瓜の仲間には、だれもが知っているきゅうり(胡瓜)、すいか(西瓜)、なんきん(南瓜)などのほか、とうがん(冬瓜)、にがうり、まくわうり、かんぴょうの材料である夕顔、奈良漬の材料になる白うりなど多くの種類があり、いずれも夏の代表的な食べ物となっています。ふつうは食用にしない瓢箪や糸瓜も瓜の仲間です。中でも、古くは「まくわうり」を特に瓜と呼んでいたといいます。
瓜の語源は、よく熟したものが美味しいことから熟実(うるみ)の意味とか、潤(うる)に通じるからとか、口の乾きを潤(うるお)すから生じた言葉だとか言われています。
菓子類が少ない古代、甘くて美味しいマクワウリはさぞ子供たちの好物だったことでしょうが、正倉院文書によると極めて高価な贅沢品だったようです。奈良漬けに使われるシロウリも粕漬けとして貴族の食膳に供されていたことが長屋王の木簡の記録に見えます。
万葉集での瓜は山の上憶良の1首のみです。特権階級や金持ち以外にはお目に掛かることが少なかったため、詠われることがなかったのでしょうか。
瓜(うり)食(は)めば 子ども思ほゆ 栗(くり)食めば まして偲はゆ いづくより 来りしものぞ まなかひに もとな懸かかりて 安(やす)寝(い)し寝(な)さぬ 万葉集巻5 802
現代語訳
瓜を食べると子どもが思われる。栗を食べるとそれにも増して偲ばれる。こんなにかわいい子どもというものは、いったい、どういう宿縁でどこから我が子として生まれて来たものなのであろうか。そのそいつが、やたら眼前にちらついて安眠をさせてくれない。
今の若い人の中には、まくわうりを知らない人もいるかもしれません。これはメロンのような甘い瓜で、爺たちが子供のころには夏に欠かせない果物でした。そのころは、現在のようにコンビニや自動販売機もなく、ジュースや清涼飲料水は特別な日にしか口にすることができませんでしたが、夏になると、西瓜やまくわうりが必ず井戸の中に漬けてあったり、氷の冷蔵庫に入れて冷やされていました。かぶと虫や蝉を採るために山の中を駆けずり回った後は、西瓜やまくわうりにむしゃぶりついて、咽喉の渇きを潤したものです。現在メジャーな「夕張メロン」や「マスクメロン」も、我々には、まくわうりの仲間としか考えられないのです。
胡瓜の原産地はインドからヒマラヤ山脈周辺で、紀元前10世紀頃から西アジア辺りで栽培されていたようです。当時の胡瓜はにがみが非常に強く、今日までの間、にがみをなくす様に品種改良が進んでいます。
その後、インドやヨーロッパから中国に胡麻(ごま)や胡桃(くるみ)などと一緒に伝来しました。ちなみに胡瓜と呼ばれるのは、中国からみた西方民族の事を『胡』と呼び、そこからきた瓜なので『胡瓜』と呼ばれるようになったようです。
日本には6世紀から10世紀頃中国から伝来しました。その当時は『胡瓜』とは言わず『黄瓜』と呼ばれており、今のように未完熟の青々しいものを食さず、完熟させて黄いものを食用にしていたようです。
河童の好物はキュウリ、魚、果物といわれます。これにちなみ、キュウリを巻いた寿司のことを「カッパ巻き」と呼びます。キュウリを好むのは、河童が水神の零落した姿であり、キュウリは初なりの野菜として水神信仰の供え物に欠かせなかったことに由来するといわれるます。
日本での胡瓜の本格的な普及は17世紀以降になってからで、それほどまで普及が遅くなった要因として、日本の祇園信仰による所の、京都八坂神社の紋が胡瓜の切り口に似ていることで、禁忌作物にされていたことや、葵の御紋に似ているので武士たちが恐れ多いと口にしなかったことなどがありますが、一番有力なのは、当時のきゅうりは非常に苦かったことがあげられるでしょう。
さて、瓜の仲間は夏の食べ物だと言いましたが、中には冬でも食べるものがあります。例えば、冬瓜は、丸のまま保管すると冬まで使えるので冬瓜という名がついたといわれるほど、長期保存が可能な野菜でした。また、カンボジアから伝わったという南瓜も、「冬至かぼちゃに年を取らせるな」ともいうように、冬まで保存が出来、貴重な栄養源でした。 冬瓜の原産地は東南アジアで、ジャワ島の平地には現在も自生しているそうです。中国には3世紀に伝わり、その後中国から日本へ伝わったとされています。野菜として利用するのは主に日本と中国で、特に中国では様々な料理に用いられています。皮にできるろう質の粉を雪に見立てて冬瓜と呼ぶという説もありますが、この粉が全体に均一についていて、しわがなく、ずっしり重い物を選ぶようにします。いくら保存性がよいとはいえ、切ったものは保存が利かないので、家庭では小さくカットされたものを購入するとよいでしょう。 冬瓜はほとんどが水分なので、昔からの民間療法では、身体を冷やし、利尿効果に優れているといわれ、解熱や毒消しにもよいとされてきました。最近では、低カロリーのダイエット食としても注目されています 。
sechin@nethome.ne.jp です。
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