 当時、メリヤスという言葉は靴下の意味で使われていたことが、以下のよう な古書の記述からもわかます。
「落陽集」延宝3年(1675年)より  唐人の古里寒しメリヤス足袋 - 眠松
「猿蓑」元禄4年(1691年)より   かきなぐる墨絵おかしく秋暮れて - 史邦
                  はきこころよきメリヤスの足袋 - 凡兆
「獨吟集大矢数」井原西鶴      メリヤスはいて蛤蜊踏まれけれ
 


 シッチン(ポルトガル語、setin)は中国の七糸緞(シチンタン)の略で、日本では繻珍とポルトガル語から直接ではなく中国語を介して入ったものでしょう。現代satijn(オランダ語、サテン)と言われているものと同じです。

 襦袢の漢字は当て字で、ポルトガル語の「ジバン」か、その古形「ジュバン」の転訛だといいます。Gibão(ジバン、ジュバン)は「袖の広い上着」を意味するアラビア語の「jubbeh(ジュッバ)」が語源となるそうです。日本の下着は白無垢の対丈仕立てでしたが、南蛮人によって襦袢がもたらされた16世紀頃からは、丈の短い襦袢が流行し、腰あたりまでの「半襦袢」、身丈ほどの「長襦袢」などが作られました。

 カッパは紙やラシャで作ったようですが、ポルトガル語「capa」からの外来語で、漢字の「合羽」「雨合羽」は、江戸時代から使われ始めた当て字です。人が着ると、両翼を合わせた鳥に似るところから「カッパ(合羽)」とうまく漢字を当てています。16世紀頃、日本に来航したポルトガル人によってラシャ製の「capa」が伝えられ、外衣として珍重されていました。

 カッパは厚手で防水性もあるため、雨具としても使われるるようになったのです。明治以降には、防寒具として用いるものが「マント」と呼ばれるようになったため、雨具として用いるものを「カッパ」と呼ぶようになったといいます。

 新井白石の『西洋紀聞下(1709年)』に「其法衣、ポルトガル語には、カッパと言う。昔我俗〈=日本の庶民〉其製に倣ひ、雨衣を作れり」と述べています。

 軽衫(カルサン)はズボンの一種で、ポルトガル語のカルソンcalção(半ズボンの意)に由来します。1617世紀,スペインを中心に西欧で,詰物を入れて大きくふくらませた短いズボン(英語でトランクホーズ)が流行し,南蛮貿易に伴って日本にも渡来しました。

 ふくらんだ半ズボンに長靴下をはいたポルトガル人の姿をまね,短い袴(はかま)に脚絆(きやはん)を付けて作ったものをかるさん(軽衫はあて字)と呼び,くるぶし丈のシャルワール型のズボンとともに,キリスト教信者や武士の間で愛好されました。


 


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