「三和土」「長押」「上がり框」などは住まいに関する言葉です。仮に読めたとしてもそれが具体的にどの部分なのか、由来は? となると、頭をかしげてしまいます。
三和土:音を考えても字面を見てもなぜこれを「たたき」と読むのか判断できません。これは土間に塗る土の作り方を表しているのです。石灰・赤土・砂利の三つを和(あ)えた土に苦汁(にがり)を混ぜたものだから「三和土」と書くのです。それを「たたき」というのは、水で練って土間に塗りたたき固めるからです。玄関の土間と床の段差が大きい場合に設置される板のことを「式台」と言いますが、元々は武家屋敷にて、来客者が地面に降りることなく、 かごに乗れるように設けられた板の間のことだったのです。
鴨居:引き戸・障子などを立てる、出入り口などの上の溝のある横木のことです。鴨居の由来にはいくつかありますが、これといって決まったものはありません。アイヌ語で神様を「カム」といいますが、神様が居るということで「カムイ」から名づけられたという説があります。「鴨」とは水鳥の総称で浮かぶ鳥を意味します。つまり床と天井の間に浮いたようにある水平材です。そして「居」ですが、これは人が潜る(くぐ・る)という意味です。同じような意味で使われているのが「鳥居」の居。神社の入口にありますよね。「鳥」とは一直線の道筋を意味します。神の社へ続く真っ直ぐな道の入口に建立したものが鳥居です。
長押:鴨居(かもい)の上や敷居の下などの側面に取り付けた,柱と柱の間をつなぐ横材のことをいいます。長押という言葉は、長い押材(へしざい)から来ているといいます。太い原木から何本もの材料を取るのではなく、適当な太さの樹木から一本だけ削りだした均整の取れた角材を押角といいます(この字は「へし角」とも「おし角」とも読まれる)。長押は和室の室内に太い水平線を引いて意匠を安定させる化粧、つまり飾りなので、場所によっては柱以上に目立ち、したがって水平性を強調するようなきれいな柾目(まさめ)を持つ押角を使われることが多いので、この名が生じたのだろうといいます。つまり、「おしあいへしあい」にも通じる「へし」の長い物「ながへし」がなまって「なげし」になったということですかね。武士の城館では討入られた場合の室内戦闘に使うために長押の上に小石を置き並べててそうで「投石(なげいし)」が「なげし」二なったという説もあるそうです。
上り框:床の間や縁側、土間から一段上がったゆかの一番手前にある化粧横木のことを「框(かまち)」といいます。建具のとびらの枠木も「かまち」と言うそうです。定義も曖昧なら語源も曖昧――端っこにかませるというあたりが由来になっているんでしょうか。上り框(あがりがまち/あがりかまち・上框)は、主に玄関の上がり口で履物を置く土間の部分と廊下や、玄関ホール等の床との段差部に水平に渡した横木をいいます。
しめ縄は、標縄、注連縄、七五三縄、など様々な表記があります。「標」は、皇室や貴人が占有し、一般の者の立ち入りを禁じた野が標野(しめの)と言われるように、「標」は「占める」の意味を以ているため、「標縄」と書くそうです。「標」は「占める」の意味を以ているため、「標縄」と書くそうです。「注連」は、中国では、人が死んで魂が外に出たとき、戻らないように水を注いで清め、縄を連ねることを注連(ちゅうれん)といい、その字を使って注連(しめ)と読むようになったようです。「七五三」は、今ではなかなかありませんが、昔は、しめ縄から、藁を七本、五本、三本と垂れさせていた為、七五三(しめ)という字を用いたそうです。
しめ縄は、本来「尻久米縄」(しりくめ縄)と云われ、古事記に記されたことが始まりなのです。すなわち、しりくめ縄が略されてしめ縄となったのです。古事記の天の岩戸の項に「……即ち布刀玉命(ふとたまのみこと)、尻くめ縄を以て其の御後方(みしりへ)に控(ひ)き度(わた)して、白(まお)して言ひしく、『此より以内(うち)に還り入ること得じ』といひき。」とあります。天の石屋に閉じ籠った天照大御神は、外の不思議な気配に身を乗り出し、天手力男神(あめのたぢからおのかみ)に引きずり出され、後ろには布刀玉命によってしめ縄がかけられて戻れないようになりました。しめ縄は、標縄、注連縄と書かれ、シメは占有のしるしをいいます。神前に、不浄なものの侵入を禁ずるために張ったり、立ち入り禁止のしるしとして張り巡らせたりしました。今でも神社や神棚、地鎮祭に見られます。
七五三縄(しめなわ)のように数字のついた熟語にも本来の音からはとても想像もつかない読み方をするものがあります。たとえば、四阿(あずまや)は、日本庭園の小さな丘の上や池のほとりなどに設えた休憩用の壁のない小屋のことです。「阿」には庇(ひさし)という意味があり、四方に屋根を葺き下ろした建物なのでこのように書きますが、「東屋」「阿舎」と書くこともあります。「五月蠅い」という当て字を作ったのは夏目漱石で著書【坊ちゃん】の中で「五月蠅い」と表記したことからこの宛字が世に広まりました。五月になると蠅が出始めてうるさいというイメージから当てはめたのでしょうね。「九十九折(つづらおり」)は葛の蔓のように幾重にも折れ曲がった坂道のことで、葛折とも書きます。だからといって九十九髪は「つづらがみ」とは読みません。老女の白髪のことで、九十九は百に一足りないことから次百(つぎもも)といい、それがつづまって「つぐも」となりさらに濁点が清音化して「つくも」となり全体で「つくもがみ」となったといいます。また、百から一を取り去った白を意味するので、白髪を表すようになったといいます。伊勢物語に「百年(ももとせ)に 一年(ひととせ)足らぬ九十九髪 われを恋ふらし おもかげに見ゆ」という歌が載っています。
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