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 茄子の原産地はインドの東部が有力です。その後、ビルマを経由して中国へ渡ったと考えられています。中国では茄もしくは茄子の名で広く栽培され、日本でも1000年以上に渡り栽培されています。温帯では一年生植物ですが、熱帯では多年生植物となります。

 平城京の長屋王邸宅跡から出土した木簡に『進物 加須津毛瓜 加須津韓奈須比』との記述があり、高位の者への進物にナスの粕漬けが使われていたことが判明しました。また、正倉院文書には「天平六年(734年)茄子十一斛、直一貫三百五十六文」をはじめとして多数の「茄子」の記述がみられます。これらのことから、日本では奈良時代すでにナスの栽培が行われていたことがわかります。

 実の味から「中酸実」(なかすみ)が語源とされます。夏に実がなるので「夏実」(なつみ)と呼びましたが、それが訛って「なすび」(奈須比)と呼ばれたとする説もあります。室町時代頃に宮廷の女官が女房言葉として「なす」と呼び、その呼称が定着したようです。元は貴重な野菜でしたが、江戸時代頃より広く栽培されるようになり、以降日本人にとってなじみのある庶民的な野菜となりました。葉とヘタには棘があり、葉には毛が生えています。

 世界の各地で独自の品種が育てられています。賀茂茄子などの一部、例外もありますが、日本においては南方ほど長実または大長実で、北方ほど小実品種となります。本州の中間地では中間的な中長品種が栽培されてきました。これは寒い地域では栽培期間が短く大きな実を収穫する事が難しい上に、冬季の保存食として小さい実のほうが漬物に加工しやすいからであります。しかし食文化の均一化やF1品種の登場により野菜炒めや焼き茄子など、さまざまな料理に利用しやすい中長品種が全国的に流通しています。

 日本で栽培される栽培品種のほとんどは果皮が紫色又は黒紫色ですが、ヨーロッパやアメリカ等では白・黄緑色・明るい紫、さらに縞模様の品種も広く栽培されています。

 果肉は密度が低くスポンジ状である。ヘタの部分には鋭いトゲが生えている場合があります。新鮮な物ほど鋭く、鮮度を見分ける方法の一つとなりますが、触った際にトゲが刺さり怪我をすることがあります。収穫の作業性向上や実に傷がつくという理由から棘の無い品種も開発されています。
 品種によって様々な食べ方があります。栄養的にはさほど見るべきものはありませんが、東洋医学では体温を下げる効果があるとされています。和漢三才図会ではヘタにしゃっくり止めの効果があるとさまするが、俗信の域を出ません。

 なかには、「赤ナス」のような観賞用として生け花などにも利用されているもの(熊本県などで「赤ナス」の商品名で栽培されている食用の品種とは別物、また赤茄子はトマトを表す)もあります。赤ナスは食用のナスの台木としても用いられます(観賞用の赤ナスは味などにおいて食用には適さないとされています)。

 お盆の期間中には、故人の霊魂がこの世とあの世を行き来するための乗り物として、「精霊馬」と呼ばれるキュウリやナスで作る動物を用意します。4本の麻幹あるいはマッチ棒、折った割り箸などを足に見立てて差し込み、馬、牛とします。キュウリは足の速い馬に見立てられ、あの世から早く家に戻ってくるように、ナスは歩みの遅い牛に見立てられ、この世からあの世に帰るのが少しでも遅くなるように、また、供物を牛に乗せてあの世へ持ち帰ってもらうとの願いが込められているといいます。

 「親の小言と茄子の花は千に一つの無駄もない」というのは、ナスの花が結実する割合が高いことに、親の小言を喩えた諺です。また、「瓜の蔓に茄子(なすび)はならぬ」は非凡な子供を茄子に例えて、平凡な親からは非凡な子は生まれない、という意味で、似た諺として「蛙の子は蛙」があります。

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