先に述べたLētō(レートー)を皮切りにHera(ヘ-ラ-)は、夫が次々にこしらえる愛人とその子供に過敏に反応して迫害を加え始めます。以下、とりわけ強烈な武勇伝をいくつか挙げてみることにしましょう。
怪物にされたLamia(ラミアー)
Lamia(ラミアー)は、海の神Poseidōnポセイドーンの息子Bēlosベーロスとその母Libyē(リビュエー)との間の娘で、元々はリビアの女王でしたが、その美貌でZeus(ゼウス)に見初められたといいます。結果、ゼウスの妻Hera(ヘーラー)の怒りを買い、ゼウスとの間に産まれた子供を全て殺され、自身も怪物に変えられてしまいます。
ヘーラーの呪いはそれだけでは終わらず、子供を失った悲しみから常に逃れられないよう、眠りさえも奪われてしまいます。ゼウスは彼女が休めるよう、目を取り外して眠れるようにしてやりますが、子供がいる他の母親を羨むあまり、ラミアーは他人の子供を食べるようになってしまうのです(他にも、生まれてきた子供を喰う呪いをかけられ、その後上半身が女性で下半身が蛇の怪物になったという話や、ヘーラーに子供を殺されてしまい、哀しみのあまり怪物と化したという話もあります)。
彼女は多くの場合、女性の頭と胸に、蛇の下半身を持つという姿で描かれるが、時には、男性として描かれたり、両性をもつ者として描かれることもあります。人語は話せないが、代わりに美しい口笛を吹いて人を虜にするといわれます。本来はSkytha(スキタイ、紀元前8世紀~紀元前3世紀にかけて、ウクライナを中心に活動していた遊牧騎馬民族および遊牧国家)の戦いの女神だったといわれています。またはLibya(リビア)の愛と戦いの女神だったという説もあります。
Jhon Lempriere( ジョン・ランプリエール、1765~1824)は『ギリシア・ローマ事典』の中で、ラミアーは、声は魅力的だが子供たちを殺す小さなアフリカの怪物Lamiae(ラミアイ)の原型になり、そしてそれが現在Lemures(レムレース)と呼ばれているものである、と主張しました。
歴史上では、母親たちが子供への脅しに使うこともあり、子供が悪いことをすると「○○をするとラミアーが来るよ。」と言う風に使われたといいます。
ラミアーの名前は「貪欲」を意味するLamuros(ラミュロス)からきていると言う説がありますが、同じ語源からlemure(レムレース、ローマ神話における騒々しく有害な死者の霊または影)がきているという説もあります。いずれにしても確かではありません。
Poseidōn(ポセイドーン)の娘でSibuvllh(シビュレー)の母であるLamia(ラミアー)ともしばしば混同されるようになったのでしょう。また、ラテン語に入ってからは、女の吸血鬼を意味するようにもなったといいます。
sechin@nethome.ne.jp です。
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