檜扇を詠める歌18
巻13‐3312: 隠口の泊瀬小国によばひせす我が天皇よ.......(長歌)
原文:隠口乃 長谷小國 夜延為 吾天皇寸与 奥床仁 母者睡有 外床丹 父者寐有 起立者 母可知 出行者 父可知 野干王之 夜者昶去奴 幾許雲 不念如 隠麗香聞
万葉集 巻13‐3312
作者:不明
よみ:隠口の 泊瀬小国に よばひせす 我が天皇よ 奥床に 母は寐ねたり 外床に 父は寐ねたり 起き立たば 母知りぬべし 出でて行かば 父知りぬべし ぬばたまの 夜は明けゆきぬ ここだくも 思ふごとならぬ 隠り妻かも
意訳:この泊瀬小国に妻にしたいとやっていらっしゃったわが君よ。奥の寝床には母が寝ていて、入口近くの寝床には父が寝ています。起き立てば母が気づくでしょうし、部屋から出て行けば父が気づくでしょう。ああ、こんなにも思うにまかせぬ私は隠し妻の身
左注:右四首
注訓:右四首
◎「よばひ」は「夜這い」すなわち「夜、恋人のもとへ忍んで行く」あるいは「寝とりたい相手の寝所へ忍び入る」という良からぬ連想をさせる言葉として用いられています。
しかしながら、その原義は「相手を呼び続ける」という意の「呼ばふ」が「呼ばひ」に変化したものです。
万葉仮名では「よばひ」に「結婚」という字が当てられている例があり、「呼び続ける」意の中に「求婚する」という気持が含まれていることが窺われます。
巻13‐3313:川の瀬の石踏み渡りぬばたまの黒馬来る夜は常にあらぬかも
巻13‐3329:白雲のたなびく国の青雲の向伏す国の .......(長歌)
原文:白雲之 棚曳國之 青雲之 向伏國乃 天雲 下有人者 妾耳鴨 君尓戀濫 吾耳鴨 夫君尓戀礼薄 天地 満言 戀鴨 胸之病有 念鴨 意之痛 妾戀叙 日尓異尓益 何時橋物 不戀時等者 不有友 是九月乎 吾背子之 偲丹為与得 千世尓物 偲渡登 万代尓 語都我部等 始而之 此九月之 過莫呼 伊多母為便無見 荒玉之 月乃易者 将為須部乃 田度伎乎不知 石根之 許凝敷道之 石床之 根延門尓 朝庭 出座而嘆 夕庭 入座戀乍 烏玉之 黒髪敷而 人寐 味寐者不宿尓 大船之 行良行良尓 思乍 吾寐夜等者 數物不敢鳴
万葉集 巻13‐3329
作者:不明
よみ:白雲の たなびく国の 青雲の 向伏す国の 天雲の 下なる人は 我のみかも 君に恋ふらむ 我のみかも 君に恋ふれば 天地に 言を満てて 恋ふれかも 胸の病みたる 思へかも 心の痛き 我が恋ぞ 日に異にまさる いつはしも 恋ひぬ時とは あらねども この九月を 我が背子が 偲ひにせよと 千代にも 偲ひわたれと 万代に 語り継がへと 始めてし この九月の 過ぎまくを いたもすべなみ あらたまの 月の変れば 為むすべの たどきを知らに 岩が根の こごしき道の 岩床の 根延へる門に 朝には 出で居て嘆き 夕には 入り居恋ひつつ ぬばたまの 黒髪敷きて 人の寝る 味寐は寝ずに 大船の ゆくらゆくらに 思ひつつ 我が寝る夜らは 数みもあへぬかも
意訳:白雲のたなびくこの国、青雲の向こうの下に伏す国の、この広大な天雲の下にいる人々の中で私のみであろうか、あなたを恋慕うのは。さらに私のみであろうか、あなたを恋い慕って言葉を尽くしても尽くしきれないほど天に満ち満ちたる言葉を吐くのは。それほどまでに恋い慕うので胸が病み、あなたのことを思うと心が痛みます。私の恋い慕う思いは日に日に増すばかりです。いつといって恋わない時はありませんが、特にこの九月は恋しさがつのります。この九月が来ると「私を偲んでおくれ、いついつまでも忘れないで偲んでおくれ」とあの人に言われているようで、さらにはこの九月を万代(よろづよ)まで語り継いでいこうと大切にし始めた。この九月が過ぎるとどうしようもありません。月がかわってしまうと(あなたに向き合う)機会がなくなり、為すすべのとっかかりも分からず、岩でごつごつした道を、どっしりした岩床のような門口なのに、朝には門を出て嘆き、夕方には門に入って思い嘆く。白栲の着物の袖を折り返しひとり床につく。折り返した袖に黒髪を敷いて人様のように共寝をすることもなく、ゆらゆら揺れる大船のようにああでもないこうでもないと思いつつ我が寝る夜は数え切れない。
左注:右一首
注訓:右一首
ウェブニュースより
「強い女王」心痛大きく 職務全面再開への影響懸念―英 ―― フィリップ英殿下の葬儀が17日行われ、エリザベス女王(94)は最愛の夫に別れを告げた。喪が明ける23日以降、女王は職務を全面的に再開する意向とされるが、公私における大きな支えを失った心痛は大きい。職務への影響を心配する声もある。
「(女王は)驚くほど毅然(きぜん)とした人」。次男のアンドルー王子は先週、記者団にそう述べた。葬儀式典の準備では女王自身が采配を振るった。「困難にたじろがない強い女王」との評価は、多くの人に共有されている。
とはいえ、74年近く連れ添ったパートナーを亡くしたことの心理的影響も指摘される。高齢者支援を行う慈善団体の幹部は英紙に、女王が大きな試練に直面する恐れがあるとの見方を示した。
エリザベス女王の高祖母ビクトリア女王(在位1837~1901年)は夫アルバート公が42歳の若さで死去した後、職務から遠ざかり、2年間は公の場に姿を見せなかった。
エリザベス女王の職務は可決された法案を裁可したり、政府からの報告文書を読んだりするほか、要人との面会など多岐にわたる。5月11日には議会の開会式に臨み、施政方針演説を行う。
女王は21日、95歳の誕生日を迎える。身体への負担も気掛かりだ。タイムズ紙は「女王は今後数週間から数カ月の間、近しい友人や家族、聖職者の精神的な支援を得ることができるだろう」と勇気づけた。 【JIJI.COM 2021年04月19日07時01分】
sechin@nethome.ne.jp です。
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