瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
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三つの戒め   柳 宗元

 私はかねがね世間の人が、自己本来のものを追求せず、現象を利用して勝手気ままにふるまうことをにくんでいた。彼らは権勢に寄り掛かって、セクト以外の者を圧迫したり、すきを見つけては暴力の限りをつくしたりする。しかし、最後には禍(わざわい)にあって身を滅ぼすのである。ある客人が私に、麇(なれしか)・驢馬(ろば)・鼠(ねずみ)の三動物についてはなしてくれたが、これらの動物の行動は世間の人のそれによく似ている。ここに三つの戒めを作る次第である。

 

臨江(りんこう)の麇(なれしか)

 臨江(江西省清江)の人が、狩をして麇(なれしか)の子を捕縛した。その人、これをいとおしみつつ家の門に入ると、犬共が涎(よだれ)を垂らし、尻尾を振りながら寄って来た。その人は怒って、犬どもを脅した。それ以来、毎日のように麇(なれしか)の子を抱いては、犬に慣れさせ、麇(なれしか)の子を見ても、手出しをせぬように躾け、次第に遊び戯れるように導いた。時日が経過し、犬どもは主人の意の如くになった。麇(なれしか)の子も大きくなるにつれ、自分が麇(なれしか)であることを忘れ、犬こそ誠にわが友であると思い込み、身体をぶつけたり、転げ回ったりして、ますます馴れ親しんだ。犬は主人を恐れ、麇(なれしか)と大変上手に調子を合わせていた。しかし、時には舌なめずりをすることもあった。三年経ち、麇(なれしか)が門を出たところ、道路によその犬が大勢いたので、走りよっていっしょに遊びたわむれようとした。よその犬は麇(なれしか)を見て喜ぶとともに腹も立て、みなで殺して食べてしまい、道路にさんざん散らかした。麇(なれしか)は死ぬ時まで、自分が何故そのような目にあうのか、理解することができなかった。    〔以上、平凡社「中国古典文学大系23」より転写〕

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目高 拙痴无
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1932/02/04
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 sechin@nethome.ne.jp です。


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