この巨人はKronos〈クロノス、大地および農耕の神で、Zeus〈ゼウス〉の父親〉によりOuranos〈ウーラノス、全宇宙を最初に統べた原初の神々の王とされます〉の性器が切り取られた際に滴り落ちた血をGaia(ガイアが受胎)し、産み落とされたものとされています。巨人はGigās(ギガース、複数形はGigantes〈ギガンテス〉)と呼ばれ、巨大で濃い毛を生やし、腰から下は竜の形をしています。
※Giorgio Vasari(ジョルジョ・ヴァザーリ):イタリアのMannerism(マニエリスム、ルネサンス後期の美術で、イタリアを中心にして見られる傾向を指す)期の画家、建築家。ラファエロらの作品に学んだといわれます。
予言により、この巨人には人間の力を借りなければ勝利は得られないと告げられており、オリュンポスの神々は負けはしないものの、巨人に打ち勝つ事ができなかったのです。このため、ゼウスは人間の女Alkmēn(アルクメーネー)と交わり、ヘーラクレースをもうけ、味方としたいわれています。ガイアはギガースの弱点を克服させるために、人間に対しても不死身になる薬草を大地に生やしましたが、これを察知したゼウスによっていち早く刈り取られ、遂にギガースがそれを得ることはありませんでした。
ギガースたちは、山脈や島々など、ありとあらゆる地形を引き裂きながら進軍し、巨岩や山そのものを激しく投げ飛ばして神々を攻撃しました。これに対し、オリュンポスの神々も迎撃を開始し、Tītānomakhiā(ティタノマキア、ゼウス率いる Ólimpos〈オリュンポス〉の神々と、クロノス率いる巨神族Tītān〈ティーターン〉との戦い)以来の宇宙の存亡を賭けた戦争が再び始まったのです。
ゼウスは巨人たちを雷霆で次々と撃ち倒し、戦闘不能になった巨人たちは尽くヘーラクレースの強弓の餌食となりました。他の神々も奮闘し、Dionȳsos(ディオニューソス)はthyrsos(テュルソス)の杖(きづたやぶどうを巻きつけ,先端に松かさを取付けた聖杖で、神自身の持物でもあり、信女らもたずさえたといいます。霊妙な威力を発揮し,無敵の武器ともなり,乳や蜜,清水などを自在に湧出させると信じられていました)でエウリュトスを打ち倒し、ヘーラクレースが毒矢でとどめを刺しました。Hekátē(ヘカテー、三相一体の姿をした女神で、松明を持って地獄の猛犬を連れているいわれる)は灼熱の炬火をKlytios(クリュティオス)に投げつけ殴り殺しました。またアテーナーとポセイドーンは火山や島そのものを巨人に叩きつけて押し潰し、最後にヘーラクレースが強大な毒矢や怪力を以て巨人に止めを刺しました。ポセイドーンはコス島の岩山をもぎ取り、ギガースの一人であるPolybōtēs(ポリュボーテース)に打ち付け、その岩山は後にNisyros(ニーシューロス)という火山島になったといいます。岩山に封印されたポリュボーテースが重みに耐えかねて火炎を吹くのだといわれています。
ヘーラクレースは矢でAlkyoneus(アルキュオネウス)を射てみたものの、巨人が大地へ倒れるとまた息を吹き返しますので、女神Athēnā(アテーナー)の助言を容れて、巨人の生まれ故郷Pallene(パレーネー)から引きずり出すことにしました。パレーネーの地に触れている限り無敵の力を得る最強の巨人でしたが、ヘーラクレースの圧倒的な怪力によってその地から引き剥がされ、その後彼の剛腕によって殺されました。
Porphyriōn(ポルピュリオーン)はオリュンポスの神々を苦しめたので、ゼウスは奸計を用います。すなわちポルピュリオーンがHērā(ヘーラー)、ヘーラクレースと戦ったときに、ゼウスはポルピュリオーンの心をヘーラーへの欲情で満たしたのです。このためポルピュリオーンはヘーラーに夢中になり、襲いかかってヘーラーの衣服を裂きました。ヘーラーは叫んで助けを呼びますが、このすきにゼウスはポルピュリオーンに雷を投げつけ、ヘーラクレースは矢を射て討ち果たしました。なお、ポルピュリオーンはアプロディーテーに討たれたとも、アポローンに討たれたともいわれています。
アルキュオネウスとポルピュリオーンが討たれた後、Ephialtes(エピアルテース)は左目をアポローンに、右目をヘーラクレースに射抜かれて倒されました。
ギガースたちは神々とヘーラクレースによって皆殺しにされ、この壮大な戦争はオリュンポスの圧勝に終わりました。
この戦いの後、ガイアは最大最強の怪物Tȳphōn(テューポーン)を産み落とし、ゼウスに最後の戦いを挑んだのです。
神統記によれば、ゼウスはテューポーンと全宇宙を揺るがす激闘の末に、雷霆の一撃によって世界を尽く溶解させて、そのままテューポーンをタルタロスへと放り込んだのだといいます。
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