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かつてTegea(テゲアー、アルカディア南東部に位置した古代ギリシアの都市)の王Aleos(アレオス)はDelphoi(デルポイ)で神託を授かったとき、自分の息子たちが娘Augē(アウゲー)の生んだ子供に殺されると告げられました。このためアレオスはアウゲーをAthēnā(アテーナー)・Alea(アレアー)神殿の女神官とし、アウゲーにもし男と通じたら殺すと言いきかせます。
 ところが英雄Hēraklēs(ヘーラクレース)がテゲアーにやってきたとき、アレオスはアテーナーの神殿でヘーラクレースをもてなしにすが、酒に酔ったヘーラクレースはアウゲーに欲情して犯してしまい、アウゲーは子を身ごもってしまいます。後にアウゲーは密かに子を出産し、神殿内に隠しました。しかしこの行為がアテーナーの怒りに触れ、テゲアーには疫病が流行します。あるいは飢饉に見舞われたともいわれます。

 アレオスが神託に原因を尋ねると、神殿内に原因があると告げられます。そこでアテーナーの神殿を調べるとアウゲーの生んだ赤子が見つかります。アレオスは赤子をarthenion(パルテニオン)山に捨て、アウゲーを罰するためにNauplios(ナウプリオス)に引き渡しました。しかし彼はKatreus(カトレウス、クレータ島の王)の娘たちも奴隷として売りさばくように言われており、まるで奴隷仲介人の仕事でもしているようです。とにもかくにもナウプリオスはアウゲーをMysia(ミュシア、アナトリア半島北西部、ギリシア神話ではTeuthrania(テウトラニア)とも呼ばれます)の王Teuthras(テウトラス)に与え、テウトラースは彼女を妻としてしまいます。一方、赤子は神の意思によって牝鹿に養われ、牧人に発見されて育てられた。そのさい、赤子は牝鹿elaphos(エラポス)にちなんでテーレポスと名づけられたといいます。
 その他にもテーレポスの誕生には多くの別伝があります。Hyginus(ヒュギーヌス、BD64~AD17年、ラテン語の著作家)によると、アウゲーは密かにパルテニオン山で子を生んで捨てます。アウゲーはさらに父を恐れてミューシアのテウトラース王のもとに逃げ、テウトラースは彼女を自分の娘とします。同じころ、アルカディアの女戦士Atalantē,(アタランテー)も自分の子をパルテニオン山に捨てたのです。そこで牧人たちは子供たちを見つけ、アウゲーの子を牝鹿にちなんでテーレポスと名づけ、アタランテーの子は彼女が実際は処女ではなかったことにちなんでParthenopaios(パルテノパイオス)と名づけて育てました。
 Alkidamas(アルキダマース、前4世紀のギリシアの修辞家,ソフィスト)によると、アレオスはアウゲーが妊娠しているのを見つけ、海で溺死させるべくナウプリオスに引き渡します。しかしパルテニオン山を通ったとき、アウゲーが赤子を出産し、それを見たナウプリオスは2人をミューシアのテウトラース王のところに連れて行ったといいます。
 さらにSikelia(シケリア、現在のSicilia〈シチリア〉)のDiodorus(ディオドロス、紀元前1世紀にシケリア(シチリア)島で生まれた古代ギリシアの歴史家)によれば、アウゲーはナウプリオスともにパルテニオン山を通ったときに密かに子を生んで捨てたといい、アウゲーはテウトラース王のところに連れて行かれたといいます。一方の赤子は牝鹿に養われているのを牧人に発見され、牧人はコリュトス王に赤子を渡し、王によってテーレポスと名づけられて育てられたといいます。


成人した彼は母親を求めてMysia(ミュシア、古代の小アジア〈トルコのアナトリア半島〉北西部の地方)へ赴き、どういう経緯か母親であるアウゲと結婚しようとする仲にまでなったのです。しかし彼の身の上話や身につけていた装飾品などで、親子だと判明します。2人は改めて再会を喜びあいます。母親ほども年の離れた女性と結婚するのは、この時代では普通の出来事だったのでしょうか。
 とにかくテーレポスはテウトラース王の後を継いで、Teuthrania(テウトラニア)を治めることになるのです。
 ヒュギーヌスによればテーレポスがミューシアにやってきたとき、テウトラースはĪdās〈イーダース〉の軍に攻撃されていました。そこでテウトラースはテーレポスに、もしイーダースを追い払ってくれたら、王国と、養女としていたアウゲーをテーレポスの母とは知らずに妻として与えると約束したのです。そこでテーレポスはパルテノパイオスとともにイーダースと戦って勝利し、ミューシアの王となり、テーレポスとアウゲーはお互いが母子と知らずに結婚した。しかしアウゲーはこの結婚を受け入れておらず、アウゲーは新婚の部屋に入ったとき、剣を隠し持ってテーレポスを殺そうとした。ところが部屋の中に神の遣わした大蛇が現れたため、アウゲーは驚いて剣を大蛇に向かって投げた。アウゲーの企てを知ったテーレポスは彼女を殺そうとしますが、アウゲーがヘーラクレースに祈ったため、テーレポスは彼女が自分の母であることを悟ったのです。
 テーレポスはまた祖父アレオスの授かった神託どおりに自分の伯父たちを殺したとも言われます。


 

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