ウェブニュースより
米大統領選、反主流候補に勢い 社会の不満を吸収 ―― 米大統領選の候補者を選ぶアイオワ州党員集会で、民主党では「政治革命」を唱える最左派のサンダース氏が本命・クリントン氏に肉薄し、共和党は反主流派の代表格、クルーズ氏が勝利を収めた。候補者選びの「初戦」は、民主、共和両党とも既成勢力打破を訴える候補が大きく躍進した。
■民主サンダース氏、格差是正を掲げ互角
「9カ月前、我々には政治組織もお金も、知名度もなかった。だが、今夜の結果はほぼ互角のようだ」/1日深夜のアイオワ州の州都・デモインのホテル。党員集会の結果がほぼ出そろい、支持者が歓喜に沸く集会に現れたサンダース氏は、満面の笑みを浮かべ、かすれた声で胸を張った。/クリントン氏が勝利宣言をしたものの、支持者獲得率の差は1ポイントにも満たず、互角の戦い。サンダース氏が出馬表明した昨年4月の直後は、クリントン氏との支持率の差は40ポイント超で、そもそも無所属の上院議員の「部外者」が、民主党候補として名乗りをあげ、当初は泡沫(ほうまつ)候補と言われた。/サンダース氏は「民主社会主義者」を自任し、ウォール街など一部富裕層と政治の癒着を指摘して「1%の人々のためだけでなく全国民のために働く政府の実現」を訴えてきた。/サンダース氏の選挙戦は特異だ。「億万長者のお金はいらない」と、大企業からの政治献金を無制限に受け取れる「スーパーPAC」(政治行動委員会)と呼ばれる資金団体を持たないと宣言。支持者の中小企業経営者、デレク・リングルさん(31)は「米建国の理念は平等なのに、限られた富裕層にこの国が運営されている。大手銀行などの資金が流れるスーパーPACを持つクリントン氏は支持したくない」と語る。/インターネットを通じた草の根運動で浸透し、平均27ドル(約3300円)の個人献金者数はオバマ氏の過去最高記録を更新。サンダース氏の集会にかけつけた、ムスタファ・ムハマドさん(38)は「支配階層ではなく、普通の市民に寄り添っている」と魅力を語る。/サンダース氏が掲げる貧富の格差是正や公立大授業料無償化、国民皆保険の導入など、既存の制度を大胆に変える「政治革命」に、多くの若者が共鳴する。/大学の学費は高騰し、学生が抱えるローンの平均残高はこの10年で1.7倍に跳ね上がり、約430万円。オバマ政権下でも、上位1%の富裕層の収入は3年間で約4割増なのに、残り99%の人の収入は微減。経済は回復しているが、貧富の格差は広がっている。/そんな米社会が抱える不公平感と格差拡大が、サンダース氏の急速な支持拡大を下支えしている。/1月29日のサンダース氏の集会で声援を送っていたレスリー・フェインさん(27)は「この国の経済格差は手に負えなくなっている」と語る。フォトジャーナリストを目指して大学に進んだが、ローン返済に困り3年で中退。鉄道会社に運転手として就職したが、経営悪化で解雇された。/党員集会後の集会で、サンダース氏は自身の善戦についてこう語った。「アイオワ市民が政治、経済の既成勢力にメッセージを送ったことを誇りに思う」/一方、ウォール街との関係が深いとされるクリントン氏は、若者らの支持が伸び悩んだ。全米規模の世論調査ではサンダース氏をなお引き離しているとはいえ、今後の選挙戦に課題を残した形だ。
■共和クルーズ氏、保守貫く姿勢浸透
共和党の党員集会も、「既成政治」や、米社会への不満が表れる結果となった。/勝利が決まり、支持者の前に姿を現したクルーズ氏は「今日は草の根の勝利です!」と第一声。「ワシントンの政治家が有権者の声に耳を傾けないことを心配しながら見てきた、すべての米国人の勝利だ」と続けた。/12年に上院議員に初当選して以来、クルーズ氏はオバマ政権だけでなく、共和党執行部への反抗を全面的に打ち出してきた。昨年に出版した自伝の導入部分の題は「うそつき」。執行部が保身のため、妥協を重ねていると痛烈に批判。「ワシントンで最も嫌われている政治家」と言われても歓迎し、オバマ政権が進めてきた政策を止められない共和党に対する、有権者の不満を取り込んできた。/大統領選に名乗りを上げたのは昨年3月と、共和党の候補の中でも最初。現在の候補者紹介ビデオでは、その当時に「過激すぎて、支持を集めにくい」などと評されたことを誇らしげに紹介している。勝利集会に駆けつけたデビッド・ブッシュさん(54)は「口先ばかりで、行動が伴わない政治家はもうこりごり。クルーズ氏は言葉の通りに行動する」と評価する。/幼少の頃から憲法と聖書を暗記したクルーズ氏は、大学生時代には全米のディベート大会で優勝した経験も持つ。演説では「小さな政府」「キリスト教の信仰」「強い軍隊」など、典型的な保守の姿勢を徹底しながら、細かい政策までそらんじるのが特徴。支持者のバーブ・サイズマンさん(51)は「信仰に支えられた政治家として、米国の失われたモラルを取り返してくれる」。トム・イーズリーさん(53)は「連邦政府の権限を小さくすることを目指す、真の保守主義者。他の候補者とは違う」と支持の理由を語る。/クルーズ氏は当初から初戦の同州を重視し、州内を行脚。影響力の強い保守の宗教指導者やラジオ番組の司会者からの支持を得た。/そのクルーズ氏に続く支持を獲得したトランプ氏も、立候補当時は苦戦が予想されながらも、従来の政治家への反発を利用し、支持を伸ばしてきた「アウトサイダー」。これまでの政治家を「無能」「馬鹿」とこき下ろし、自分が大統領になれば「米国が再び勝利を重ねる」と訴えてきた。1日の演説では「当初はアイオワ州では10位にも絶対入れないと言われていたんだ」と自慢げに話した。/具体的な政策を語らないことや、「暴言」に対する批判も続くが、支持者のジム・クレマーさん(37)は「世界中で高層ビルを建ててきた人間が馬鹿なわけがない。ビジネスで勝ってきた人間は外交でもうまくできるはずだ」と語る。/事前の世論調査の結果には届かなかったが、党員集会でのトランプ氏の得票率は約24%。クルーズ氏と合わせると約52%で、半数を超えた。ルビオ氏が3位につけて善戦したものの、「アウトサイダー」の人気が裏付けられた。 (朝日新聞DIGITAL 016年2月3日02時40分)
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