元来人参(にんじん)と呼ばれていたものは、御種人蔘(おたねにんじん)のことでした。原産地は中国の遼東から朝鮮半島にかけての地域といわれ、 中国東北部やロシア沿海州にかけて自生します。薬用または食用に用いられ、チョウセンニンジン(朝鮮人蔘)、コウライニンジン(高麗人蔘)、また単に人蔘とも呼ばれました。野菜のニンジンはセリ科であり、本種の近類種ではなく全く別の種なのであります。
「御種人蔘」の名は、八代将軍徳川吉宗が対馬藩に命じて朝鮮半島で種と苗を入手させ、試植と栽培・結実の後で各地の大名に「御種」を分け与えて栽培を奨励したことに由来します。これ以前の「人蔘」は朝鮮半島からの輸入に依存していました。
江戸時代には大変に高価な生薬で、庶民には高嶺の花でした。このため、分不相応なほど高額な治療を受けることを戒める「人蔘飲んで首括る」のことわざも生まれました。「人参で行水」は医薬のかぎりを尽くして治療をすることをいいます。
ニンジンは原産地のアフガニスタン周辺で東西に分岐し、世界各地に伝播しました。オランダを通りイギリスへと西方へ伝来しながら改良が行われた西洋系、中国を経て東方へと伝わった東洋系の2種類に分類できます。東洋系は細長く、西洋系は太く短いが、ともに古くから薬や食用としての栽培が行われてきました。
中国で改良された東洋系のニンジンは、16世紀に日本に伝えられ、各地で作られるようになりました。赤色の金時にんじんを筆頭に、甘味が強くてニンジン特有の臭みが少なく、煮ても形が崩れにくいので和風の料理に重宝されます。なかでも京料理では比較的多く用いられることから金時ニンジンは「京人参」とも呼ばれ、京野菜のひとつに数えられています。しかし、栽培しにくいことがネックとなり、第二次世界大戦後西洋系ニンジンが主流となってきています。正月料理用などとして、現在でも晩秋から冬にかけて市場に出回りますが、栽培量が少ないためこの季節以外では入手することが難しいようです。この他沖縄県の伝統野菜のひとつで黄色い島ニンジンまたはチデークニーと呼ばれる品種や、アフガニスタン原産の黒人参などが東洋系に含まれます。
西洋系ニンジンは、オランダやフランスで改良がすすみ、江戸時代末期に日本に伝来しました。主にオレンジ色をしており、甘味もカロチンも豊富に含んでいます。五寸ニンジンが一般的な品種で、ちょうど五寸(15~20cm)ぐらいの長さで、金時ニンジンなどと比べて太めなのが特徴です。かつての品種は特有のニンジン臭が強く、子供の嫌う野菜の筆頭格でしたが、品種改良により最近では臭いも薄くなりました。全国の気候に応じた品種が栽培されていて、1年中市場に出回っていますが、ニンジン本来の旬は9月頃から12月頃です。
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