檜扇を詠める歌15
巻13‐3269: 帰りにし人を思ふとぬばたまのその夜は我れも寐も寝かねてき
巻13-3270:さし焼かむ小屋の醜屋にかき棄てむ.......(長歌)
原文:刺将焼 小屋之四忌屋尓 掻将棄 破薦乎敷而 所<挌>将折 鬼之四忌手乎 指易而 将宿君故 赤根刺 晝者終尓 野干玉之 夜者須柄尓 此床乃 比師跡鳴左右 嘆鶴鴨
万葉集 巻13‐3270
作者:不明
よみ:さし焼かむ 小屋の醜屋に かき棄てむ 破れ薦を敷きて 打ち折らむ 醜の醜手を さし交へて 寝らむ君ゆゑ あかねさす 昼はしみらに ぬばたまの 夜はすがらに この床の ひしと鳴るまで 嘆きつるかも
https://www.youtube.com/watch?v=Tscri3-ktnE
意訳:あの汚らしい小屋を焼いてうち捨ててやりたい。あの敷いた破れた汚らしい薦をうち折ってやりたい。あの女の薄汚れた手を、さし取って寝ているに違いないあの人だもの。悔しくて、終日終夜、この床がぎしぎし鳴るまで嘆いたことだ。
巻13‐3274:為むすべのたづきを知らに岩が根の.......(長歌)
原文:為須部乃 田付叨不知 石根乃 興凝敷道乎 石床 笶根延門叨 朝庭 出居而嘆 夕庭 入居而思 白桍乃 吾衣袖叨 折反 獨之寐者 野干玉 黒髪布而 人寐 味眠不睡而 大舟乃 徃良行羅二 思乍 吾睡夜等呼 讀父将敢鴨
万葉集 巻13‐3274
作者:不明
よみ:為(せ)むすべの たづきを知らに 岩が根の こごしき道を 岩床の 根延へる門を 朝には 出で居て嘆き 夕には 入り居て偲ひ 白栲の 我が衣手を 折り返し ひとりし寝れば ぬばたまの 黒髪敷きて 人の寝る 味寐は寝ずて 大船の ゆくらゆくらに 思ひつつ 我が寝る夜らを 数みもあへむかも
意訳:為すすべのとっかかりも分からず、岩でごつごつした道を、どっしりした岩床のような門口なのに、朝には門を出て嘆き、夕方には門に入って思い嘆く。白栲(しろたへ)の着物の袖を折り返しひとり床につく。折り返した袖に黒髪を敷いて人様のように共寝をすることもなく、ゆらゆら揺れる大船のようにああでもないこうでもないと思いつつ我が寝る夜は数え切れない。
左注:右二首
注訓:右二首
◎巻13‐3329に、
白雲の たなびく国の 青雲(あをくも)の 向伏(むかふ)す国の 天雲の 下なる人は 吾のみかも 君に恋ふらむ 我のみかも 君に恋ふれば 天地に 言(ことば)を満てて 恋ふれかも 胸の病(や)みたる 思へかも 心の痛き 妾(な)が恋ぞ 日に異(け)に益(まさ)る 何時(いつ)はしも 恋ひぬ時とは あらねども この九月(ながつき)を 吾が背子が 偲(しの)ひにせよと 千代(ちよ)にも 偲ひわたれと 万代(よろづよ)に 語り継(つ)がへと 始めてし この九月(ながつき)の 過ぎまくを いたもすべ無み あらたまの 月の変れば 為(せ)むすべの たどきを知らに 岩が根の 凝(こご)しき道の 岩床の 根(ね)延(は)へる門(かど)に 朝(あした)には 出で居(ゐ)て嘆き 夕(ゆふへ)には 入り居(ゐ)恋ひつつ ぬばたまの 黒髪敷きて 人の寝(ぬ)る 味寝(うまゐ)は寝ずに 大船の ゆくらゆくらに 思ひつつ 吾が寝(ぬ)る夜らは 数(よ)みも敢(あ)へぬかも
とあります。
巻13の相聞歌3274番歌と挽歌3329番歌の後半部が、ほとんど同じであることが、問題です。違うのは2点、相聞歌の「白栲(しろたへ)の我が衣手(ころもで)を折り返し、ひとりし寝れば」の一節が挽歌にないことと、「たづき」が「たどき」に変わっていることです。二つの歌の作者の性別は、いずれも女性と見ます。
挽歌3329番歌を見たところ、どこにも挽歌を意味する言葉が入っているわけではなく、相聞歌としても解釈できます。相聞歌3274番歌の「白栲(しろたへ)の我が衣手…」の一節が、挽歌から脱落したのは、おそらく挽歌にはふさわしくないからだろうと思えるぐらいです。
さらに「たづき」と「たどき」の用例を万葉集で調べた結果は、巻ごとで異なっていました。用例の時代見れば、「たづき」が古く、「たどき」は新しい。「たどき」は、おそらく天平時代になってから使用された可能性があります。新旧の根拠は、どちらの言葉も使用している大伴家持の歌から判ります。彼は、天平18年と天平20年に越中守の時、大伴池主と歌の贈答を交わしているのですが、「たどき」(18年)と「たづき」(20年)を使い分けているのです。「たづき」を使用した歌の題詞に「古人の歌を借りて今日の私の心を伝える」とあることから、「たづき」が古い言葉であることが知れるのです。
巻13での「たづき」と「たどき」の用例は、「たづき」が5個、「たどき」が1個です。その1個だけの「たどき」(後世と思われる天平時代の言葉)が入っている長歌が、ここで問題にしている挽歌3329番歌なのです。
ウェブニュースより
藤井聡太王位・棋聖がまた1つ史上初の快挙 5期連続昇級をすべて優勝 ―― 将棋の最年少2冠、藤井聡太王位・棋聖(18)が16日、東京・千駄ケ谷「将棋会館」で行われた第34期竜王戦2組ランキング戦決勝で八代弥(やしろ・わたる)七段(27)を下し、優勝を飾った。これで、竜王戦はデビュー1年目の17年に最下級の6組優勝から始まり、18年5組、19年4組、20年3組に続き、今年2組と、5期連続昇級をすべて優勝という史上初の記録を打ち立てた。しかも、各組予選は足掛け5年で負け知らずの24連勝とした。
藤井が着実な攻めでにじり寄った。金銀4枚で1一の地点の玉を固める八代の穴熊囲いを地道に崩す。「少し自信がない局面が続いていた。先手4五桂(93手目)と跳ねて勢いが出た」。守備駒を1枚ずつはがし、投了に追い込んだ。「ランキングの優勝はうれしい」。喜びをかみしめた。
https://www.youtube.com/watch?v=Bh-qxdMXaQc
過去の竜王戦で最短5年でのストレート昇級は、1~5期の佐藤康光九段、8~12期の鈴木大介九段、15~19期の橋本崇載八段(引退)、21~25期の佐藤天彦九段の4人。6~2組全部優勝で昇級の例はない。
藤井は、昨年度最後の対局となった3月23日の同準決勝(松尾歩八段戦)で勝ち、豊島将之竜王(叡王=30)への挑戦権を争う決勝トーナメントへの進出を果たした。この棋戦では常々、「決勝トーナメントで結果を残していない」と口にしている。過去4年、先輩棋士の厚い壁にはね返されてきた。「全力を尽くしていきたいと思います」。勢いに乗って目指すは、初の竜王挑戦権獲得だ。 [日刊スポーツ 2021年4月16日22時44分]
sechin@nethome.ne.jp です。
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