瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
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山吹を詠んだ歌4
173976: 咲けりとも知らずしあらば黙もあらむこの山吹を見せつつもとな
標題:昨暮来使、幸也以垂晩春遊覧之詩、今朝累信、辱也以貺相招望野之歌。一看玉藻、稍寫欝結、二吟秀句、已蠲愁緒。非此眺翫、孰能暢心乎。但惟下僕、稟性難彫、闇神靡瑩。握翰腐毫、對研忘渇。終日目流、綴之不能。所謂文章天骨、習之不得也。豈堪探字勒韻、叶和雅篇哉。抑聞鄙里少兒、古人言無不酬。聊裁拙詠、敬擬解咲焉
(如今、賦言勒韵、同斯雅作之篇。豈殊将石間瓊、唱聾遊之曲欤。抑小兒譬濫謡。敬寫葉端、式擬乱曰)
七言一首
杪春餘日媚景麗 初巳和風拂自軽
来燕銜泥賀宇入 帰鴻引蘆迥赴瀛
聞君肅侶新流曲 禊飲催爵泛河清
雖欲追尋良此宴 還知染懊脚跉䟓
標訓:昨暮(さくぼ)の来使は、幸(さきは)ひに晩春遊覧の詩を垂れ、今朝の累信(るいしん)は、辱(たかじけな)くも相招(さうせう)望野(ぼうや)の歌を貺(たま)ふ。一たび玉藻を看()て、稍(やくや)く欝結(うつけつ)を寫(のぞ)き、二たび秀句を吟(うた)ひて、已(すで)に愁緒(しうしよ)を蠲(のぞ)く。此の眺翫(てつぐわん)あらづは、孰(たれ)か能く心を暢()べむ。ただ、惟(これ)、下僕(やつかれ)、稟性(ひんせい)()り難く、闇神(あんしん)(みが)くこと靡()し。翰(ふで)を握()りて毫(がう)を腐(くた)し、研(すずり)に對(むか)ひて渇くことを忘る。終日(ひねもす)に目流(もくる)して、綴(つづ)れども能(あた)はず。所謂(いはゆる)文章は天骨にして、習ひて之を得ず。豈(あに)、字を探り韻を勒(ろく)すを堪()へ、雅篇に叶和(けふわ)するや。抑(そもそも)鄙里(ひり)の少兒(せうに)に聞くに、古人は言(こと)に酬(こた)へぬこと無しといへり。聊(いささ)かに拙詠を裁(つく)り、敬みて解咲(かいせう)に擬(なぞ)ふ。
 (如今(いまし)、言を賦し韵を勒(ろく)し、斯()の雅作の篇に同ず。豈、石を将()ちて瓊(たま)に間(まじ)へ、聾に唱(とな)へこの曲に遊ぶに殊ならめや。抑(よそもそも)小兒の濫(みだり)に謡(うた)ふが譬(ごと)し。敬みて葉端に寫し、式()ちて乱に擬(なぞ)へて曰はく)
杪春(びょうしゅん)の餘日媚景(びけい)は麗(うるは)しく
初巳(しょし)の和風は拂ひて自(おのづか)らに軽し
来燕(らいえん)は泥(ひぢ)を銜(ふふ)みてを宇(いへ)を賀()きて入り
帰鴻(きこう)は蘆(あし)を引きて迥(はる)かに瀛(おき)に赴く聞く君が侶(とも)に肅(しゅく)して流曲を新たにし
禊飲(けいいん)に爵(さかづき)を催(うなが)して河清に泛(うか)び追ひて良く此の宴(うたげ)を尋ねむとすれども
還りて知る懊(やまひ)に染みて脚の跉䟓(れいてい)なることを
標訳:昨日夕刻の使者はうれしくも晩春遊覧の詩を届けてくれ、今朝の重ねてのお便りは、有り難くも野遊びへの誘いの歌を下さいました。最初の御文を見て多少憂うつな心の晴れるのを感じ、再び秀れた歌を吟じてすでに愁いの気分が除かれました。この風光を眺め楽しむ以外に、なにがよく心をのびやかにするものがありましょう。ただ、私は生まれつき文章を起こす素質がなく、愚鈍な心は磨くところがありません。筆を取っても筆先を腐らせるだけですし、硯に向かっても水が乾くのもわからないほどに考えるばかりです。一日中眺めていても文を綴ることができません。いわゆる文章というものは天性のもので、習って得られるものではありません。どうして、言葉を探し韻を踏んで詩を起こし、あなたの風雅な詩にうまく応じられましょうか。しかし、そもそも村里の子供に聞いても、昔の人は贈られた文章には答えないことはないと云います。そこで拙い詩を作り、謹んでお笑い草といたします。
(今、詩を起こし韻を踏み、貴方の風雅な御作に答えます。どうして、それが石をもって玉の中に雑じえ、声を上げて詠って自分の歌を喜ぶことと他なりましょうか。そもそも子供がやたらに歌うようなものです。謹んで紙の端に書き、それを乱れの真似ごととし、云うには)
暮春の残影の明媚な景色はうららかに、
上巳のなごやかな風は吹き来て自ずから軽やかである
飛来した燕は泥を口に含んで家に入り祝福し、
北へ帰る雁は蘆を持って遠く沖へ赴く
聞くに貴方は友と共に詩歌を吟じ曲水の歌を新たにし、
上巳の禊飲に盃を勧め清き流れに浮かべ
出かけて行ってこの佳き宴を尋ねようと思うが、
還って知る。病に染まり足がよろめくのを
 
左注:三月五日大伴宿祢家持臥病作之
注訓:三月五日、大伴宿祢家持、病に臥して之を作れり


 

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