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蘇軾は好奇心が旺盛でいろんなことに手を出しましたが、料理は自分の趣味にとどまらず、周囲の人々まで幸福にさせることができたとみえます。中でも評判がよかったのは豚肉を煮たもので、人々は東坡肉(トウポーロー)と呼んで、いまでも中国料理の定番として食べ続けているそうです。蘇軾はこの他に、鯉を煮て揚げたものや、風味に富んだ野菜スープなどを考案して、家族や友人たちを喜ばせたといいます。

蘇軾は「食猪肉」という次のような詩も作っています。

 

食猪肉  蘇軾

黄州好猪肉、     黄州の好猪肉、

価賎等糞土。     価賎にして糞土に等し。

富者不肯喫、     富者はあえて喫(くら)わず、

貧者不解煮。     貧者は煮るを解せず。

慢著火、少著水、   慢(そぞろ)に火を著し、少しく水を著さば、

火候足時他自美。  火候足るの時 他(かれ)自ずから美ならん。

毎日起来打一盌、  毎日起来して一盌(わん)を打ち、

飽得自家君莫管。  自家を飽得(ほうとく)するも君管するなかれ。

 

 黄州にはよいブタ肉がありますが、

 値段はゴミ・泥のように安い。

 お金持ちは食おうともせず、

 貧乏人も煮て食う工夫がない。

 ゆっくり火にかけ、水は少しだけにして煮てごらん。

 十分な時間じっくりと火がとおれば、それはおのずと旨くなる。

 毎日毎日(美味いし安いから)一碗づつ食べ続け、

 (ぶたのようなわしは)自分を食べたみたいに腹いっぱいになっているが、おまえさん、気にしなくていいよ。
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