正月の室内ゲームと言えば百人一首があります。
天智天皇から順徳天皇までの約550年の間に、貴族や歌人たちの間で詠まれた和歌から、各人の優れた和歌や代表的な和歌一首を取り上げ、年代を追って、全部で百人の和歌を取り上げたものです。特に「小倉百人一首」と呼ばれるのは、藤原定家が京都嵯峨の小倉山の別荘で屏風(襖)に書き写したことから、このように呼ばれていますが、小倉百人一首はすべて「古今集」や「新古今集」などの「勅撰和歌集」から集められています。
「勅撰和歌集」とは、時の天皇の命で編纂された和歌集で、全部で21の和歌集がありますが、「小倉百人一首」は、次の10の「勅撰和歌集」から、和歌が選ばれています。
古今集 … 24首 詩花集 … 5首
後撰集 … 7首 千載集 … 14首
拾遺集 … 11首 新古今集 … 14首
後拾遺集 … 14首 新勅撰集 … 4首
金葉集 … 5首 続後勅撰集 … 2首
※2番の歌(持統天皇)と4番の歌(山部赤人)などは、藤原定家が「新古今集」から選んでいますが、原歌は「万葉集」にあります。
百首の中には恋の和歌が四十三首もあり、季節の歌では秋の和歌が一番多く選ばれています。
また、女流歌人は二十一人、僧侶も十五人が選出されています。
百人一首の歴史は「かるた」から始まると言われています。「かるた」とはいつ頃日本で生まれたのでしょうか。優雅な遊びのイメージから、日本古来のものであると考えられがちですが、16世紀半ば頃にポルトガル人によって日本にもたらされました。それは現在のトランプに近いものであったと考えられまが、ポルトガル語でカードを意味する「CARTA」がそのまま日本語に充てられた。今日でも時折「歌留多」という表記が用いられていますが、古くは「嘉留太」あるいは「骨牌」とも記述されました。
平安時代に遊ばれていた「貝合わせ」というものがあります。「貝合わせ」とは、二枚貝をふたつに分けて、その片方を探すといった単純な遊びですが、やがて宮廷の人々のあいだでは、貝に歌や絵を書いて遊ぶようになります。これは「歌合せ」といって、いろいろな貝にそえて和歌を詠み、その和歌を競い合うというものでした。 やがて、それと似た絵合わせをする「貝おおい」という遊びが進歩して、「歌貝」というものに発展します。「歌貝」では、貝の形をした札が上の句、下の句ともに100枚あって、現在の「かるた取り」と同じように、下の句の札を並べて、上の句を詠んで下の句を取るというものです。
この遊び方は、百人一首の歴史からすると、かなり現在の遊び方に近いものではないでしょうか。
歴史が下って戦国時代の頃になると、百人一首が「かるた」として遊び始められますが、はじめは宮中とか諸大名の大奥などで行われ、それが年間行事となったようです。この時代の「かるた」は、まだまだ庶民の間では馴染みの薄いものでしたが、江戸時代に入り、木版画の技術の発展や、南蛮渡来の「かるた」を取り入れることによって、庶民の中に徐々に広まっていきます。
やがて、「民用小倉百人一首」などが出版され、元禄時代の頃から一般庶民の間にも広がり、「和歌かるた」と言えば「小倉百人一首」のことを指すようになり、庶民にも馴染みあるものになりました。このように百人一首の歴史は古いのですが、「小倉百人一首」が正月の楽しみとして各家庭でも行われるようになったのは、ずっと後の安政の頃からだと言われています。
しかし、現在では、正月以外でも簡単に遊べる室内ゲームとして親しまれてるほか、日本の古典や歴史の風情を学ぶうえでも馴染みやすく、身近な資料となっています。
寒いのはつらいけれど、その先に春が待っていると、耐えるしかありませんね。
どうぞ、ご自愛ください。
さて、現代の御家庭でも百人一首カルタをするのでしょうか。
昨年、「ちはやふる」という、競技カルタに青春をかける高校生を描いた映画が大ヒット。
競技人口が増えたというニュースにもなっていました。
でも、私にとっては、正月の夜に、家族、親戚が揃って興じた百人一首カルタが一番の思い出です。
小学校低学年の頃ですから、50年前の話ですね(笑)。
両親も伯父伯母も、皆健在で、私も「子ども」でいられた幸せな時代でした、今思えば。
もう何年もしてませんねえ。
(夫婦二人だと「坊主めくり」もバカバカしくてする気にもなりません。)
でも、今流行の「脳トレ」で
百人一首の書写をしています。
和歌の訳や解説を読むと、今更ながらこんな意味だったのかと勉強になります。
そして、古人も現代人も、心模様は
あまり変わらないことに感動を覚えます。
ぜひ、現代の御家庭でも、お子さんの小さいときから
百人一首にふれてほしいものと、願っております。
老婆心ながら。
sechin@nethome.ne.jp です。
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