Lētō(レートー)の起源は小アジアのカーリア地方で崇拝されていた大女神Rādhā(ラーダー〈ラダ〉)に由来します。この女神はCrete(クレータ)島東部の古都Leto(ラト)に伝わり、Apollōn(アポローン)、Artemis(アルテミス)とともに信仰されました。レートー崇拝はその後も子供たちに付随する形で行われました。ギリシア神話最高の美女Helenē(ヘレネー)の母Lēdā(レーダー)はレートーの一変形とする説もあります。
Lētō(レートー)はティーターン神族のKoios(コイオス)とPhoibē(ポイベー)の娘で、Asteriā(アステリアー)と姉妹です。Pholus(ポーロス)とポイベーの娘という説もあります。ゼウスの子Apollōn(アポローン)、Artemis(アルテミス)を生んだのであります。
アポローンとアルテミスの出産の経緯については諸説あります。Hērā(ヘーラー)はレートーがゼウスの子を身ごもると、すべての土地にレートーに出産する場所を与えてはならないと命じ、Īris(イーリス)とĀrēs(アレース)に土地が命令に背かないように監視させたといいます。あるいは太陽が一度でも照らしたことがある場所で出産してはならないと命じ、さらに蛇のPȳthōn(ピュートーン)がレートーを追い回したのです。というのは予言によって、レートーの産む子が自分を殺害すると知っていたからであるといわれています。このためレートーは出産できる土地を求めて放浪しなければならなかったのです。またヘーラーの命令によってTityos(ティテュオス)という巨人も彼女を襲っいましたが、ゼウスによって殺されましたた。より特殊な説では、レートーは牝狼の姿となってHyperboreios(ヒュペルボレオイ、Boreas〈ボレアス、北風〉の彼方に住む人々)の国からやって来て出産したというものです。
ある時レートーはLycia(リュキア)に立ち寄り、池の水を飲もうとすると、そこの村人たちがそれを止めようとしました。レートーは反論しますが、村人たちは池に足を入れて泥を立たせ、水を飲ませまいとしました。怒ったレートーは「この者たちがこの池から永遠に離れず、生涯をここで過ごすように」と願いました。すると村人たちは蛙になり、泥沼に変わった池に住むようになったのだといいます。
このような苦難に耐えて、まずOrtygia(オルテュギアー、鶉の里)島でアルテミスを産み、さらにアルテミスに手を引かれてDelos(デーロス)島に渡りアポローンを産みました。アルテミスはそのとき助産婦としてレートーを助けたといいます。より新しい神話ではアポローンとアルテミスはデーロス島で生まれたとされ、その場合、オルテュギアー島とデーロス島は同一視されます。Hyginus(ヒュギーヌス、BC64?~AD17、ラテン語の著作家)はレートーをデーロス島に連れて行ったのはゼウスの命を受けた北風ボレアースで、Poseidōn(ポセイドーン)が彼女を保護し、Poseidōn(ポセイドーン)はヘーラーの言葉に違反しないように、デーロス島を波で覆ったといいます。
こうしてレートーはデーロス島のキュントス山に背もたれして、シュロの木(オリーブとも)のそばでアポローンを出産しました。ヘーラーがEileithyia(エイレイテュイア、結婚の神)を引き止めていたために、9日9晩にも及ぶ難産だったといいます。それを見かねたĪris(イーリス、虹の女神)がエイレイテュイアを連れて来た事により、出産は成功しました。この出産にはDiōnēディオーネー、Rheāレアー、Themisテミス、Amphitrītē(アムピトリーテー)などの女神が立会い、アポローンが生まれると彼女らは歓声を上げ、大地は微笑み、天空には白鳥がめぐったといいます。アルテミスは出産時、母に苦痛を与えなかったので、産褥に苦しむ女性の守護神となったといいます。アポローンは生まれるとピュートーンを殺したとも、Hyperboreios(ヒュペルボレオイ)の地に運ばれたともいわれています。デーロスはレートーの身悶えによって海底に根を張ったとも、海底から4本の柱が延びてきて支えられたと伝えられています。
Thēbai(テーバイ)王Ampīōn(アムピーオーン)の妻Niobē(ニオベー)が2人しか子供を産んでいないレートーに対し、自分の方が多くの子供を生んだと自慢をしたといいます。レートーはこれに怒り、アポローンとアルテミスに命じてニオベーの子供たちを射殺させたといいます。
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