Aráchnē(アラクネー)は、Lydia(リューディア、現在のトルコ)のリュディア地方を中心に栄えた国家)のColophon(コロポーン、都市)で染織業を営んでいたIdomōn(イドモーン)の娘でした。
Ovidius(オウィディウス)の『変身物語』によればアラクネーは優れた織り手で、その技術は機織りを司るAthēnā(アテーナー)をも凌ぐと豪語するほどでした。これを耳にしたアテーナーは怒りを覚えますが、彼女を諭す為に老婆の姿を借りて神々の怒りを買うことのないように忠告を与えました。しかし、アラクネーはそれを聞き入れるどころか、神々との勝負を望んだ為、女神は正体を表してアラクネーと織物勝負をすることになりました。
アテーナーは自身がPoseidōn(ポセイドーン)との勝負に勝ちアテーナイの守護神に選ばれた物語をtapestry(タペストリー、壁掛けなどに使われる室内装飾用の織物の一種)に織り込みました。アラクネーはアテーナーの父Zeus(ゼウス)のLēdā(レーダー)、Eurōpē(エウローペー)、Danaē(ダナエー)らとの浮気を主題にその不実さを嘲(あざけ)ったタペストリーを織り上げました。
アラクネーの腕は非の打ち所のない優れたもので、アテーナーでさえアラクネーの実力を認める程でありました。しかし、アテーナーはそのタペストリーの出来栄えに激怒し、最終的にアラクネーの織機と不敬なタペストリーを破壊してアラクネーの頭を打ち据えるのでした。これによりアラクネーは己の愚行を認識し、恥ずかしさに押しつぶされ逃げだして自縊死を遂げます。
アテーナーは彼女を哀れんだのか、それとも怒りが収まらず死すら許さずに呪おうとしたのか、トリカブトの汁を撒いて彼女を蜘蛛に転生させました。
なお、Arachnē(アラクネー)という彼女の名は、ギリシア神話の多くの登場人物と同様、普通名詞を人格化したもので、古代ギリシア語「arachnē(s)」は「蜘蛛」「蜘蛛の巣」を意味する単語でした。 現在、分類学で「クモ綱」を Arachnida(アラクニダ) と呼んだり、クモ恐怖症を英語で arachnophobia(アラクノフォビア)などと言うのは、この語を語根に用いたものです。
Dante(ダンテ)の『神曲』「煉獄篇」では、煉獄山の第一層にて「傲慢」の大罪を戒める例の一つとして、すでに下半身が蜘蛛に変じたアラクネーを写した姿が山肌に彫刻されています(原文の「Aragne(アラーニェ)」の名で邦訳されていることもあります)。
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