瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
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山吹を詠んだ歌2
112786: 山吹のにほへる妹がはねず色の赤裳の姿夢に見えつつ
 
173968: 鴬の来鳴く山吹うたがたも君が手触れず花散らめやも
標題:忽辱芳音、翰苑凌雲。兼垂倭詩、詞林舒錦。以吟以詠、能蠲戀緒。春可樂。暮春風景、最可怜。紅桃灼々、戯蝶廻花舞、 翠柳依々、嬌鴬隠葉謌。可樂哉。淡交促席、得意忘言。樂矣、美矣。幽襟足賞哉。豈慮乎、蘭恵隔藂、琴無用、空過令節、物色軽人乎。所怨有此、不能點已。俗俗語云、以藤續錦。聊擬談咲耳
標訓:忽(たちま)ちに芳音(ほういん)を辱(かたじけな)くし、翰苑(かんゑん)は雲を凌(しの)ぐ。兼ねて倭詩(やまとのうた)を垂れ、詞林(しりん)(にしき)を舒()ぶ。以ちて吟じ以ちて詠じ、能く戀緒を蠲(のぞ)く。春は樂しむべし。暮春の風景は、最も怜(あはれ)ぶべし。紅桃は灼々(しゃくしゃく)にして、戯蝶(ぎてん)は花を廻りて舞ひ、 翠柳(すいりう)は依々(いい)にして、嬌鴬(けうあう)葉に隠りて謌ふ。樂しむべきや。淡交に席(むしろ)を促(ちかづ)け、意(こころ)を得て言(ことば)を忘る。樂しきや、美しきや。幽襟賞()づるに足るや。豈、慮(はか)らめや、蘭恵(らんけい)(くさむら)を隔て、琴(きんそん)(もちゐ)る無く、空しく令節を過(すぐ)して、物色人を軽みせむとは。怨むる所此(ここ)に有り、點已(もだ)をるを能はず。俗俗(ぞく)の語(ことば)に云はく「藤を以ちて錦に續ぐ」といへり。聊(いささ)かに談咲に擬(なぞ)ふるのみ。
標訳:早速に御便りを頂戴し、その文筆の立派さは雲を越えています。併せて和歌を詠われ、その詠われる詞は錦を広げたようです。その歌を吟じ、また詠い、今までの貴方にお逢いしたい思いは除かれました。春は楽しむべきです。暮春の風景は、もっとも感動があります。紅の桃花は光輝くばかりで、戯れ飛う蝶は花を飛び回って舞い、緑の柳葉はやわらかく、声あでやかな鶯は葉に隠れて鳴き歌う。楽しいことです。君子の交わりに同席し、同じ風流の意識に語る言葉を忘れる。楽しいことですし、美しいことです。深き風流の心はこの暮春の風景を堪能するのに十分です。ところが、どうしたことでしょうか、芳しい花々を雑草が隠し、宴での琴や酒樽を使うことなく、空しくこの佳き季節をやり過ぎて、自然の風景が人を楽しませないとは。季節をやり過ごすことを怨む気持ちはここにあり、語らずにいることが出来ずに、下々の言葉に「藤蔓の布を以て錦布に添える」と云います。僅かばかりに、貴方のお笑いに供するだけです。
     万葉集 173967
  作者:大伴池主
原文:夜麻我比尓 佐家流佐久良乎 多太比等米 伎美尓弥西氏婆 奈尓乎可於母波牟
よみ:山峽(やまかひ)に咲ける桜をただ一目君に見せてば何をか思はむ
意味:山峡に咲いた桜を、ただ一目、病の床に伏す貴方に見せたら、貴方はどのように思われるでしょうか。
 
左注:沽洗二日、掾大伴宿祢池主
注訓:沽洗(やよひ)二日、掾大伴宿祢池主

173971: 山吹の茂み飛び潜く鴬の声を聞くらむ君は羨しも
題詞:更贈謌一首并短謌
題訓:更に贈れる謌一首并せて短謌


標題:含弘之徳、垂恩蓬軆、不貲之思、報慰陋心。戴荷未春、無堪所喩也。但以稚時不渉遊藝之庭、横翰之藻、自乏于彫蟲焉。幼年未逕山柿之門、裁謌之趣、詞失于聚林矣。爰辱以藤續錦之言、更題将石間瓊之詠。因是俗愚懐癖、不能黙已。仍捧數行、式酬嗤咲。其詞曰  (酬は、酉+羽の当字)
標訓:含弘(がんこう)の徳は、恩を蓬軆(ほうたい)に垂れ、不貲(ふし)の思は、陋心(ろうしん)に報(こた)へ慰(なぐさ)む。未春(みしゅん)を戴荷(たいか)し、喩(たと)ふるに堪()ふることなし。但、稚き時に遊藝(いうげい)の庭に渉(わた)らざりしを以ちて、横翰(わうかん)の藻は、おのづから彫蟲(てんちゆう)に乏し。幼き年にいまだ山柿の門に逕(いた)らずして、裁謌(さいか)の趣は、詞を聚林(じゅうりん)に失ふ。爰(ここ)に藤を以ちて錦に續ぐ言(ことば)を辱(かたじけな)くして、更に石を将ちて瓊(たま)に間(まじ)ふる詠(うた)を題(しる)す。因より是俗愚(ぞくぐ)をして懐癖(かいへき)にして、黙已(もだ)をるを能(あた)はず。よりて數行を捧げて、式()ちて嗤咲(しせう)に酬(こた)ふ。その詞に曰はく、  (酬は、酉+羽の当字)
標訳 貴方の心広い徳は、その恩を賤しい私の身にお与えになり、測り知れないお気持ちは狭い私の心にお応え慰められました。春の風流を楽しまなかったことの慰問の気持ちを頂き、喩えようがありません。ただ、私は稚き時に士の嗜みである六芸の教養に深く学ばなかったために、文を著す才能は自然と技巧が乏しい。幼き時に山柿の学風の門に通うことをしなかったことで、詩歌を創る意趣で、どのような詞を選ぶかを、多くの言葉の中から選択することが出来ません。今、貴方の「藤を以ちて錦に續ぐ」と云う言葉を頂戴して、更に石をもって宝石に雑じらすような歌を作歌します。元より、私は俗愚であるのに癖が有り、黙っていることが出来ません。そこで数行の歌を差し上げて、お笑いとして貴方のお便りに応えます。その詞に云うには、
 


左注:三月三日、大伴宿祢家持
注訓:三月三日に、大伴宿祢家持


 

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目高 拙痴无
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1932/02/04
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