瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
ギリシア神話:生き剥ぎにされたマルシュアース
今まで述べてきたApollōn(アポーローン)神にまつわる伝説はこれらの他にも数々ある。彼の優しい面、優雅な面だけでなく、烈しさ恐ろしさ厳しさを物語るもの、たとえば既に記したCassandr(カッサンドラー)の物語も多分に彼の残酷なまでの愛情を語っている。主神Zeus(ゼウス)とLētō(レートー)との息子で、アルテミスとは双子である。後に光明神の性格を持つことからヘーリオスと混同され太陽神とされたが、本来は予言と牧畜、音楽(竪琴)、弓矢の神である。また、オリュンポス十二神には(諸説があるが)ほぼ確実に名を連ねる。既に幼少の頃、母親Lētōに邪(よこしま)な恋を仕掛けあるいは彼女を迫害した巨人ティテュオスを殺した。それ以来この巨人は冥府の底タルタロスに固く縛られ二羽の鷲に両側から肝臓を啄ばまれている。その姿は冥界めぐりをしたOdysseus(オデュッセウス)さえ戦慄させるに足るものだったという。神々と人間との争い、ことに技競(くら)べはしばしば説話化された人間像であり、人間が常に高みを冀い、しばしばその能力を夢想したギリシア人の間においては、幾度となくさまざまのヴァリエーションで物語られるが、もとより人気のあるアポーロンにこれが缼ける謂れはなかった。
Marsyas(マルシュアース)はシーレーノスの一人であった。小さな角を頭のこめかみに付け毛むくじゃらな山羊の足をした彼が、よい天気の日にうかうかと野を散歩していた折、ふと小径に落ちている1管の笛を見つけた。それはアテーナー女神が棄てていった物であった。技芸の司(つかさ)である女神は、手先の巧みに任せてさまざまな器具を拵えられた中に、喇叭や竪笛も数えられた。しかし、笛を吹くのに頬を膨らませ、見っともよからぬ面持ちになるのを厭われた女神はこれをうち棄てられたのである。これを手に入れたMarsyaは、生まれつきの剽軽(ひょうきん)さとすばしっこく働く小器用さから、いろいろと試みるうちに自ずからこの術を会得し、野山を巡り歩くたびに、曲(ふし)無面白く、歌い奏でてはニンフたちを興がらせていた。アテーナー女神はこれを嫌がられて、こっぴどく槍の柄で打擲(ちょうちゃく)されたが、彼は一向に懲りずに、いろいろと工夫を凝らすのであった。そして遂には大変な天狗になり、技自慢の果てはアポローン神にもおさおさ敗(ひ)けは執るまいなどと言って歩いた。
ついにアポローン神とMarsyasとが技競べをする日がやってきた。立会いはオリュンポスの神々であった。そして競技の条件は勝者が敗者を思うままに処分し得ることというのであった。競技の模様についてはどんな歌が歌われか二人の妙技がそれぞれどんなであったかなど誰も伝えるものはない。しかし、言うまでもなくアポローンはその入神のわざをもって鄙びたMarsyasを容易く打ち破った。
Marsyasが笛に敗れて受けた審判は、生きながらにして皮を剥がれることであった。「何故、あなたは私自身から私を引き剥がすのか。もう後悔しました。許してください。笛でこんな目に遭わすのはあんまりです」このように哀れなMarsyasは叫んだと言われている。全身は一つの傷となり一面の地に塗れた。その態(さま)をみて仲間のシーレーノスたち、また牧人たちは群れいるかぎり、ひとしく涙を流し、大地はそのためにしとどに濡れた。そのあまりは地下を潜って清冽な泉と化し、このようにしてブリュギア地方に比べるものなく澄んだ流れの、彼の名を負うマルシュアース川が出来たのだという。
今まで述べてきたApollōn(アポーローン)神にまつわる伝説はこれらの他にも数々ある。彼の優しい面、優雅な面だけでなく、烈しさ恐ろしさ厳しさを物語るもの、たとえば既に記したCassandr(カッサンドラー)の物語も多分に彼の残酷なまでの愛情を語っている。主神Zeus(ゼウス)とLētō(レートー)との息子で、アルテミスとは双子である。後に光明神の性格を持つことからヘーリオスと混同され太陽神とされたが、本来は予言と牧畜、音楽(竪琴)、弓矢の神である。また、オリュンポス十二神には(諸説があるが)ほぼ確実に名を連ねる。既に幼少の頃、母親Lētōに邪(よこしま)な恋を仕掛けあるいは彼女を迫害した巨人ティテュオスを殺した。それ以来この巨人は冥府の底タルタロスに固く縛られ二羽の鷲に両側から肝臓を啄ばまれている。その姿は冥界めぐりをしたOdysseus(オデュッセウス)さえ戦慄させるに足るものだったという。神々と人間との争い、ことに技競(くら)べはしばしば説話化された人間像であり、人間が常に高みを冀い、しばしばその能力を夢想したギリシア人の間においては、幾度となくさまざまのヴァリエーションで物語られるが、もとより人気のあるアポーロンにこれが缼ける謂れはなかった。
Marsyas(マルシュアース)はシーレーノスの一人であった。小さな角を頭のこめかみに付け毛むくじゃらな山羊の足をした彼が、よい天気の日にうかうかと野を散歩していた折、ふと小径に落ちている1管の笛を見つけた。それはアテーナー女神が棄てていった物であった。技芸の司(つかさ)である女神は、手先の巧みに任せてさまざまな器具を拵えられた中に、喇叭や竪笛も数えられた。しかし、笛を吹くのに頬を膨らませ、見っともよからぬ面持ちになるのを厭われた女神はこれをうち棄てられたのである。これを手に入れたMarsyaは、生まれつきの剽軽(ひょうきん)さとすばしっこく働く小器用さから、いろいろと試みるうちに自ずからこの術を会得し、野山を巡り歩くたびに、曲(ふし)無面白く、歌い奏でてはニンフたちを興がらせていた。アテーナー女神はこれを嫌がられて、こっぴどく槍の柄で打擲(ちょうちゃく)されたが、彼は一向に懲りずに、いろいろと工夫を凝らすのであった。そして遂には大変な天狗になり、技自慢の果てはアポローン神にもおさおさ敗(ひ)けは執るまいなどと言って歩いた。
ついにアポローン神とMarsyasとが技競べをする日がやってきた。立会いはオリュンポスの神々であった。そして競技の条件は勝者が敗者を思うままに処分し得ることというのであった。競技の模様についてはどんな歌が歌われか二人の妙技がそれぞれどんなであったかなど誰も伝えるものはない。しかし、言うまでもなくアポローンはその入神のわざをもって鄙びたMarsyasを容易く打ち破った。
Marsyasが笛に敗れて受けた審判は、生きながらにして皮を剥がれることであった。「何故、あなたは私自身から私を引き剥がすのか。もう後悔しました。許してください。笛でこんな目に遭わすのはあんまりです」このように哀れなMarsyasは叫んだと言われている。全身は一つの傷となり一面の地に塗れた。その態(さま)をみて仲間のシーレーノスたち、また牧人たちは群れいるかぎり、ひとしく涙を流し、大地はそのためにしとどに濡れた。そのあまりは地下を潜って清冽な泉と化し、このようにしてブリュギア地方に比べるものなく澄んだ流れの、彼の名を負うマルシュアース川が出来たのだという。
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目高 拙痴无
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92
誕生日:
1932/02/04
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sechin@nethome.ne.jp です。
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