瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
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 倒語(とうご)とは、「てぶくろ」→「ろくぶて」などのように、言葉を逆の順序で読む言語現象のことをさします。逆読み、または逆さ読みとも言います。
 逆さ読みを行うことによって、何らかの強調を行おうとする言語活動は、言語や時代を問わず幅広く見られる。逆さ読みした語の語用は、多岐にわたりますが、一般的には隠語のような正式な用法とはみなされない状況で使用されることが多いようです。
 日本語においては、江戸時代に流行したことが有名です。(例:「キセル」→「セルキ」)このうち、たとえば「しだらない」→「だらしない」などのいくつかの言葉は、逆さ読みをした形の語が、正式な語として定着します。「たね」と「ネタ」のように意味が分化し二重語化した例もあります。

 パソコンの語源・由来辞典によれば、
【だらしないの語源・由来】
 だらしないは、同じ意味の形容詞「しだらない」の音節順序を入れ替えた言葉。/「しだらない」の「しだら」は、「自堕落(じだらく)」が訛ったとする説や、「ふしだら」の「しだら」とする説があるが不明。/音節順序の入れ替えパターンはいくつか考えられるが、「だらしない」になった理由には、濁音で始まる言葉は悪い印象を与えるため(一般の和語で濁音が語頭にくるのは例外的で、悪い意味になることが多い)や、擬態語「ダラダラ」と近い印象になるためであろう。/また、「しだらない」から「だらしない」の音節順序が変わったのは、江戸時代に逆さ言葉が流行していたためとも言われるが、逆さ言葉であれば「らだしない」になる。/「だらしない」の語においては、「あらたし(い)」が「あたらし(い)」に変化したことに似た現象と考える方が自然である。
とあります。
 日本における「倒語」という表現の大変古い用例に、日本書紀巻三「能以諷歌倒語、掃蕩妖氣。倒語之用、始起乎茲。」というのがあります。この「倒語」は「サカシマゴト」と読むのが通例で、神話上日本で初めての「倒語」の例とされますが、意味は必ずしも逆さ読みとは限らず、わざと逆のことを言う呪いとか、なんらかの暗語・暗号のようなものとも考えられています(もっとも当時の感覚では、逆にしただけでも十分に一種の暗号であったとも考えられます)。
※ 神武天皇が橿原宮で即位したとき、大伴氏の祖先の道臣命が大来目部を率いて密命を受け、能以諷歌倒語、掃蕩妖氣。倒語之用、始起乎茲。――よく諷歌(そえうた)倒語(さかしまごと)を以って、災いを取り除いた。倒語の用いられたのはここにはじまった――とあります。

 ぐりはまとは、物事が食い違うことや、あてが外れること。室町時代から使われている言葉です。図のように『蛤(はまぐり)』をそのまま逆さまにした文字で書かれますが、漢字辞書には載っていません。

 これは正式な漢字ではなく、「小野愚譃字盡(おのがばかむらうそじづくし)」という本にでている造字(国字)です。

 ハマグリの貝殻は、ペアになっている殻以外ではぴったりと形が合わないという性質を持っています。このことから『はまぐり』の倒語として『ぐりはま』が生まれ、食い違って合わないことを意味するようになりました。「神経衰弱」に似たゲームの貝合わせ(貝覆い)という遊びでは、ピッタリ合わなかった貝殻のことを『ぐりはま』と呼んでいたそうです。

 時に「ぐれはま」と訛り、さらに「ぐれ」と省略して用いられました。この「ぐれ」を動詞化たしのが、「ぐれる」です。予期したことと食い違う意から、脇道へそれる・堕落する・非行化するの意に転じました。ぐれた者たちの一隊に対して、「愚連隊」というもっともらしい当て字の語も生まれたのです。

 刑事のことを「デカ」と呼ぶのはすっかり馴染んでしまっていますが、これは和服に語源があります。和服の中に「角袖」と呼ばれる機能的なキモノがありますが、この「カクソデ」の中の部分を略して「カデ」、それを引っくり返して「デカ」といったところから、すっかり一般化してしまったのだといいます。日本の警察は明治時代の初期、フランスの警察制度を参考にして創設されたもので、警察官の制服もフランス風のオシャレなものでした。これはこれで目立ってよかったのですが、隠密行動をとるには目立ちすぎました。そこで捜査に当たる刑事には私服を着用させることにしました。当時、私服といえば和服しかありません。で、動きのとりやすい「角袖」を着ることとなったのだといいます。そうした刑事は実際に「角袖巡査」とも呼んでいたそうで、そこから犯罪者仲間の中では「カクソデ」→「カデ」→「デカ」という隠語が作られたのです。ちなみに、巡査は黒い脚あてを付けていたため「足黒(アシクロ)」、立ち番をする制服巡査は「ポスト」と呼ばれていたそうです。

 警察関連の言葉については、こうした隠語が多いようです。例えば、警察用語として「ガサ入れ」という言葉がありますが、これは「探す(サガス)」の音の入れ替えによる隠語です。その他には、犯人を「ホシ」と呼ぶのは、「犯人の目星(メボシ)」、「バイニン」という言葉については「密売人(ミツバイニン)」からきている警察隠語だといいます。


 劇場などの傍を通りかかると、スーッと寄って来て、「いい席あるよ」と声をかけて入場券を高く売りつけるダフ屋――「だふ」は「札」の倒語です。倒語は隠語の代表的な手法です。「ねたが割れる」は「種(たね)」の倒語で、「がさを入れる」は「さが(す)」、「どや街」は「宿(やど)」の倒語です。「ポシャる」も「シャッポ(脱ぐ)」の倒語です。


 


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