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 南蛮人によって、現代女性でも喜びそうな美しい様々な繊維・織物がもたらされました。(カナキン・ラシャ・ビロウド……)等々、暖かい布団にくるまって寝ることの出来たのも江戸時代中期からであるといいますから、いかに日本人の生活において衣料が乏しかったが分かります。食べ物に続いて、衣服でも南蛮文化は日本人の生活を豊かにしたのです。
 「金巾(カナキン・カネキン)」とは、金巾木綿ともいわれ、細めの単糸を使って平織りにて緻密に織った薄手の綿織物です。あまり衣料には使われず、カーテン・旗・エプロンといったものなどに主に使われます。

 華やかな絹織物より一般的なのは木綿ですが、「木綿」のコットンはアラビア語qutunが仏語を経てcotounからcottonとなったと言います。日本語のカタン糸はその訛りなのだそうです。絹織物と同様に木綿の場合の平織物の代表は「金巾」といいますが、これもポルトガル語のカネキンcanequimに由来するといいます。この中でも目の粗い包帯や肌着用の「ガーゼ」は、原産地がパレスチナ南西部のガザGazaであることに由来するのだそうです。
 金巾の高級なもので、30~40番手の経糸、緯糸合計密度が140本/インチ程度の比較的高密度で、織目をつぶして光沢をつけたものが「キャラコcalico」と呼ばれ、足袋の他にワイシャツやハンカチ、裏地などに用いられます。
 これは綿布が古くからインドの主要輸出品でルネサンス時代にヨーロッパに齎されますが、17世紀以後インドに進出した英国東インド会社がカリカット港(Calicut)を積出港としたので、この名が訛って「キャラコ」と呼ばれたのが由来だそうです。ただ日本でキャラコと呼ぶ場合は、インドとは逆に薄手で織り目が細かい純白の布地を指します。

 canequim(カネキン)は詳しいことはよく判りませんが、どうやらインド西海岸の地名によるもののようです。同じように地名からから出たものにmogol(モール)があります。中国語の表記ムガール「莫臥児」をそのまま用いているのだそうです。

 正徳2(1712)年頃に成った寺島良安の『和漢三才図会』に「按莫臥爾天竺国名、所出之綺、似緞閃而有小異、本朝所織者亦不劣」とあり、インドのモゴル(ムガール)帝国(1526~1857)の所産で、緞子(ドンス)に似ているが少し異なるとしています。わが国には戦国時代から桃山時代にかけて、南蛮貿易によって舶載されたといいます。緞子も地名Damask(ダマスク、現在のダマスカス)の音訳で日本には中国から十五世紀早々に入ってきたと言います。

 羅紗は厚地の紡毛織物の総称。16世紀中ごろ南蛮貿易によりもたらされた毛織物で、ポルトガル語のraxa(ラーシャ)の転訛といいます。組織は平織,綾織、繻子(しゅす)織などあり、縮充(しゅくじゅう)、起毛、毛刈りをして仕上げるので表面はフェルト化しています。

 江戸時代末期から明治初年にかけて、外人の妾のことを「ラシャメン」と言いましたが、このラシャは羅紗のことです。現代ではVonnel(ボンネル)やExlan(エクスラン)などの化学繊維に圧倒されています。

 サラサ(saraça、ポルトガル語)は古代ジャワ語で「まんべんなく撒布した」の意で、ポルトガル語から入ったと言われています。

 和訓栞には「さらさ 常に紗羅紗と書けり、蛮国の名、正にサラアサと云ふ、暹羅染(シャムロ)ともいへり」とあります。

 近松門左衛門も「博多小女郎浪枕(1718年初演)」の中で『愚痴なサラサら云ふではないに、ラシャもない事』と織物名の外来語にひっかけて洒落を飛ばしています。

https://www.youtube.com/watch?v=--7PwlMuhlw


 俳人蕪村も「片町に更紗染むるや春の風」と油絵のような俳句を詠んでいます。


 


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勉強になります
お茶では、最後に道具を拝見するのがお約束で、
茶入の入っていた袋もためつすがめつ見たあと、
「お仕覆は?」と尋ね、
「金欄でございます」くらいなら可愛いのですが
「金地一重蔓中牡丹唐草文金襴 (かなじひとえづるちゅうぼたんからくさきんらん)の写しでございます」など
舌を噛みそうになることもあります。(笑)

そこで模様、織、伝来を説明するのですが、
錦、緞子、モール、間道などは、古くに海外から輸入された名物裂(めいぶつぎれ)として、今も尊び大事にされています。

でも緞子が「ダマスカス」からきた言葉というのには、驚きました。
(「ダマスカス」旧約聖書にも出てくる世界で最も古い都市、そして、現在はシリア擾乱のただ中にある都市ですね。難民のニュースを見て、本当に気の毒に思います。
何にもできませんが。)

手のひらに乗るような小さな袋に、世界の歴史と文化が
込められていることに思いををいたしました。
爺の姪 2016/12/08(Thu) 編集
プロフィール
ハンドルネーム:
目高 拙痴无
年齢:
92
誕生日:
1932/02/04
自己紹介:
くたばりかけの糞爺々です。よろしく。メールも頼むね。
 sechin@nethome.ne.jp です。


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