蕪(かぶ)はアブラナ科アブラナ属の越年草で、代表的な野菜(根菜類)の一つです。別名はカブラ、カブナ、カブラナ、スズナ(鈴菜、菘)、ホウサイ(豊菜)、ダイトウナ(大頭菜)など数多くあります。
「カブ」の語源は諸説あり、頭を意味する「かぶり」、根を意味する「株」、またはカブラの女房詞である「オカブ」からとされています。江戸時代は漢語で蕪菁(ブセイ)、蔓菁(マンセイ)、扁蘿蔔(ヘンラフク)などと呼ばれていたということです。
蕪は世界中で栽培されていますが、分類上はアフガニスタン原産のアジア系と、中近東から地中海沿岸原産のヨーロッパ系との2変種に分かれます。原産地についてはヨーロッパもしくは中央アジア起源の一元説や二元説があります。
かぶの品種は非常に多く、全国各地に地の物があったりしますが、大きく分けると、大きさで小かぶと大かぶ、色で赤カブ、それに丸くなく、長い形をした日野菜などがあります。
歴史は古く、中国では詩経に記載され、ヨーロッパ系も古代ギリシャの史料にみられるといいます。ただし、ヨーロッパで広く普及したのは16世紀からで、飼料用途が多かったといいます。 東ヨーロッパなど寒冷な地では冬場の貴重な食料源や救荒植物として活用されました。
後漢の末期、孔明が劉備軍に加わったとき、軍中には新鮮な葉物がなかったので、兵士の食事は味気なく、士気が上がりませんでした。孔明は襄陽をまわって、「大頭菜(コールラビ)」がたくさん採れることを知り、調理方法を発明して、大頭菜の漬物を軍中のおかずとしました。孔明の漬物は、香りがよく、口触りも爽やかで、食欲も増すので、兵士たちに広く好まれました。蜀軍の士気は上がり、赤壁の戦いで勝利し、荊州、漢中を得て、三国鼎立の形勢になったのです。のちに蜀へ移ると、蜀は特産が豊かだったのですが、孔明はいつも大頭菜の漬物をおかずにしていました。玄徳が不思議に思ったところ、孔明は、「今の境遇は、これのおかげでした。しかしなお天下が定まりませんので、昔の志を忘れないようにしているのです」と答えたといいます。のちの人は孔明の忠義をしのんで、この漬物を、「孔明菜」と呼びました。「孔明灯」、「木牛」、「流馬」と合わせて、孔明の四大伝奇発明とされています。
日本では、古事記の「吉備の菘菜(あおな)」が蕪のことと見られるほか、日本書紀に持統天皇が栽培を推奨したと記されています。京野菜など西日本で見られる中国伝来のアジア系とともに、東日本でヨーロッパ系(野沢菜など関連する変種も含む)が在来種として確認され、シベリア経由と見られています。
土地土地で品種改良がおこなわれ、現在でも多くの品種が存在しています。また古くは茎立(くくたち)とも呼ばれていたようです。「万葉集」にも遠い九州に徴兵された男にカブを育ててご馳走しようという意味の歌が読まれており、奈良時代にはカブが高級品であったことが推測されます。
「蕪村」という名が「蕪の村」と書くのは、当時彼が住んでいた大坂の天王寺村が、「天王寺かぶら」という白色中型の蕪の一大産地だったからで、蕪村は、「名物や 蕪の中の 天王寺」という句を残しています。
子規の時代まで、蕪村といえば画家としてのほうが有名であり、彼の俳句は漢語を多用した風変わりな作品だとして、必ずしも高く評価されていませんでした。子規はそんな蕪村の句風を新しい観点からとりあげることによって、芭蕉と並び立つべき偉大な俳人として位置づけなおしたのです。
嫁入り前(30年近く前!)、女子大の先生のお茶室で毎週
お茶を習っていました。(母が、泣いて頼んだもので…いや、ホントに。)
戦前からの古いお屋敷で、広い庭もいわゆる日本庭園ではなく、木も下草も自然にまかせた、悪く言えば草ぼうぼうの趣でした。それがお好みだったようです。
そこに、春先になると紫色の花が一面に咲いて、夕暮れの淡い光の中で、それは美しい景色となりました。
花の名を尋ねると「諸葛菜」。
やはり、諸葛孔明が、軍の食糧にするため植えたのが由来と聞きました。
先生のご主人が高名な中国文学の学者だったので、妙に納得した覚えがあります。
日本名は「オオアラセイトウ」「ムラサキハナナ」といって、黄色の菜の花を紫にしたような花です。
先生の庭が懐かしくて、以前種を購入しましたが、観賞用で「蕪」がなることはありませんでした。
太宰府の実家の庭でも、しばらく咲いていましたが、今はどうでしょうか。
「孔明菜」「諸葛菜」呼び名や用途が変わっても、偉大な先人を身近なところで偲んだのでしょうね。
今日の記事で、久しぶりに先生の庭の美しい光景を思い出しました。ありがとうございます。
では、また。
sechin@nethome.ne.jp です。
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