瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
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 大根(ダイコン)はアブラナ科ダイコン属の越年草で、野菜として広く栽培されています。主に肥大した根を食用とするほか種子から油を採ることもあり、緑黄色野菜でもあり淡色野菜でもあります。名前の由来は、大きな根を意味する大根(おおね)からです。多くの品種があり、根の長さ・太さなどの形状もさまざまで、皮の色も白以外に赤・緑・紫・黄・黒などがあり、地域によっては白よりも普通です。日本ではほとんどが白い品種で、スズシロ(清白)の別名もこれに基づいています。
 原産地は地中海地方や中東であるといいます。紀元前2200年の古代エジプトで、今のハツカダイコンに近いものがピラミッド建設労働者の食料とされていたのが最古の栽培記録とされ、その後ユーラシアの各地へ伝わりました。

 日本には弥生時代には伝わっており、平安時代中期の『和名類聚抄』巻17菜蔬部には、園菜類として於保禰(おほね)があげられています。ちなみにハマダイコンまたはノダイコンと見られる古保禰(こほね)も栽培され、現在のカイワレダイコンとして用いられていました。江戸時代には関東の江戸近郊である板橋・練馬・浦和・三浦半島辺りが特産地となり、その中で練馬大根は特に有名でした。

 ダイコンは日本においては品種・調理法とも豊富です。世界一大きくて重い桜島大根、世界一長い守口ダイコンなどの種類があり、日本人の食卓(鍋料理・おでん等)には欠かすことのできない野菜となっています。葉はビタミンAを多く含み、青汁の原料として使われます。汁はビタミンCやジアスターゼを多く含んでいます。
 野菜としての位置づけにおいては、春の七草のひとつ「すずしろ」であり薬味や煮込み料理にも使われるなど、利用の幅はかなり広いようです。薬草であり、消化酵素を持ち、血栓防止作用や解毒作用があります。

 大根は古事記にも記載があり、仁徳天皇陵からも大根の種が発見されています。

 清少納言も枕草子で、「つまらないものが幅を利かせるもの」として、正月の大根を挙げています。
 えせ者の所得るをり
 正月の大根(おおね)。行幸のをりの、姫大夫。御即位の御門司(みかどつかさ)。六月、十二月のつごもりの節折(よをり)の蔵人。季の御読経(みどきょう)の威儀師(いぎし)。赤袈裟着て、僧の名どもを読み上げたる、いときらきらし。
 季の御読経、御仏名(おぶつみょう)などの御装束の所の衆。春日の祭の近衛舎人(このえどねり)ども。元三(がんざん)の薬子(くすりこ)。卯杖(うづえ)の法師。御前の試みの夜の御髪上(みぐしあげ)。節会(せちえ)の御まかなひの采女(うねめ)。
現代語訳
 つまらない者が幅を効かせる時
 正月の大根(おおね)。行幸(ぎょうこう)の時の姫大夫。御即位の御門司(みかどつかさ)。六月、十二月の月末の節折(よをり)の蔵人。季の御読経(みどきょう)の威儀師(いぎし)。赤袈裟を着て、僧の名前を読み上げたところは、非常に輝かしくて立派である。
 季の御読経や御仏名(おぶつみょう)などの御殿の設備と、飾り付けをする蔵人所の衆。春日の祭の勅使に随従する近衛舎人(このえどねり)たち。正月元日の薬子(くすりこ)。卯杖(うづえ)の法師。五節の御前の試みの夜の御髪上(みぐしあげ)。節会(せちえ)の時、帝の御膳のお給仕をする采女(うねめ)。

 大根は、生でも煮ても焼いても消化が良くて食あたりしないので、何をやっても当たらない役者を「大根役者」と呼びます。同じ理由でどうしても当たりを打てない野球の打者を「大根バッター」とも呼ぶそうです。

 兼好法師もまた、徒然草で次のように記載しています。
 徒然草68段
 筑紫に、なにがしの押領使(おうりょうし)などいふやうなる者のありけるが、土大根(つちおおね)を万にいみじき薬とて、朝ごとに二つづつ焼きて食ひける事、年久しくなりぬ。
 或時、館の内に人もなかりける隙をはかりて、敵襲ひ来りて、囲み攻めけるに、館の内に兵二人出で来て、命を惜しまず戦ひて、皆追い返してげり。いと不思議に覚えて、「日比ここにものし給ふとも見ぬ人々の、かく戦ひし給ふは、いかなる人ぞ」と問ひければ、「年来頼みて、朝な朝な召しつる土大根らに候う」と言ひて、失せにけり。
 深く信を致しぬれば、かかる徳もありけるにこそ。

現代語訳
 九州の筑紫国に、押領使の役職に就いていたなにがしという人物がいた。この人は、大根を何にでも効く素晴らしい薬だと信じて、長年にわたって、毎朝二本ずつ焼いて食べ続けていた。
 ある時、押領使が所管する館の中に兵がいない隙を見計らって、敵が襲ってきた。敵にすっかり取り囲まれていたのだが、館の中に二人の兵士が現れ、命も惜しまずに戦って、敵をみんな、追い返してしまった。押領使はとても不思議に思って、『日頃、この館で見ない者たちだが、ここまで懸命に戦うとは、どんな人物なのか?』と聞いた。すると、『あなたが長年信じてきて、毎朝召し上がっている大根でございます』と答えて、その勇敢な兵士は消えうせてしまった。
 (何の役にも立ちそうにないものでも)深く信心をしていれば、このような徳もあるものだ。


 


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