瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
[941] [940] [939] [938] [937] [936] [935] [934] [933] [932] [931]
  永井荷風の小説に『濹東綺譚』があるが、この「濹東」とは隅田川の東岸という意味である。すなわち「濹」は隅田川を表わす字で江戸時代の儒者林述斎((1768~1841年)が作ったものらしいということである。隅田川は元墨田川とも書いたので、墨に川の意を表わすサンズイをつけたものである。
 漢字は表意文字だから扁と旁の組み合わせでいくらでも字を作り出すことができる。火と田を組み合わせて乾いた耕地をあらわす畑(はたけ)という字を作ったもの。畠も白く乾いた田ということからできた字である。漢字は中国で作られた字という意味であるが、濹や畑・畠のように日本で作られた漢字をとくに「国字」という。
 日本で新しく出来たものを書き表すために作られた国字もある。明治の中頃、日本で発明された人力車は、それまで使われていた駕籠より速かったのと、馬よりも人間の労働コストのほうがはるかに安かったため、すぐに人気の交通手段になった。この人力車も「俥」と書いて表わし、「くるま」と読んだ。
 見ただけで想像のつくものも多い。毛を少なくすると書いて「毟(むし)る」、心を永くもつ意で「怺(こら)える」など。
f211227d.JPG
d1a317d7.JPG 国字には日本人の好みや生活が反映されていて、よく使われるツクリに上と下を縦に並べたものがある。ヤマヘンに付けて「峠」、革ヘンに付けて「鞐(こはぜ)」、テヘンに付けて「挊(かせ)ぐ」、木ヘンに付けて「桛(かせ)」、衣ヘンにつけて「裃(かみしも)」などがある。「裃」以外にも着物に関する国字には「裄(ゆき)」「褄(つま)」「襷(たすき)」などがある。裄は着物の背縫いから袖口までのながさのこと、褄は着物のおくみの腰から下の縁の部分を指し、襷は着物の袖の部分を挙げることからつけられたもの。裄と褄は旁の部分の訓読みをあてて作ったものである。芸者のことを「左褄」ということがあるが、これは芸者が歩くときは左手で着物の褄を取ることからきている。
dca19d3a.JPG ほかには旁でよく用いられるも国字に「花」がある。米扁に花で「糀(こうじ)」、米や麦を蒸して麹黴を繁殖させる時、黴が米や麦に花のように付くことからできた国字。金扁に花で「錵(にえ)」、日本刀の刃のところに現れる、銀砂をふりかけたように輝いている雲形の模様をいう。木扁に花で「椛(もみじ)」、木の葉が花のように赤くなることからできた国字で、日本人の国民性がよく表れている。
d15bdf55.JPG 多くの国字は、あまり使われずJISや漢和辞典などからも排除される傾向にある。パソコンの外字エディタを用いて、文字を作成して、これを登録することはできるが、自分のパソコンで呼び出して、文書で読んだり印刷したりすることはできるが、ウェブにのせて相手方に送信したりすることはできないようである。
 
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
URL
コメント
パスワード Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
プロフィール
ハンドルネーム:
目高 拙痴无
年齢:
92
誕生日:
1932/02/04
自己紹介:
くたばりかけの糞爺々です。よろしく。メールも頼むね。
 sechin@nethome.ne.jp です。


小冊子の紹介
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
最新コメント
[EugenePum 04/29]
[m1WIN2024Saulp 04/22]
[DavidApazy 02/05]
[シン@蒲田 02/05]
[нужен разнорабочий на день москва 01/09]
[JamesZoolo 12/28]
[松村育将 11/10]
[爺の姪 11/10]
[爺の姪 11/10]
[松村育将 11/09]
最新トラックバック
ブログ内検索
カウンター
Powered by ニンジャブログ  Designed by ゆきぱんだ
Copyright © 瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り All Rights Reserved
/