瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
[939] [938] [937] [936] [935] [934] [933] [932] [931] [930] [929]
  暑さ寒さも彼岸までというが、ここの所めっきり秋らしくなった。夜明けも5時半を過ぎなければ、明るくならないし、夕方もも17時を過ぎるともう薄暗くなる。気温もかなり低く、今年は酷暑が続いた所為もあり、何だか駆け足で秋が来たようである。
 
 三夕(さんせき)とは新古今和歌集にある、下の句が「秋の夕暮れ」で終る次の3首をさしていう。
 
e2632c46.JPG さびしさはその色としもなかりけり槙(まき)立つ山の秋の夕暮(新古今361)
                             寂連法師(1139? ~1202年)
〈訳〉なにが寂しいと言って、目に見えてどこがどうというわけでもないのだった。杉檜が茂り立つ山の、秋の夕暮よ。
 
 心なき身にもあはれは知られけり鴫(しぎ)たつ沢の秋の夕暮[新古今362]
                             西行法師(1118~1190年)
〈訳〉心なき我が身にも、哀れ深い趣は知られるのだった。鴫が飛び立つ沢の秋の夕暮れよ。
 
 見わたせば花も紅葉(もみじ)もなかりけり浦の苫屋(とまや)の秋の夕暮〔新古今363〕
                             藤原定家(1162~1241年)
〈訳〉まわりを見渡しても、美しい花や鮮やかな紅葉があるわけではない。海辺の苫葺(とまぶ)きの粗末な小屋が建っているだけの秋の夕暮れなのに、胸に染みてくるこの思いは何なのだろう。
 
4d7f6bcd.JPG 新古今和歌集のこの3首につづく和歌も下の句は「秋の夕暮」で終っているが、四夕としなかったのは、何故だろう。主題が「秋の歌」というより「恋の歌」と見たからだろうか?
 
 たへてやは思ひありともいかがせむ葎(むぐら)の宿の秋の夕暮(新古今364)
                              藤原雅経(1170~1221年
〈訳〉耐えられるものですか。恋しい思いがあるとしても、どうにもならない。こんな、葎の生えた侘び住居の秋の夕暮、とてもあなたの思いを受け入れることなどできない。
 
 「唐詩選」の巻三 五言律詩のなかに、「野望」という秋の夕暮を詠った詩を見つけた。
 
  野望
      王績
東皐薄暮望  東皐(とうこう) 薄暮に望み
徙倚欲何依  徙倚(しき)して何(いずこ)に依らんと欲す
樹樹皆秋色  樹樹 皆 秋色
山山唯落暉  山山 唯 落暉
牧人驅犢返  牧人 犢(こうし)を駆って返り
獵馬帶禽歸  獵馬 禽(とり)を帯びて帰る
相顧無相識  相顧みて 相識 無く
長歌懐采薇  長歌して 采薇(さいび)を懐う
 
〈訳〉夕暮れの迫る頃 東の丘にたって眺めやり
   どこへ身を寄せるあてもなしに歩き回る
   木々はみな秋の色に染まって
   山々はすべて夕日の光
   牧夫たちは子牛を追いながら小屋へともどり
   猟師の馬は獲物の鳥をさげながら帰ってくる
   見まわしても顔を知る者は一人もない
   私は声長く詠いつつ首陽山に薇を採った人を懐かしむ
 
王績(おう せき、585年 - 644年)は、中国・唐の詩人。絳(こう)州竜門(山西省河津県)出身。字は無功。隋末の儒者・王通(おう つう)の弟。隋の官僚となったが、天下の乱れを察し、職を捨てて郷里へ逃げ帰った。唐になってから召し出され、門下省の待詔となったが、仕官を望まず、太宗の貞観初年に辞職して帰り、黄河のほとりの東皐(とうこう)に隠棲した。酒を好み、家の周りには黍(きび)を植えて春秋に酒を造り、鴨や雁を飼い、『易経』『老子』『荘子』だけを座右に置き、東皐子(とうこうし)と号して自由な生活を送ったという。
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
URL
コメント
パスワード Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
プロフィール
ハンドルネーム:
目高 拙痴无
年齢:
92
誕生日:
1932/02/04
自己紹介:
くたばりかけの糞爺々です。よろしく。メールも頼むね。
 sechin@nethome.ne.jp です。


小冊子の紹介
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
最新コメント
[EugenePum 04/29]
[m1WIN2024Saulp 04/22]
[DavidApazy 02/05]
[シン@蒲田 02/05]
[нужен разнорабочий на день москва 01/09]
[JamesZoolo 12/28]
[松村育将 11/10]
[爺の姪 11/10]
[爺の姪 11/10]
[松村育将 11/09]
最新トラックバック
ブログ内検索
カウンター
Powered by ニンジャブログ  Designed by ゆきぱんだ
Copyright © 瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り All Rights Reserved
/