桃(もも)を詠んだ歌
桃は、バラ科の落葉高木です。4月頃に葉よりも先にいわゆる桃色の花が咲きます。原産は中国ですが、かなり古い時代に日本に渡ってきたようです。昔は、桃は鬼や悪霊をやっつける木だと考えられていました。三月三日の節句には桃の花を神様に供えたそうです。
万葉集に「桃(もも)」を詠んだ歌は7首あります。「毛桃」と詠まれている場合、女性のことを意識しているようですね。
巻7-1356: 向つ峰に立てる桃の木ならめやと人ぞささやく汝が心ゆめ
巻7-1358: はしきやし我家の毛桃本茂く花のみ咲きてならずあらめやも
巻10-1889: 我が宿の毛桃の下に月夜さし下心よしうたてこのころ
巻11-2834: 大和の室生の毛桃本繁く言ひてしものをならずはやまじ
12-2970: 桃染めの浅らの衣浅らかに思ひて妹に逢はむものかも
巻19-4139: 春の園紅にほふ桃の花下照る道に出で立つ娘子
巻19-4192: 桃の花紅色ににほひたる面輪のうちに青柳の.......(長歌)
標題:詠霍公鳥并藤花一首并短謌
標訓:霍公鳥に藤の花の并せて詠める一首并せて短謌
原文:桃花 紅色尓 々保比多流 面輪能宇知尓 青柳乃 細眉根乎 咲麻我理 朝影見都追嬬良我 手尓取持有 真鏡 盖上山尓 許能久礼乃 繁谿邊乎 呼等米尓 旦飛渡 暮月夜 可蘇氣伎野邊 遥々尓 喧霍公鳥 立久久等 羽觸尓知良須 藤浪乃 花奈都可之美 引攀而 袖尓古伎礼都 染婆染等母
万葉集 巻19-4192
作者:大伴家持
よみ:桃の花 紅(くれなゐ)色(いろ)に にほひたる 面輪(おもわ)のうちに 青柳の 細き眉根(まよね)を 笑(ゑ)み曲(ま)がり 朝影見つつ 娘女(をとめ)らが 手に取り持てる まそ鏡 二上山に 木(こ)の暗(くれ)の 茂き谷辺(たにへ)を 呼び響(とめ)に 朝飛び渡り 夕(ゆふ)月夜(つくよ) かそけき野辺に はろはろに 鳴くほととぎす 立ち潜(く)くと 羽触(はふ)れに散らす 藤波の 花なつかしみ 引き攀(よ)ぢて 袖に扱入(こき)れつ 染(し)まば染(し)むとも
意味: 桃の花、その紅色に輝いている面の中で、ひときは目立つ青柳の葉のような細い眉、その眉がゆがむほどに笑みこぼれて、朝の姿を映して見ながら、娘子が手に掲げ持っている真澄みの鏡の蓋ではないが、その二上山に、木の下闇の茂る谷辺一帯を鳴きとよもして朝飛び渡り、夕月の光かすかな野辺に、はるばると鳴く時鳥、その時鳥が翔けくぐって、羽触れに散らす藤の花がいとおしくて、引き寄せて袖にしごき入れた。色が染みつくなら染みついてもかまわないと思って。
左注:同九日作之
注訓:同じき九日作れり
ウェブニュースより
香港民主派に恐怖広がる 「逮捕情報」出回る―国家安全法、30日にも成立 ―― 【香港時事】中国全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会で審議中の香港への統制を強化する「国家安全維持法案」が30日にも30日にも可決・成立するとみられる。同法の施行は、香港の英国から中国への返還記念日に当たる7月1日と目され、施行と同時に著名民主派が逮捕されるとの情報も出回る。香港民主派の間には確実に恐怖が広がっている。
1989年の天安門事件当時の学生リーダーだった王丹氏は28日、自身のフェイスブックを通じ、外国メディア関係者からの情報として、民主活動家の黄之鋒氏と民主派の香港紙「リンゴ日報」創業者・黎智英氏が7月1日に逮捕される可能性があると発信した。「(当局は)昨年のデモを通じて『ブラックリスト』入りした全ての人を捕まえるだろう」と述べ、警戒を呼び掛けた。
こうした情報の真偽は不明だが、インターネット上では、黄氏と黎氏に対して「海外逃亡」や「米総領事館への亡命申請」を促す声が多く上がっている。
香港メディアは、国家安全維持法成立によって違反者は最高で終身刑になる可能性もあると報じている。取り締まりの対象となるのは国家分裂や政権転覆、外国勢力と結託して国家の安全を危うくする行為などだが、特に「香港独立」を掲げてきた勢力は大きな脅威を感じている。
報道によると、政治団体「香港独立連盟」を率いてきた陳家駒氏は今月になって欧州に逃れた。陳氏は、抗議活動の中心だった若者に対して「米英が『脱出計画』を示した際には香港を離れる」よう呼び掛けた。また、2011年に香港の完全な自治を主張する「香港城邦論」を出版した陳雲氏は28日、フェイスブック上で「社会運動からの脱退」を宣言。「国家安全(維持)法は香港社会に安定をもたらす」と支持に回った。
7月1日の大規模デモは毎年恒例で、今年は国家安全維持法に反対するデモが呼び掛けられたが、取り締まり強化もあり、大規模な抗議活動に発展する可能性は低い。昨年の「100万人デモ」に参加した30代女性は「今逮捕されれば暴動罪(最高刑は禁錮10年)が適用される。とてもそれだけの心の準備はない」と絶望感を表した。 (JIJI.COM 2020年06月29日20時26分)
藤を詠んだ歌5
巻19-4207: ここにしてそがひに見ゆる我が背子が.......(長歌)
標題:廿二日贈判官久米朝臣廣縄霍公鳥怨恨謌一首并短謌
標訓:廿二日に、判官久米朝臣廣縄に贈れる霍公鳥(ほととぎす)を怨恨(うらみ)たる謌一首并せて短謌
原文:此間尓之氏 曽我比尓所見 和我勢故我 垣都能谿尓 安氣左礼婆 榛之狭枝尓 暮左礼婆 藤之繁美尓 遥々尓 鳴霍公鳥 吾屋戸能 殖木橘 花尓知流 時乎麻多之美 伎奈加奈久 曽許波不怨 之可礼杼毛 谷可多頭伎氏 家居有 君之聞都々 追氣奈久毛宇之
万葉集 巻19-4207
作者:大伴家持
よみ:ここにして 背向(そがひ)に見ゆる 吾が背子が 垣内(かきつ)の谷に 明(あ)けされば 榛(はり)しさ枝に 夕されば 藤し繁みに 遥遥(ほろほろ)に 鳴く霍公鳥(ほととぎす) 吾が屋戸(やと)の 植木橘 花に散る 時をまだしみ 来鳴かなく そこは恨みず しかれども 谷片付きて 家(いへ)居(を)れる 君し聞きつつ 告げなくも憂(う)し
意味:ここに居て背後に見える私が尊敬する貴方の屋敷の垣の内にある谷に、夜が明けてくると榛の枝先に、夕べになると藤の茂みに、遥かに鳴くホトトギス、私の屋敷の植木の橘の花散る時期が、まだ、早いと、飛び来て鳴かない。それは恨みはしないが、しかしながら、その谷間に近くに家を構えて住んでいる貴方がホトトギスの鳴き声を聞きながら、私にそれを告げないのが、気に掛ります。
巻19-4210: 藤波の茂りは過ぎぬあしひきの山霍公鳥などか来鳴かぬ
ウェブニュースより
渡辺棋聖は過去に大逆転防衛、連勝藤井七段V率は? ―― 将棋の藤井聡太七段(17)が28日、初タイトル獲得へ王手をかけた。東京・千駄ケ谷「将棋会館」で行われた第91期ヒューリック杯棋聖戦5番勝負第2局で、渡辺明棋聖(36)を下し、2連勝とした。
開幕局を制した後の宣言通り、和服姿で登場。緊張することなく指し回して、タイトルホルダーをかど番へと押しやった。17歳11カ月21日での史上最年少初戴冠を目指す第3局は7月9日、東京都千代田区「都市センターホテル」で行われる。
https://www.youtube.com/watch?v=XgEcGBq2XII
◇ ◇ ◇
過去90回の棋聖戦5番勝負で、序盤に連勝した側のタイトル奪取または防衛は41回。このうち、3連勝のストレート勝ちが29回もある。逆に、2連勝3連敗の例も8回ある。ささいなことで流れが変わるのが、短期決戦の怖いところだ。
渡辺は08年の第21期竜王戦7番勝負で、挑戦者だった羽生善治九段に3連敗した後、4連勝の大逆転防衛をしたことがある。どこまで巻き返せるのか? [日刊スポーツ 2020年6月28日19時8分]
藤を詠んだ歌4
巻19-4192: 桃の花紅色ににほひたる面輪のうちに.......(長歌)
標題:詠霍公鳥并藤花一首并短謌
標訓:霍公鳥に藤の花の并せて詠める一首并せて短謌
原文:桃花 紅色尓 々保比多流 面輪能宇知尓 青柳乃 細眉根乎 咲麻我理 朝影見都追嬬良我 手尓取持有 真鏡 盖上山尓 許能久礼乃 繁谿邊乎 呼等米尓 旦飛渡 暮月夜 可蘇氣伎野邊 遥々尓 喧霍公鳥 立久久等 羽觸尓知良須 藤浪乃 花奈都可之美 引攀而 袖尓古伎礼都 染婆染等母
万葉集 巻19-4192
作者:大伴家持
よみ:桃し花 紅(くれなゐ)色(いろ)に 色付(にほひ)たる 面輪(おもわ)の裏(うち)に 青柳の 細き眉根(まよね)を 笑(ゑ)み曲(ま)がり 朝影見つつ 官女(をとめ)らが 手に取り持てる 真鏡(まそかがみ) 二上山に 木(こ)の暗(くれ)の 茂き谷辺を 呼び響(とめ)に 朝飛び渡り 夕(ゆふ)月夜(つくよ) かそけき野辺に はろはろに 鳴く霍公鳥(ほととぎす) 立ち潜(く)くと 羽触(はふ)れに散らす 藤波の 花なつかしみ 引き攀(よ)ぢて 袖に扱入(こき)れつ 染(し)まば染(し)むとも
意味:桃の花の、その紅色に色づいて、顔の中に青柳のような細い眉を笑い崩すような、その朝の稜線を眺めながら、娘女たちが手に取って持つ美しい鏡のように、(いつも眺める)二上山の、その木の枝下を暗く葉を茂らせる谷間を、友を呼び鳴き声を響かせて、朝に飛び渡り、夕月夜の光か細い野辺に、遥かに鳴く、ホトトギスが木々の枝間を潜り飛ぶと、翼に羽ばたきに散らす、藤波の花に心を惹かれて、その花を引き攀じって、袖にしごき入れて、花に袖が染まるのなら染まっても良い。
巻19-4193: 霍公鳥鳴く羽触れにも散りにけり盛り過ぐらし藤波の花
巻19-4199: 藤波の影なす海の底清み沈く石をも玉とぞ我が見る
巻19-4200: 多胡の浦の底さへにほふ藤波をかざして行かむ見ぬ人のため
※内蔵縄麻呂(くらの-なわまろ、生没年不詳)
奈良時代の官吏、歌人です。天平17 (745) 年ごろ大蔵少丞(おおくらのしょうじょう)でした。19年越中介(えっちゅうのすけ)として赴任、守(かみ)大伴家持らと酒宴や遊覧につどい、歌をよみました。そのときの4首と、家持が縄麻呂の歌に和した4首が「万葉集」にのります。天平勝宝5 (753) 年には造東大寺司の判官(じょう)の任にありました。名は「ただまろ」ともよみます。
巻19-4201: いささかに思ひて来しを多胡の浦に咲ける藤見て一夜経ぬべし
※久米広縄(くめの-ひろなわ、生没年不詳)
奈良時代の官吏です。天平20 (748) 年から3年あまり越中掾(じょう)でした。越中守大伴家持らと布勢水海(ふせのみずうみ)(富山県氷見(ひみ)市)をたずね、内蔵縄麻呂(くらの-なわまろ)宅の宴に参加するなどして歌をよみました。「万葉集」巻18・19に、長歌1首、短歌8首があります。名は「ひろただ」「ひろつな」ともよみます。
巻19-4202: 藤波を仮廬に作り浦廻する人とは知らに海人とか見らむ
※久米継麻呂(くめの-つぎまろ、生没年不詳)
奈良時代の官吏です。天平勝宝(てんぴょうしょうほう)2 (750) 年、越中守大伴家持(おおともの-やかもち)らと布勢水海(ふせのみずうみ)(富山県氷見(ひみ)市)を遊覧したときの歌1首が「万葉集」巻19にみえます。
ウェブニュースより
外国人が消え、日本人も敬遠… 宣言解除から1カ月 浅草、高尾山に観光客戻らず<都知事選 現場から> ――
◆旅館や土産物店が閉店
新型コロナウイルスの感染拡大前は、外国人観光客らであふれ返っていた東京・浅草(台東区)。緊急事態宣言が全面解除されてから25日で1カ月たったが、訪れる人の数は以前のようには戻っていない。インバウンド(訪日外国人)が途絶えたことで経営が悪化した旅館や飲食店、土産物店などの閉店が続く。
「売り上げの二本柱である外国人と修学旅行の学生の両方が駄目になった」。浅草寺前の仲見世通りで140年以上続く老舗土産物店「稲葉商店」店主で、浅草商店連合会理事長の稲葉和保さん(62)は嘆く。昨年10月の消費税増税のあおりを受け、年初から売り上げが減少。さらにコロナ禍が重なり、休業していた4~5月の収入はゼロ。営業を再開し、希望を抱いた6月も苦しいままだ。
使える融資制度はすべて利用した。インバウンドは当面期待できず、国内観光客を目当てに店を開けるが、「コロナ禍で人が行くのは日用品を買えるところ。(優先順位で)観光は最後なんだと気付いた」。
都内では新たに確認される感染者数が高止まりしており、今後も東京観光は敬遠される可能性がある。稲葉さんは「新しい都知事には、コロナの封じ込めに全力を尽くしてほしい。それが観光業が上向くことにつながる」と訴える。
◆外国人スタッフを減員
京王線高尾山口駅(八王子市)の構内にある観光案内所。3月に案内所を訪れた外国人はわずか23人。1昨年同月の717にん、昨年の644人から激減した。例年は書き入れ時の4、5月は、案内所そのものが閉鎖していた。
登山口に程近いゲストハウス・カフェバー「高尾山ベースキャンプ」。昨年11月に開業し、客でにぎわっていたのもつかの間、経営する宮沢宏和さん(40)は「3月以降、外国人が消えた」と肩を落とす。
東京五輪の期間に入っていた予約は、延期により18連泊をはじめキャンセルが続出。3人いた米国などの外国人スタッフも感染拡大後、1人に。宮沢さんは「施設をリモートワークの拠点にするなど、新たな業態も考えなければならないが、都や国の支援がないと破綻する」と切実だ。
くしくも19日、高尾山を中心とした有形無形の文化財が、都内で初めて文化庁の「日本遺産」に選ばれた。予定通り五輪が開かれていれば外国人呼び込みの起爆剤になったはずだが、認定に奔走してきた八王子市職員の表情は険しい。
市は国内からの誘客に力を入れ、長期的なPRにつながる戦略の模索を始めている。担当者は「まずは多くの日本人に魅力を知ってもらいたい」と話す。
都は国の支援策以外に独自で、大打撃を受けた宿泊業者に対し、自動チェックイン機を設置するなど非接触サービスの導入や、タクシー、バス事業者が感染予防のためにアクリル板やビニールシートを車内に設置した場合に補助金を出す。ただ土産物店や飲食店に対象を限定した支援策は行っていない。
中腹にある飲食店の男性店主は「日本人とか外国人とか以前の問題。激減した客をどう取り戻すのか。それを考えるので精いっぱい」と悲愴(ひそう)感悲壮感を漂わせた。
(東京新聞 2020年6月26日 05時50分)
ウェブニュースより
藤井七段 王位挑戦権を獲得!永瀬二冠との激闘制す…最年少Wタイトル挑戦へ「しっかり準備したい」 ―― 最年少ダブル挑戦なる―。将棋の藤井聡太七段(17)は23日、第61期王位戦挑戦者決定戦(中日新聞、東京新聞主催)で永瀬拓矢二冠(27)=叡王・王座=を127手で破り、木村一基王位(47)への挑戦権を獲得した。8日に開幕した棋聖戦五番勝負に続き、2つ目のタイトル挑戦となった。七番勝負は7月1日、愛知県豊橋市で開幕する。
ついにその時はやって来た。午後7時52分、永瀬二冠が128手目を指さずに投了を告げると、藤井七段は深々と頭を下げた。それは日本中のファンが待望する「最年長VS最年少シリーズ」の実現が決まった瞬間でもあった。昨年、46歳3カ月の最年長タイトル獲得で「中高年の星」と呼ばれた木村王位に最年少タイトル挑戦の藤井七段が挑む「7・1」は、将棋史に刻まれる日となる。
対局後、王位戦挑戦者になれた感想を聞かれた藤井七段は「うれしく思っています」と喜びをかみしめた。2日制の七番勝負については「持ち時間8時間は指したことがないので、じっくり考えられるのは楽しみ。しっかり準備していい将棋を指したい」と意気込み、木村王位の印象は「力強い受けに特徴がある」とした。永瀬二冠は「力負けしてしまったという印象が強い。また勉強して頑張りたい」と敗戦の弁を述べた。
https://www.youtube.com/watch?v=YPE9fanANl8
「VS」(1対1の練習将棋)仲間でもある永瀬二冠との激闘をまたも制した。「名局」と評された4日の棋聖戦挑戦者決定戦とは、先後も戦型も違った。先手の藤井七段が選択したのは角換わり早繰り銀。大一番で相手の得意形に飛び込むところに、天才少年の心意気が感じられた。じりじりとした難解な局面が続くなか、藤井七段が受けに回る展開に。それでも均衡を保ちながら終盤戦に突入すると、最後はぎりぎり余して一気に寄せきった。消費時間は藤井七段3時間57分、永瀬二冠3時間59分だった。
令和を代表するゴールデンカードになるに違いない。コロナ禍の影響で超過密日程を強いられている2人。藤井七段は20日の竜王戦3組決勝での師弟対決・杉本昌隆八段(51)戦から中2日。永瀬二冠は豊島将之竜王・名人(30)に千日手指し直しの末に敗れた21日の叡王戦七番勝負第1局から中1日の強行軍だった。それでもこれほどの名勝負を演じたのは、心技体に突出した天才&軍曹ならではといえた。 (中スポ 2020年6月23日 21時45分)
藤を詠んだ歌3
巻19-4187: 思ふどちますらをのこの木の暗の.......(長歌)
標題:六日、遊覧布勢水海作謌一首并短謌
標訓:六日に、布勢の水海(みづうみ)を遊覧して作れる謌一首并せて短謌
原文:念度知 大夫能 許能久礼 繁思乎 見明良米 情也良牟等 布勢乃海尓 小船都良奈米 真可伊可氣 伊許藝米具礼婆 乎布能浦尓 霞多奈妣伎 垂姫尓 藤浪咲而 濱浄久 白波左和伎 及々尓 戀波末佐礼杼 今日耳 飽足米夜母 如是己曽 祢年能波尓 春花之 繁盛尓 秋葉能 黄色時尓 安里我欲比 見都追思努波米 此布勢能海乎
万葉集 巻19-4187
作者:大伴家持
よみ:念(おも)ふどち 大夫(ますらを)の 木(こ)の暗(くれ) 繁き思ひを 見(み)明(あき)らめ 情(こころ)遣らむと 布勢の海に 小船つら並(な)め 真櫂(まかい)掛け い漕ぎ廻れば 乎布(をふ)の浦に 霞たなびき 垂姫に 藤波咲て 浜清く 白波騒き しくしくに 恋はまされど 今日のみに 飽き足らめやも かくしこそ いや年のはに 春花し 茂き盛りに 秋し葉の 黄色(もみち)し時に あり通ひ 見つつ偲はめ この布勢の海を
意味:親しいもの同士で、立派な大夫たちが、木の枝下暗く繁るように、しきりに募る物思いを、景色を眺めて気をすっきりさせ、憂さを晴らそうと、布施の海に小舟を連ねて、立派な櫂を取り掛け、漕ぎ廻ると、乎布の入江に霞がたなびき、垂姫には藤波が咲いて、浜は清らしく、白波が打ち寄せ潮騒がし、波が次々と打ち寄せるように、つぎつぎと景色を慕う気持ちは勝るが、今日だけで飽きたるでしょうか、このように、一層に年毎に、春の花の咲き茂る盛りに、秋の葉が黄葉する時に、絶えることなく次々と通い、眺めながら景色を堪能しよう。この布施の海を。
巻19-4188: 藤波の花の盛りにかくしこそ浦漕ぎ廻つつ年に偲はめ
藤(ふじ)を詠んだ歌2
巻12-2971: 大君の塩焼く海人の藤衣なれはすれどもいやめづらしも
巻12-3075: かくしてぞ人は死ぬといふ藤波のただ一目のみ見し人ゆゑに
巻13-3248: 敷島の大和の国に人さはに満ちてあれども.......(長歌)
巻14-3504: 春へ咲く藤の末葉のうら安にさ寝る夜ぞなき子ろをし思へば
巻17-3952: 妹が家に伊久里の杜の藤の花今来む春も常かくし見む
※大原高安(おおはらの-たかやす、?~743年)
奈良時代の官吏です。天武天皇の曾孫(そうそん)。川内王の子。はじめ高安王と称しました。和銅6年従五位下にすすみ、養老3年伊予守(いよのかみ)のとき按察使(あぜち)を兼任します。のち衛門督(かみ)。天平11年弟の桜井王らとともに大原真人(まひと)の氏姓をあたえられました。「万葉集」に歌3首がおさめられています。天平14年12月19日死去。
巻17-3993: 藤波は咲きて散りにき卯の花は今ぞ盛りと.......(長歌)
標題:敬和遊覧布勢水海賦一首并一絶
標訓:布勢(ふせ)の水海(みづうみ)に遊覧せる賦(ふ)に敬(つつし)み和(こた)へたる一首并せて一絶
原文:布治奈美波 佐岐弖知理尓伎 宇能波奈波 伊麻曽佐可理等 安之比奇能 夜麻尓毛野尓毛 保登等藝須 奈伎之等与米婆 宇知奈妣久 許己呂毛之努尓 曽己乎之母 宇良胡非之美等 於毛布度知 宇麻宇知牟礼弖 多豆佐波理 伊泥多知美礼婆 伊美豆河泊 美奈刀能須登利 安佐奈藝尓 可多尓安佐里之 思保美弖婆 都麻欲比可波須 等母之伎尓 美都追須疑由伎 之夫多尓能 安利蘇乃佐伎尓 於枳追奈美 余勢久流多麻母 可多与理尓 可都良尓都久理 伊毛我多米 氏尓麻吉母知弖 宇良具波之 布施能美豆宇弥尓 阿麻夫祢尓 麻可治加伊奴吉 之路多倍能 蘇泥布里可邊之 阿登毛比弖 和賀己藝由氣婆 乎布能佐伎 婆奈知利麻我比 奈伎佐尓波 阿之賀毛佐和伎 佐射礼奈美 多知弖毛為弖母 己藝米具利 美礼登母安可受 安伎佐良婆 毛美知能等伎尓 波流佐良婆 波奈能佐可利尓 可毛加久母 伎美我麻尓麻等 可久之許曽 美母安吉良米々 多由流比安良米也
万葉集 巻17-3993
作者:大伴池主
よみ:藤波は 咲きて散りにき 卯の花は 今ぞ盛りと あしひきの 山にも野にも ほととぎす 鳴きし響(とよ)めば うち靡く 心もしのに そこをしも うら恋しみと 思ふどち 馬打ち群れて 携(たづさ)はり 出で立ち見れば 射水川(いづみかは) 湊の渚鳥(すとり) 朝なぎに 潟にあさりし 潮満てば 妻呼び交す 羨(とも)しきに 見つつ過ぎ行き 渋谿(しふたに)の 荒礒(ありそ)の崎に 沖つ波 寄せ来る玉藻 片縒(かたよ)りに かづらに作り 妹がため 手に巻き持ちて うらぐはし 布勢の水海(みづうみ)に 海人(あま)舟に ま楫(かぢ)掻(か)い貫(ぬ)き 白栲の 袖振り返し 率(あども)ひて 我が漕ぎ行けば 乎布(をふ)の崎 花散りまがひ 渚(なぎさ)には 葦鴨(あしかも)騒き さざれ波 立ちても居ても 漕ぎ廻(めぐ)り 見れども飽かず 秋さらば 黄葉の時に 春さらば 花の盛りに かもかくも 君がまにまと かくしこそ 見も明らめめ 絶ゆる日あらめや
意味:藤の花房は咲いてもう散ってしまった、卯の花は今がまっ盛りだとばかりに、あなたの山にも野にも時鳥がしきりに鳴き立てているので、思い靡く心もしおれればかりに時鳥の声が恋しくなって、心打ち解けた者同士馬に鞭打ち相連れ立って出かけて来て目にやると、射水川の河口の洲鳥、洲に遊ぶその鳥は、朝凪に干潟で餌をあさり、夕潮が満ちて来ると妻を求めて呼び交わしている。心引かれはするものの横目に見て通り過ぎ、渋谷の荒磯の崎に沖の波が寄せてくる玉藻を、一筋縒りに縒って縵に仕立て、いとしい人に見せるつとにもと手に巻きつけて、霊験あらたかなる布勢の水海で、海人の小舟に楫を揃えて貫き出し、白栲の袖を翻しながら声かけ合って一同漕ぎ進んで行くと、乎布の崎には花が散り乱れ、波打際には葦鴨が群れ騒ぎ、さざ波立つというではないが、立って見ても坐って見ても、あちこち漕ぎ廻って見ても、見飽きることがない。ああ、秋になったら黄葉の映える時に、また春がめぐってきたら花の盛りの時に、どんな時にでもあなたのお伴をして、今見るように思う存分眺めて楽しみたいものです。われらがこの地を顧みることが絶える日など、どうしてありましょう。
左注:右掾大伴宿禰池主作 [四月廿六日追和]
注訓:右は掾(じょう)大伴宿禰池主作れり [四月二十六日追和]
巻18-4042: 藤波の咲き行く見れば霍公鳥鳴くべき時に近づきにけり
※田邊福麻呂(たなべの-さきまろ、生没年不詳)
奈良時代の万葉歌人。下級官吏として世を終えたようです。『万葉集』によると、天平20(748)年造酒司(みきのつかさ)令史で、左大臣橘諸兄(もろえ)の使いとして越中国におもむき、国守大伴家持らと遊宴し作歌しています。そのほか同12年頃から同16年頃にかけて、恭仁京、難波京に往来して作歌し、また東国での作もあります。『万葉集』に「田辺福麻呂之歌集所出歌」を含めて長歌 10首、短歌 34首を残します。長歌の多いこと、主題、素材、表現に先行歌人の影響の著しいことが特色で、柿本人麻呂、山部赤人の流れをくむ宮廷歌人とみる説もあります。
巻18-4043: 明日の日の布勢の浦廻の藤波にけだし来鳴かず散らしてむかも
ウェブニュース
藤井聡太七段が師匠に連勝…初の竜王戦4組連続優勝 ―― 将棋の最年少タイトル挑戦者、藤井聡太七段(17)が20日、大阪市の関西将棋会館で指された第33期竜王戦3組ランキング戦決勝で師匠の杉本昌隆八段(51)を破り、史上初の「4期連続優勝」の新記録を達成した。
弟子入りから7年、前回に続き2度目の師弟対決を制し、成長ぶりを示す「恩返し」を果たした。
終局後、藤井は師弟戦に「こういう決勝の大舞台で対局できるのを非常に楽しみにしていた。一手一手をしっかり指すことができた」と振り返った。
関西将棋会館で最もグレードの高い「御上段(おんじょうだん)の間」。午前10時、師弟戦がスタート。先手の藤井がいつものようにお茶を一口飲み、初手を指した。一方の杉本は棋士が重要な対局の時に身を包む和装姿で臨んだ。杉本は時折、口をへの字に曲げ、気合の入った表情を見せた。
2人とも決勝進出した時点で2組への昇級を決めているが、決勝トーナメントに進出できるのは勝者のみ。1枚の切符をめぐる、まさに大一番。杉本が選んだ戦型は得意の四間(しけん)飛車。全力で負かしに来た師匠を相手に藤井は、時間を使い、丹念に手を読んだ。「盤上では対等であり、ライバル」。勝負師としての教えを忠実に守った。中盤まで一進一退の攻防が続く。終盤に入ると、際どい攻め合いになり、藤井が厳しい手を連発し、投了に追い込んだ。
https://www.youtube.com/watch?v=iwn6nXJ_j0E
和装の勝負服で臨んだ杉本は「最高の舞台で藤井七段といい将棋を指したかった。私にとっては実質、タイトル戦に近い対局だった」と話した。
藤井はこれで竜王戦ランキング戦は負けなしの20連勝。デビュー1年目の17年に最下級の6組を制すると、18年に5組、19年に4組で優勝して昇級。師匠を破り、史上初の「4組連続優勝」の新記録を達成し、挑戦者を決める決勝トーナメントに進んだ。
藤井は棋聖戦で最年少タイトル挑戦者となり、第1局で勝利。棋聖戦とのダブルタイトル挑戦をかけて23日には、永瀬拓矢2冠(27)と王位戦挑戦者決定戦を戦う。
◆竜王戦 将棋の8大タイトル戦の1つ(ほかは名人・叡王・王位・王座・棋王・王将・棋聖)。今期は全ての現役棋士のほか、女流棋士4人、奨励会三段1人、アマチュア6人が出場。予選はランクに応じて1~6組まで分けられる。豊島竜王への挑戦権をかけた決勝トーナメントに出場できるのは1組5人、2組2人、3、4、5、6組は各組優勝者の計11人。トーナメントの組み合わせもランク上位棋士ほど優遇される。優勝賞金は将棋界最高の4400万円。 [日刊スポーツ 2020年6月20日22時20分]
ウェブニュースより
都知事選立候補予定者が論戦 五輪開催か中止か再延期か ―― 東京都知事選の告示を翌日に控えた17日、立候補を表明した5人が、日本記者クラブによる共同記者会見に出席した。来夏への延期が決まった東京五輪・パラリンピック開催の是非や、新型コロナウイルスへの対応について、論戦を繰り広げた。五輪とコロナへの対応が大きな争点になりそうだ。
会見場は設けず、5人がオンライン会議システムに同時参加して、今回の都知事選では初めて顔をそろえた。5人は50音順に、元日弁連会長の宇都宮健児氏(73)、元熊本県副知事の小野泰輔氏(46)、現職の小池百合子氏(67)、NHKから国民を守る党党首の立花孝志氏(52)、れいわ新選組代表の山本太郎氏(45)。
主張が分かれたのが、東京五輪の開催の是非だ。
五輪・パラは来夏に延期され、国際オリンピック委員会(IOC)と大会組織委員会は費用縮減や簡素化の方針を示しているが、数千億円とされる追加費用の大半は開催都市の東京都が負担することになる。大会開催の要件となる海外での感染拡大収束のめどは立っていない。
来年の五輪・パラの「中止」を明言したのは山本氏。「特効薬もワクチンもない。開催地として安全にできないということをIOC側に伝えるべきだ」と訴えた。宇都宮氏も「感染症の専門家が開催困難と判断した場合は、IOCに中止を働きかける。中止で浮いた予算はコロナ災害の被害に遭った都民の支援に回したい」と述べた。
再延期を提案したのが、小野氏と、立花氏だ。小野氏は「2024年開催を目指す」とし、「公衆衛生が優れない国では、まだ感染拡大は止まらない。1年後の感染状態は非常に悲観的だ」と語った。立花氏は「4年後、あるいは2年後の開催」とし、「この判断は東京でやるのではなくIOCにやらせる。費用もIOCが負担しなくてはならなくなる」と主張した。
小池氏は「簡素化、費用縮減、都民・国民の理解が得られるように進める」とし、来夏の開催を目指す考えを改めて説明。「水際対策、選手村の安全安心の確保、観客をどうするか、課題はあるが、新しい五輪・パラリンピックの象徴を作っていく」と語った。
新型コロナ対策でも、候補者の特色が出た。小池氏は「CDC(米疾病対策センター)の東京版の創設」を挙げ、「医療機関との連携強化、感染者情報の正確な把握」を訴えた。
これに対し、宇都宮氏は「コロナ災害から都民一人ひとりの命と暮らしを守り抜く」とし、「自粛・休業要請に対する補償の徹底」を強調。「全都民に10万円の給付金」を掲げる山本氏も自粛要請への補償に触れ、「東京は超優良財政団体。圧倒的に資金を調達する能力がある」として、都債発行で財源を確保する考えを示した。
小野氏は、感染者が相次いでいる新宿・歌舞伎町を例に挙げ、「リスクがある所だけしっかりと対策する」とし、地域を限定したより強力な自粛要請を提案した。立花氏は、都のこれまでの対応を「行きすぎた自粛」と批判。一律の外出自粛ではなく、重篤化のリスクがある人に自粛要請を絞っていく考えを示した。
◇
18日に告示される都知事選には5人のほか、17日までに石井均氏、市川浩司氏、岩橋健一氏、押越清悦氏、込山洋氏、斉藤健一郎氏、桜井誠氏、竹本秀之氏、内藤久遠氏、長澤育弘氏、七海ひろこ氏、西本誠氏、久田真理子氏、平塚正幸氏、山口節生氏の15人が記者会見や朝日新聞の取材で立候補の意向を明らかにしている。 (朝日新聞DIGITAL 2020年6月17日 19時15分)
藤(ふじ)を詠んだ歌1
豆科フジ属のツル性の落葉樹で日本に古くからあります。4月~5月に小さな花が沢山垂れ下がります。
万葉集では藤は、藤波と表現されることが多いです。また、海女(あま)の藤衣(ふじころも)と表現されているものは、つるの繊維で織った粗末な衣のことのようです。
巻3-0330: 藤波の花は盛りになりにけり奈良の都を思ほすや君
※大伴四綱(おおともの-よつな、生没年不詳)
奈良時代の官吏。天平(729~749)初年のころに大宰府防人司佑(さきもりのつかさのじょう)をつとめました。17年雅楽助(ががくのすけ)となり、正六位上をさずかります。「万葉集」に歌5首がおさめられています。名は四縄ともかきます。
巻3-0413: 須磨の海女の塩焼き衣の藤衣間遠にしあればいまだ着なれず
※大網公人主(おほよさみのきみひとぬし、生没年不詳)
伝未詳です。公は君に同じく姓の一種です。主として地方の皇別氏族に用います。
巻8-1471: 恋しけば形見にせむと我がやどに植ゑし藤波今咲きにけり
巻8-1627: 我が宿の時じき藤のめづらしく今も見てしか妹が笑まひを
巻10-1901: 藤波の咲く春の野に延ふ葛の下よし恋ひば久しくもあらむ
巻10-1944: 藤波の散らまく惜しみ霍公鳥今城の岡を鳴きて越ゆなり
巻10-1974: 春日野の藤は散りにて何をかもみ狩の人の折りてかざさむ
巻10-1991: 霍公鳥来鳴き響もす岡辺なる藤波見には君は来じとや
ウェブニュースより
河井前法相夫妻に出頭要請 買収容疑、逮捕へ―参院選で現金・検察当局 ―― 自民党を離党した河井案里参院議員(46)=広島選挙区=が初当選した昨夏参院選をめぐり、地元政界に現金が配られた疑惑で、検察当局は、案里議員と夫の衆院議員河井克行前法相(57)=広島3区、自民離党=に対し、18日に出頭するよう要請した。公選法違反(買収)容疑で取り調べ、容疑が固まり次第逮捕する見通し。ウグイス嬢と呼ばれる車上運動員に対する違法報酬に端を発した一連の疑惑の捜査は、新たな局面に入る。
関係者によると、配られた現金は2000万円を超え、多くは前法相が配布。一部は案里議員自身が配っていた。
検察当局は、前法相の関係先から、配布先をまとめた「買収リスト」を押収。リストの記載内容や、事情聴取に現金受領を認めた地元議員側の供述を精査した結果、2019年7月投開票の参院選で案里議員への票の取りまとめを依頼した買収での立件が可能と判断したもようだ。 (JIJI.COM 2020年06月18日08時23分)
自民、苦渋の自主投票 小池氏とのねじれ抱えた自民都議会 ―― 現職の小池百合子氏が十二日、東京都庁で出馬表明をした六時間前。東京・永田町の自民党本部八階で、都知事選の候補者を決める最後の党都連の「選考委員会」があった。会議はわずか三十分で終了。部屋を出てきた鴨下一郎会長は淡々と語った。「独自候補の擁立には至らなかった。選考委員会の役割は終えた」
一六年都知事選、一七年都議選で小池氏に「都連はブラックボックス」などと批判され、相次いで敗れた自民。都知事選は、ようやく回ってきた「起死回生のチャンス」のはずだった。
一九年六月、都連は選考委員会を設立。都議らを中心に「小池氏は信用できない」と批判を繰り返し、独自候補の擁立を目指した。
対する小池氏は、したたかだった。
一六年、予算に都議会各会派の要望を反映させる「政党復活予算」の廃止を表明。自らは各業界団体へのヒアリングを続け、自民の影響力を奪った。
さらに党本部への接近。旧新進党などで行動を共にした二階俊博幹事長をたびたび訪れ、蜜月ぶりをアピールした。「小池氏に勝てる候補がいるなら早く連れてくればいい」。昨年十月、この言葉が二階氏の発言として伝えられると、都議の一人は声を震わせた。「こんなふうに言われたら誰も出られないじゃないか」
次第に小池氏支援が支配的になる。関係者によると、昨年末の時点ではほぼ独自候補擁立断念で固まっていたという。それでも築地市場の豊洲移転問題などで対立してきた一部の都議らは「筋が通らない」と抵抗。五月二十八日の選考委では「出てもいいという人間はいる」と、若手都議の擁立もにおわせたが、状況は変わらなかった。
小池氏の出馬表明が取り沙汰された十日、都議会自民党は、真偽が疑問視されてきた小池氏の「カイロ大卒業」についてただす決議案を出そうとした。ところが本会議直前に撤回。関係者は「党本部から強く止められた」と証言した。
小池氏が擦り寄ったのか、自民党が引き込もうとしたのか。結局、小池氏は党推薦を求めなかった。はしごを外された形の党の決定は中途半端な「自主投票」。十五日、鴨下会長は都内党支部長らを集めた会議で「誰を支援したらいいんだ」と問われ、「忖度(そんたく)してほしい」と回答。小池氏支援を鮮明にする二階幹事長を意識した発言だった。
抱き込むこともできず、対立もしない。都議の一人が吐き捨てるように言った。「情けない。また小池知事にしてやられた」
一方、小池都政で事実上の与党として存在感を高める公明党は実質的に小池氏を支援する方針。党関係者は冷ややかに語る。「小池氏は、二つに割れている自民が有権者に分かりにくいと考えて推薦申請をやめたのでは。小池氏とねじれているのは都議会の自民だけだ」
東京都知事選の告示を三日後に控えた十五日、選挙戦の主な構図が固まった。だが主要政党はいずれも自前で候補を立てられず、首都決戦としては異例の党派色が薄い展開となった。思惑や背景を追った。 (東京新聞 2020年6月16日 06時58分)
檜(ひ)を詠んだ歌3
巻10-1813: 巻向の桧原に立てる春霞おほにし思はばなづみ来めやも
巻10-2314: 巻向の桧原もいまだ雲居ねば小松が末ゆ沫雪流る
巻13-3232: 斧取りて丹生の桧山の木伐り来て.......(長歌)
◎古代、「瀧(たき)」という言葉は「激流」を意味していたそうです。その由来は、「水が激しく流れるさま」すなわち「たぎつ(激つ)」が「たぎ」に短縮され、さらに清音の「たき」になったものといわれております。
723年、元正天皇が吉野に行幸されました。この歌は、轟音を響かせて逆巻く流れを眼の前にしてお供の人が声高らかに詠ったものだといいます。吉野川を海に見立てて、白波の躍動するさま、吉野の景観の見事さを褒め称えています。
巻16-3824: さし鍋に湯沸かせ子ども櫟津の桧橋より来む狐に浴むさむ
※長奥麻呂(ながのおきまろ、生没年未詳)
伝未詳。姓は忌寸(いみき)。名は意吉麻呂(意寸麻呂とも書く)。人麻呂・高市黒人などと同じ頃、宮廷に仕えた下級官吏であったようです。行幸の際の応詔歌、羇旅歌、宴席で物名を詠み込んだ即興歌などを残しています。万葉集に14首を残します(すべて短歌)。
◎さし鍋に火鉢(ひばち)と火箸(ひはし)、さらに桧橋(ひばし)。櫟津(いちひつ)と櫃(ひつ)、「コム」と鳴く狐と来(こ)む、浴(あ)むと遭(あ)ふ。の言葉遊びを楽しんでください。また、場合によっては、この宴会に「湯和可世子等」の用字から「世子」に相当する貴族の子弟で長男の人物がいたかもしれません。当然、同じ音ですが召使いの「勢子」と貴族の子弟である「世子」では雲泥の差があります。
sechin@nethome.ne.jp です。
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