瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
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今日は変身譚ではありませんが、昨日のブログの最後に触れた、Sophoklēs(ソポクレス)作の『オイディプス王』を取り上げます。


 


Oidipūs(オイディプース)がThēbai(テーバイ、古代ギリシアの都市国家)の王になって以来、不作と疫病が続きました。Creon(クレオーン、テーバイの摂政)がDelphoi(デルポイ、古代ギリシアのポーキス地方にあった都市国家。パルナッソス山のふもとにあるこの地は、古代ギリシア世界においては世界のへそと信じられており、ポイボス・アポローンを祀る神殿で下される「デルポイの神託」で知られていました)に神託を求めました所、不作と疫病はLāïos(ラーイオス、オイディブースの実父)殺害の穢れの為なので殺害者を捕らえ、テーバイから追放せよという神託を得ました。


そこでオイディプースは「ラーイオス殺害者を捕まえよ、殺害者を庇う者があればその者も処罰する」とテーバイ人達に布告を出します。さらに、オイディプースはクレオーンの薦めにより、テーバイに住む高名な予言者で盲(めしい)のTeiresiās(テイレシアース)にラーイオスの殺害者を尋ねる事にしました。


自らの子に手を引かれオイディプースの前に現われたテイレシアースは、卜占により真実を知るのですが、その真実をオイディプースに伝えるのは忍びなく思い、予言を隠そうとします。しかし、オイディプースがテイレシアースを詰(なじ)ったため、テイレシアースは怒りに任せて、オイディプースに、不作と疫病の原因はテーバイ王その人にあると言います。これを聞いたオイディプースは激怒し、クレオーンがテイレシアースと共謀してテイレシアースに偽の予言をさせているのだと誤解します。この為オイディプースはクレオーンを呼び出して詰問するのですが、身に覚えのないクレオーンは反駁するのみでした。そこにIokastē(イオカステー、オイディプースの母にして妻)が現われ、オイディプースとクレオーンとの罵り合いを仲裁するのです。


イオカステーは、テイレシアースの予言を気に病むオイディプースを安心させるため、オイディプースに、予言など当てにならないのだと言い、その例としてラーイオスとイオカステーの間に産まれた子供の話をします。ラーイオスとイオカステーはもし子供を作ればその子供がラーイオスを殺すとの神託をその昔受けますが、ラーイオスはPhocis(ポーキス、古代ギリシアの一地方)の三叉路で何者かに殺されてしまい、この予言は当たらなかったとオイディプースに伝えるのでした。


しかしながらこの話を聞いたオイディプースはかえって不安に陥った。何となればオイディプースは、過去にポーキスの三叉路で人を殺した事があるからです。不安に陥ったオイディプースをイオカステーがたしなめ、ラーイオスが殺害された際殺害を報せた生き残りの従者を呼んで真実を確かめる事を忠言します。忠言に従ったオイディプースはその従者を求めますが、従者はオイディプースが王位についた頃にテーバイから遠く離れた田舎に移り住んでいました。予言が実現された事を知った従者は、恐ろしさのあまりテーバイの見えぬところへと何も言わずに逃げていたのです。


オイディプースがラーイオス殺害者と従者とを追っていると、彼のもとにKorinthos(コリントス、ペロポネソス地方にある商業都市。紀元前9世紀、ドーリア人によって建設され、Aphrodītē〈アプロディーテー〉を守護神としその祭祀で知られます)からの使者が訪れます。使者はコリントス王Polybos(ポリュボス、オイディプースの養父で、名付け親ともいわれる)が死んだ為コリントス王の座はオイディプースのものになったと伝え、オイディプスにコリントスへの帰国を促すのでした。


しかし、自分の両親を殺すであろうという神託を受けていたオイディプースは帰国を断ります。何となればオイディプースは、ポリュボスとMeropē(メロペー、ポリュボスの妻)を実の父母と信じていたからです。この為使者は、オイディプースに、ポリュボスとメロペーは実の父母ではないのだと伝えます。これを聞いたイオカステーは真実を知り、自殺するためその場を離れるのでした。しかし未だ真実を悟らないオイディプースはイオカステーが自殺しようとしている事に気づかず、女ゆえの気の弱さから話を聞く勇気が失せて部屋に戻ったのだと思い違いをしたのです。


まもなく、かつてラーイオスが殺害されたことを報せた生き残りの従者がオイディプースのもとに連れて来られました。この従者はオイディプースをKitheronas(キタイローン)の山中に捨てる事を命じられた従者と同一人物でした。


従者はオイディプースに全てを伝えるのでした。真実を知ったオイディプースは、イオカステーを探すべくイオカステーの部屋を訪れました。するとイオカステーはすでに縊(くび)れていました。オイディプースは縄をほどき下ろしますが、時すでに遅く、彼女は死んでいました。


罪悪感に苛(さいな)まれたオイディプースは、狂乱のうちに我と我が目をイオカステーのつけていたブローチで刺し、自ら盲(めしい)になります。彼自身の言によれば、もし目が見えていたなら冥府を訪れたときどのような顔をして父と母を見ればよいのか判らない、そう感じたというのでした。そして自身をテーバイから追放するようクレオーンに頼み、自ら乞食になるのでした。


 


男子が父親を殺し、母親と性的関係を持つというオイディプス王の悲劇は、Sigmund Freud(ジークムント・フロイト)が提唱した「Oedipus complex(エディプス・コンプレックス)」の語源にもなりました。

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目高 拙痴无
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