ひかげのかづらを詠んだ歌
「日陰(ひかげ)の蔓(かづら)」はヒカゲノカズラ科ヒカゲノカズラ属の多年生のつる性の常緑草です。古代から神事の際に襷(たすき)にしたり、髪飾りにしたりして用いられてきました。
万葉集には、山縵(やまかづら)、玉縵(たまかづら)、単に「かづら」などと6首に詠まれています。歌にみられるように、ひかげのかづらは蔓(つる)のように伸びるので、飾りとして頭に巻いたりしたようです。
巻13⁻3229:斎串立てみわ据ゑ奉る祝部がうずの玉かげ見ればともしも
◎古代の祭祀具に、斎串(いぐし)と呼ばれる道具があります。名前のとおり串状の形をしたもので、平らな板や細い棒を加工して作られています。祭祀で使用される「神聖な木」のひとつとして使われていたと考えられています。
斎串は、様々な形や加工を施したものがあります。平らな板を加工して作られたものでは、両端を斜めに切り落としたもの(①:長さ14.3㎝)や、両端を尖らせたものがあります。両端を尖らせたものでは、側面上部などに切り込みを1回から複数回入れたもの(②:長さ12.3㎝)や、側面を三角形に小さく連続して切り欠いたもの(③:長さ30.2㎝以上)があります。また、先端を尖らせた棒状のもの(④:長さ16.4㎝以上)があり、これにも側面や上端に切り込みの加工が施されています。
◎祝部(はふりべ)
古代の下級神職。「はふり」は罪穢(けがれ)を放(はふ)る意です。令(りょう)制では国司が神戸(かんべ)のなかから簡定してあたらせ、適材がないか、または神戸がない場合は公戸(こうこ)から採用し、太政官(だいじょうかん)に申告する規定でした(職員令、神祇(じんぎ)官条)。なお簡定には神祇官が遣使して卜定(ぼくてい)する場合もありました(集解(しゅうげ)、古記)。祝部は大社には神主(かんぬし)・禰宜(ねぎ)の下に多くいましたが、神戸を有しない小社には、公戸から臨時に簡定された祝部が1人だけで司祭する場合もありました。
巻14-3573:あしひきの山かづらかげましばにも得がたきかげを置きや枯らさむ
巻16-3789:あしひきの山縵の子今日行くと我れに告げせば帰り来ましを
標題:或曰 有三男 同娉一女也 娘子嘆息曰 一女之身易滅如露 三雄之志難平如石 遂乃彷徨池上沈没水底 於時其壮士等不勝哀頽之至 各陳所心作謌三首 (娘子字曰縵兒也)
標訓:或は曰はく「三(みたり)の男(をのこ)有りき、同(とも)に一(ひとり)の女(をみな)を娉(よば)ふ。 娘子(をとめ)嘆息(なげ)きて曰はく『 一の女の身は滅(めつ)し易く露の如く、三(みたり)の雄(をのこ)の志(こころ)は平(にき)び難く石(いはほ)の如く』といふ。 遂に池の上(ほとり)に彷徨(たもとほ)り、水底(みなそこ)に沈没(しづ)みき。時に其の壮士(をのこ)等、哀頽(かなしび)の至(きはみ)に勝(あ)へずして、各(おのおの)所心(おもひ)を陳(の)べて作れる謌三首 (娘子、字(な)を「縵兒(かづらこ)」と曰ふ)
標訳:或は云うには「三人の男がいた、おのおのに一人の女に求婚した。 娘子が嘆息をつきながら云うには『 一人の女の命は儚く露のようです、三人の雄者の想いを調停し難く、まるで岩のようです』といった。 そこで池の辺を彷徨い、水底に身を投げた。その時に其の壮士たちが、悲嘆の想いに勝てなくて、おのおのの想いを陳べて作った謌三首 (娘子、名を「縵兒」と云った)
おのおのの想いを陳べて作った歌とは
3788:耳成の池し恨めし我妹子が来つつ潜かば水は涸れなむ
(耳成山の池が恨めしい。あの娘が水に沈んだら、枯れてくれれば良かったのに。〈そうしたら、あの娘は死ななくてすんだのに〉)
3789:あしひきの山縵の子今日行くと我れに告げせば帰り来ましを
(山縵〈やまかづら〉の子が、きょう逝(い)ってしまうと私に告げてくれたのなら、帰ってきたのに。)
3790: あしひきの玉縵の子今日のごといづれの隈を見つつ来にけむ
次の歌で説明します。
巻16-3790:あしひきの玉縵の子今日のごといづれの隈を見つつ来にけむ
巻18-4120:見まく欲り思ひしなへにかづらかけかぐはし君を相見つるかも
巻19-4278:あしひきの山下ひかげかづらける上にやさらに梅をしのはむ
ウェブニュースより
国内新たに501人感染 空港検疫100人超―新型コロナ ―― 国内では29日、新たに501人の新型コロナウイルス感染が確認された。1日当たりの感染者が500人を上回ったのは10月16日以来。空港検疫で過去最多となる103人の陽性が判明した。全国の重症者は前日比3人増の49人、死者は4人確認された。
東京都では新たに76人の感染が判明。都内の新規感染者が50人を超えたのは10月16日以来で、前週の水曜日から36人増えた。死者は確認されなかった。
都によると、新規感染者の直近1週間平均は44.9人で、前週比157%。都基準による重症者は前日から1人減り、1人となった。
厚生労働省は29日、17~25日に日本へ到着した113人のオミクロン株感染が空港検疫で新たに確認されたと発表した。 (JIJI.COM 2021年12月29日21時30分)
日本海側中心に30日から元日にかけて大雪に 気象庁が警戒呼びかけ ―― 上空に強い寒気が流れ込み、強い冬型の気圧配置になる影響で、30日から1月1日ごろにかけて、北日本から西日本の日本海側を中心に大雪や荒れた天気になる、と気象庁が29日発表した。積雪や路面凍結による交通障害、落雪、強風、高波などに警戒するよう呼びかけている。
気象庁によると、30日午後6時までの24時間の降雪量は多い所で、東海地方が40センチ、北陸地方が30センチ、関東甲信地方が25センチ。31日午後6時までの24時間では多い所で、北陸地方が70~100センチ、関東甲信地方が60~80センチ、東北地方が50~70センチ、東海、近畿、中国地方が40~60センチと予想されている。太平洋側も山地を中心に大雪となり、平地でも積もる所があるという。
大みそかの31日午後6時からの24時間の降雪量は多い所で、関東甲信地方が50~70センチ、東北、北陸地方が40~60センチ、近畿が20~40センチとなる見込み。 (朝日新聞DIGITAL 2021年12月29日 18時05分)
安倍元首相の捜査終結 桜を見る会、再び不起訴 検察と市民感覚に温度差 ―― 安倍晋三元首相側が主催した「桜を見る会」前夜祭を巡り、検察審査会の議決を受け再捜査してきた東京地検特捜部は28日、公職選挙法違反などの容疑について安倍氏を再び不起訴とした。「桜」を巡る安倍氏への捜査は終結した。「政治とカネ」の問題では検察捜査と、市民で構成する検察審との温度差が目立つ。専門家は「検察は不起訴の理由を丁寧に説明すべきだ」と話す。
焦点になったのは2018、19年の前夜祭での安倍氏側の支出が、有権者への「違法な寄付」にあたるかどうかだった。特捜部は最初の捜査の結果、20年12月に安倍氏をいったん不起訴としたが、告発者が検察審に審査を申し立て、東京第1検察審査会が今年7月に「不起訴不当」と議決。特捜部が再捜査していた。
特捜部は再捜査で、18年の前夜祭は時効が成立したと判断。19年の前夜祭では(1)参加者が寄付を受けた認識がない(2)安倍氏が有権者らに寄付をしたと認識していた証拠がない――などの理由から、改めて不起訴(嫌疑不十分)と結論づけた。
安倍氏は28日、「厳正な捜査の結果、不起訴と決定されたものと受けとめています」とのコメントを出した。
司法分野でも市民感覚を生かすため、裁判員制度の導入と同時に検察審に「強制起訴」権限が新設されたのは09年だ。市民で構成する検察審が2回「起訴すべきだ」と判断すれば強制起訴でき、これまで少なくとも10件の強制起訴が行われた。強制起訴に至らなくても、「不起訴不当」として再捜査を求めることもできる。今回のように「政治とカネ」を巡り、検察側の不起訴に検察審が異を唱える例が目立つ。
もっとも、政治家が刑事責任を負う結果につながることは少ない。小沢一郎元民主党代表の資金管理団体を巡る政治資金規正法違反事件では、検察審が「取り調べは不十分」と強制起訴を議決したが、裁判の結果、小沢氏は無罪が確定した。甘利明衆院議員の元秘書2人をあっせん利得処罰法違反容疑で不起訴不当とした事案でも、特捜部は不起訴とした。
背景にあるのが、有罪立証に高いハードルを課される検察と、疑惑の真相解明を求める「市民代表」としての検察審の立場の違いだ。
安倍氏の事案でも、検察審は「総理大臣であった者が、秘書がやったことだと言って関知しない姿勢は国民感情として納得できない」として不起訴不当を選んだ。一方、検察内部からは「政治生命を絶つ起訴を道義的責任や国民感情では判断できない」(幹部)との声があがった。
温度差の背景には検察側の説明不足もある。刑事訴訟法は「訴訟に関する書類は公判の前に公にしてはならない」と規定する。不起訴の場合は公判が開かれないため、検察は理由の開示に対してより消極的だ。
ただ同法は「不起訴処分は告発人の請求があれば理由を告げなければならない」とも定める。関西学院大の川崎英明名誉教授(刑事訴訟法)は、現状では国会の自浄作用が期待しづらいとして「政治とカネを巡る疑惑の捜査結果は、刑訴法や検察審制度の趣旨からも、理由や判断の経緯を国民により丁寧に説明すべきだ」と訴えている。 【日本經濟新聞 2021年12月29日 2:00】
sechin@nethome.ne.jp です。
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