(小典山氏若麻呂)
集歌827 波流佐礼婆 許奴礼我久利弖 宇具比須曽 奈岐弖伊奴奈流 烏梅我志豆延尓
訓読 春されば木末(こぬれ)隠(かく)れて鴬ぞ鳴きて去(い)ぬなる梅が下枝(しづゑ)に
意味 春がやって来ると木の梢の葉に姿も隠れてしまって、鴬は、鳴いて飛び去って行く。梅の下の枝の方に。
(大判事丹氏麻呂)
集歌828 比等期等尓 乎理加射之都々 阿蘇倍等母 伊夜米豆良之岐 烏梅能波奈加母
訓読 人ごとに折りかさしつつ遊べどもいや愛(め)づらしき梅の花かも
意味 宴会の人毎に梅の花枝を手折って広間に飾って、宴で風流を楽しんでいるが、なお、愛すべきは梅の花よ。
(藥師張氏福子)
集歌829 烏梅能波奈 佐企弖知理奈波 佐久良婆那 都伎弖佐久倍久 奈利尓弖阿良受也
訓読 梅の花咲きて散りなば桜花継ぎて咲くべくなりにてあらずや
意味 梅の花は咲いて散ってしまったら、桜の花が続いて咲くようになっているではないか
(筑前介佐氏子首)
集歌830 萬世尓 得之波岐布得母 烏梅能波奈 多由流己等奈久 佐吉和多留倍子
訓読 万代(よろづよ)に年は来経(きふ)とも梅の花絶ゆることなく咲きわたるべし
意味 万代の後まで年は区切りを付けてあらたまり来るとも、梅の花は絶えることなく咲きつづけなさい。
ここからが宴に招かれた招待客の第3グループになるようなのですが、官職などを見ると現場レベルの実務官僚のトップという雰囲気です。ですから、歌の方は全般的に「無難」というレベルをでるものではなくて、上級職が詠んだ歌の内容を取り込んで「大過」なく次へ回すという雰囲気を感じています。
今も昔も、お役人とって大切なことは「大過なく」だったようです。
(壹岐守板氏安麻呂)
集歌831 波流奈例婆 宇倍母佐枳多流 烏梅能波奈 岐美乎於母布得 用伊母祢奈久尓
訓読 春なれば宜(うべ)も咲きたる梅の花君を思ふと夜眠(よい)も寝(ね)なくに
意味 春になれば、まことによく咲いた梅の花よ。あなたを思ふと夜も安心して寝られないものを
(神司荒氏稲布)
集歌832 烏梅能波奈 乎利弖加射世留 母呂比得波 家布能阿比太波 多努斯久阿流倍斯
訓読 梅の花折りてかさせる諸人(もろひと)は今日の間(あひだ)は楽しくあるべし
意味 今日の宴会で梅の花枝を手折りかざして指し示す人々は、今日の一日は楽しいことでしょう。
(大令史野氏宿奈麻呂)
集歌833 得志能波尓 波流能伎多良婆 可久斯己曽 烏梅乎加射之弖 多努志久能麻米
訓読 毎年(としのは)に春の来らばかくしこそ梅をかさして楽しく飲まめ
意味 毎年の春がやって来たら、このように梅の花枝を宴の中央に飾って楽しく酒を飲みましょう
(小令史田氏肥人)
集歌834 烏梅能波奈 伊麻佐加利奈利 毛々等利能 己恵能古保志枳 波流岐多流良斯
訓読 梅の花今盛りなり百鳥(ももとり)の声の恋(こい)しき春来るらし
意味 梅の花は今が盛りです。多くの鳥の声の恋しい春が来たらしい。
(藥師高氏義通)
集歌835 波流佐良婆 阿波武等母比之 烏梅能波奈 家布能阿素比尓 阿比美都流可母
訓読 春さらば逢はむと思ひし梅の花今日(けふ)の遊びに相見つるかも
意味 春がやって来たら逢おうと思っていた梅の花のあなた。今日の宴会であなたに逢うことが出来るでしょう。
(陰陽師礒氏法麻呂)
集歌836 烏梅能波奈 多乎利加射志弖 阿蘇倍等母 阿岐太良奴比波 家布尓志阿利家利
訓読 梅の花手折りかさして遊べども飽き足らぬ日は今日(けふ)にしありけり
意味 梅の花枝を手折り広間に飾って宴会に臨んでも、なお、風流に飽きることのない日は、今日なのだなあ。
(笇師〈さんし〉志氏大道)
集歌837 波流能努尓 奈久夜汗隅比須 奈都氣牟得 和何弊能曽能尓 汗米何波奈佐久
訓読 春の野に鳴くや鴬なつけむと吾(わ)が家(いへ)の苑(その)に梅が花咲く
意味 春の野に鳴くよ。その鴬を呼び寄せようと、私の家の庭に梅の花が咲くことよ
(大隅目榎氏鉢麻呂)
集歌838 烏梅能波奈 知利麻我比多流 乎加肥尓波 宇具比須奈久母 波流加多麻氣弖
訓読 梅の花散り乱(みだ)ひたる岡(をか)びには鴬鳴くも春かたまけて
意味 梅の花の散り乱れる岡べには、鴬が鳴くことよ。春の気配が濃く。
sechin@nethome.ne.jp です。
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