瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
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 昨夜のテレビニュースによると、スウェーデン・アカデミーは8日午後1時(日本時間同午後8時)、2015年のノーベル文学賞をベラルーシのスベトラーナ・アレクシエービッチさん(67)に授与すると発表しました。英ブックメーカーで有力候補に挙げられていたという日本の作家・村上春樹さん(66)はまたしても受賞を逸しました。2006年に初めて名前が挙がってから10年連続の落選となり、列島各地でため息が漏れたといいます。


 ウェブニュースより


ノーベル文学賞にベラルーシ人作家 フクシマを積極発言 ―― スウェーデン・アカデミーは8日、2015年のノーベル文学賞をベラルーシ人の作家スベトラーナ・アレクシエービッチ氏(67)に授与すると発表した。授賞理由を、「私たちの時代における苦難と勇気の記念碑といえる、多様な声からなる彼女の作品に対して」とした。長年、期待されてきた同氏の受賞に、発表会場に詰めかけた報道陣らから拍手と歓声が起きた。女性の文学賞受賞は14人目。


 AFP通信によると、ベラルーシの首都ミンスクで会見したアレクシエービッチ氏は、「私ではなく、私たちの文化、歴史を通して苦しんできたこの小さな国への受賞だ」と語った。


 アカデミーのダニウス事務局長は「彼女は40年にわたり新しい文学のジャンルを築いてきた。チェルノブイリ原発事故やアフガン戦争を単なる歴史的出来事ではなく人々の内面の歴史ととらえ、何千ものインタビューをまるで音楽を作曲するように構成して、我々に人間の感情と魂の歴史を認識させた」とたたえた。


 賞金は800万クローナ(約1億1600万円)。授賞式は1210日にストックホルムで行われる。(ストックホルム=渡辺志帆)


■「黒沢明監督の『夢』はまさに予言」


 アレクシエービッチ氏は、東京電力福島第一原発事故についても積極的に発言し、高度に発達した技術に依存する現代社会への警告を発している。


 ログイン前の続き事故直後、仏紙リベラシオンのインタビューに対して「(チェルノブイリ原発事故に続く)2回目の原子力の教訓が、技術が発展した国で今起きています。これは日本にとってだけでなく、人類全体にとっての悲劇です。私たちはもう、ソビエト体制にも全体主義にも、誰に対しても罪を負わせることができないのです」と指摘。「原発の爆発が描かれた黒沢明監督の『夢』はまさに予言でした」と述べた。 (ストックホルム=渡辺志帆 モスクワ=駒木明義20151082359分 朝日新聞DIGITALより)


 


※ 黒沢明監督の『夢』:1990年に公開された、黒澤明監督による日本とアメリカの合作映画である。「日照り雨」「桃畑」「雪あらし」「トンネル」「鴉」「赤冨士」「鬼哭」「水車のある村」の8話からなるオムニバス形式。黒澤明自身が見た夢を元にしている。各エピソードの前に、「こんな夢を見た」という文字が表示されるが、これは夏目漱石の『夢十夜』における各挿話の書き出しと同じである。


《オムニバス全8話》


「第1/日照り雨」 出演:倍賞 美津子


立派な門構えの家の前。陽が差しているのに雨が降っている。こんな日には"狐の嫁入り"があるという。日照り雨を不思議そうに眺めていた""に、母が「狐の嫁入りを見ると怖いことになりますよ」と釘を差す。止められて余計に見たくなった""は神社の森に入っていき、金縛りにあってしまう。動けない""の目の前で繰り広げられる、煌びやかでどこかおかしい狐の嫁入り。十分に楽しんで家に帰った""に母は自殺用の短刀を渡し、狐たちに死ぬ気で謝ることを強いる……。狐たちの美しい装束と対比して描かれる自然界の厳しい掟。黒澤の自然への畏怖が感じ取れる一作。


「第2/桃畑」 出演:伊崎 充則


姉と女友達が雛祭りのままごとをしていると、不思議な少女が現れる。""にはその少女が見えるが、姉たちには見えず馬鹿にされる。少女に惹かれて裏の畑に行ってみると、そこには人間の姿をした雛人形が勢揃いしており、""に話かけてきた。これを恐れた人々は「雛人形は桃の木の化身だ」と言い桃の木を全て切り倒してしまう。それを見た""は泣き出してしまう。そんな""の姿に心を打たれた雛たちは少年に豪華絢爛な花盛りを見せてくれるのだが……。桃の木を自然全体になぞらえて描く、黒澤流の自然破壊と救済の物語。


「第3/雪あらし」 出演:原田美枝子


""を含めた4人の登山隊は猛吹雪に遭遇してしまう。お互いをザイルで結び、睡魔と闘っている""に、どこからともなく現れた長髪の美しい女が甘い声で語りかけてくる。甘美な囁きに眠りかけた""だったが、自分を押さえつけている強い力に気付き見てみると、さきほどまで美しい姿をしていた女が豹変し、白髪の醜い老女になっていた!老女は勝ち誇ったように高笑いし、ブリザードの中に舞い上がる!二面性を持った雪女が象徴する陰と陽。やさしさと厳しさ。黒澤の人生経験がここに結集する。


「第4/トンネル」 出演:寺尾 聡


戦時中将校だった""は罪悪感と共に戦地から生還した。暮れなずむ中、人気のないトンネルに差し掛かると、夕闇の中から猛犬が唸り声をあげながら向かってきた。驚いた""はトンネルの中に飛び込む。不思議なトンネルを抜けた""が歩き出そうとすると、重装備の兵隊が闇の中から出てきた。よく見ると彼は戦時中部下の一人であった野口一等兵で、出てくるなり「自分は戦死したのですか?」と問い掛けてくる。戦死した部下の突然の出現に面食らう""だったが、せめてもの罪滅ぼしに真実を本人に告げる。野口は実際は自分の腕の中で息を引き取った事実をかみ締めながら……。戦争の時代を生き、罪悪感を持ちつづけた黒澤の贖罪の物語。


「第5/鴉」 出演:マーティン・スコセッシ


美術館でゴッホの「アルルのはね橋」を見ていた""は、いつの間にか絵の中に入り込んでしまう。その瞬間、絵の中の静止した世界は活動を始める。""はゴッホに会うため洗濯している女性たちに話を聞き、大平原でデッサンしている男=ゴッホをついに探し出す。尊敬するゴッホに出会い緊張する""に対し、最初は無関心であったゴッホだが「何故、描かないんだね?」と声をかけてくる……CGとゴッホの融合。やがて自殺に至るゴッホの苦悩を最新の技術を用いて、ゴッホに心酔していた黒澤が切り取ってみせた傑作!


「第6/赤富士」 出演:井川 比佐志


真っ赤に染まった富士山。逃げ惑う人々。そこに中にポツンとたたずむ""。何が起こったかわらかない""は群集の中の一人をつかまえ話を聞く。すると彼の口から「六基の原子力発電所が爆発した」という驚愕の事実が明かされる。群集を追って海岸の方に逃げた""だったが、そこでさらに恐ろしい場面を目にする。切り立った断崖から人々が次々に身投げしていたのだ!人々を必死止めようとする""に、カラフルな色をした放射能が迫る---。黒澤が心の根底で持ちつづけた恐怖を叩きつけた一作。日本の美の象徴である富士山の赤、放射能の黄、紫などの色で表現され、恐怖を引き立てる。


「第7/鬼哭」 出演:いかりや長介


""の前に鬼が現れる。鬼は""を不思議なものを見せてくれるという。そこで""が目にしたのは、巨大化し人間より大きくなったタンポポ、地の池、その周りで飢餓に苦しむ鬼たち、という地獄絵図であった---。しかも実はその鬼は元人間であり、悪事を重ねた人間のなれの果てだと言う。放射能によって突然変異を起こした植物、食糧危機、そしてそこで苦しむ人間たちをとおして、強欲のために世界を破壊し続ける人間に警鐘を鳴らす。『赤富士』と並んで黒澤の人間の愚かさに対する恐怖が表出した一作。


「第8/水車のある村」 出演:笠 智衆


どこまでも続く大自然。鬱蒼と茂った木々。清らかな水をたたえた川。その中に""がいる。""は水車の修理をしている老人と出会い、その話に耳を傾ける。その老人の口から出てきたのは、自然と尊び、共存する人間たちの姿だった---。『赤富士』『鬼哭』で人間の所業とその結果を壮絶なまでの映像で見せた黒澤が、その締めくくりで見せた人間への希望のメッセージ。奇をてらうことなく、訥々と語る老人と黒澤の姿が重なって見える最後の『夢』の物語。


 

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