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其四 海鳴(うみなり)
 
 
晴天と雖も、雨ならんとする時、已ニ海潮の響(ひゞき)、五、六里に聞へ渡りて、南にあり。風雨の日も晴んとする時は、北に聞ゆ。是を以つて、國人(くにうど)、陰晴(いんせい)を占ふ。今、九州灘ニ是と類(るい)する所ありと云へり。然(しか)れども、予が國、此(この)奇、先達(さきだつ)て有(ある)により、今、好事の者、九州灘の中に聞出せりと覺ゆ。予是を按ずるに、數十里の海潮、大山(たいさん)の插(さしはさ)むところ、必ず、汐の差引(さし)き、直流(ちよくりう)すること、あたはず。相戰(あひたゝかひ)て此響(ひゞき)をなせるなるべし。然(しか)れども、陰晴(ゐんせい)に、其氣、自然と南北すること、北越の海に限る、と云へり。故に以(もつて)、奇となすか。唯、享徳年間の舊記に此奇を擧げたるを見る。
注釈
 
激しい上昇気流や逆転層などの海域の大気上の変化によって、通常は聴こえない遠くの岩礁や暗礁或いは岩礁性海岸にぶつかる波濤の音が、ごく近くで聴こえる現象のように思われる。
 
 
遠雷の可能性を挙げる方もおられようが、崑崙は「海鳴」「海潮」「汐の差引(さし)き、直流(ちよくりう)すること、あたはず。相戰(あひたゝかひ)て此響(ひゞき)をなせるなるべし」等、完全に海の波の砕ける音として述べており、「雷の音」と思われるような記載は一切していないことから、それは排除されると思う。また、天候が悪化するのは上昇気流につきものである。高山の山頂で下界の市街の音がびっくりするほどすぐそこのように聴こえるのを何度か経験することあるが、概ね、その後に雨雪となる。
 
「九州灘」玄界灘のことか。後の「汐の差引(さし)き、直流(ちよくりう)すること、あたはず。相戰(あひたゝかひ)て此響(ひゞき)をなせるなるべし」辺りからは周防灘とも思われなくもない。
 
「享徳」一四五二年から一四五四年。足利義政の治世。
 
「舊記」不詳。 


ウェブニュースより
 
姫野!姫野!に地元でW杯初トライ「愛されている」 ――<ラグビーワールドカップ(W杯):日本3819サモア>◇1次リーグA組◇5日◇愛知・豊田スタジアム
 
日本代表NO8姫野和樹(25=トヨタ自動車)が、地元愛知で成長を刻み込んだ。ボール争奪戦で相手の反則を誘発して得点を演出し、後半13分にはW杯初トライを記録。会場は「姫野コール」に包まれ、若き成長株が故郷に錦を飾った。

        
◇    ◇    ◇
 
歓喜の輪の中心で姫野が笑った。1912の後半14分。ラインアウトからモールを押し込み、FWの奮闘をW杯初トライで形に残した。「姫野! 姫野!」と沸く大歓声に包まれ「地元から愛されているんだ」と自分だけの感情に浸った。
 
特別な一戦だった。「慣れ親しんだ場所。多くの地元ファンが見てくれる安心感があった」。名古屋市で生まれ、中学で始めたラグビーに「相手をはじき飛ばしたり、タックルであおむけにする。この体を最大限生かせることがうれしかった」とのめり込んだ。3年で身長は185センチ。地元の春日丘(現中部大春日丘)高ではFWながらキックも容認され、自由に育った。
 
転機は高2だった。宮地真監督(54)との進路相談で、家庭の事情を考慮し「地元に残りたい」と訴えた。だが、日本代表入りを確信していた恩師は認めなかった。「それは違う。能力があるんだから伸ばせ。後から親孝行すればいい」。腹をくくり、進んだ強豪帝京大。日本人離れした才能に知識が加わり、トヨタ自動車入りで地元に戻った。
 
4年前と世界観は変わっていた。社会人1年目から所属先で主将を務め、代表でもリーダー陣に名を連ねた。同じFW第3列のリーチを「超えなきゃいけない人。ライバルなんですけれど、僕が一番好きな人間であり、一番尊敬している選手。彼を超えられたら確実に成長できる」とあえて意識してきた。練習中、隣で走れば1秒でも先着することを意識した。フィジカルが強いサモアに対しても「負けない自信があります。そこは仕事」と意気込んだ通り、体をぶつけ続けた。
 
大一番のスコットランド戦へ、その誓いは力強くなる一方だ。「必ず勝ちます。全勝で良い流れを保って、決勝トーナメントに行きたい」。今の姫野は、立ち止まらない。
◆姫野和樹(ひめの・かずき)1994年(平6)7月27日、名古屋市生まれ。愛知・春日丘高1、2年時に花園出場。帝京大で大学選手権8連覇などに貢献。17年にトヨタ自動車に加入し、1年目から主将。同11月のオーストラリア戦で日本代表デビュー。ポジションはロック、フランカー、NO8。趣味は温泉。187センチ、108キロ。   [日刊スポーツ 201910604]


 

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