瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
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 まだ明けやらぬ水神大橋の上に立ち止まり、大川の流れに眼をやる。天地の間にあって、世の中でどんなことがあろうが、こんな俗世間のことは余計なこととばかりにいつも同じように滔々と流れてゆく。この娑婆世界の濁りを載せて何時まで経っても澄むことなく悠々と流れているように見える。何も望んだわけでもないが戦乱の世に生を受け、目の当たりに戦禍も見たが、ようやく平和がおとずれても、世の中の騒がしさ一向に治まらぬ。それでも、少しは心を落ち着かせる術(すべ)も得て、まあこの人生も棄てたものじゃないと思ったときは既に老いが我が身を覆い、目の前には死が迫っている。来月には齢(よわい)78歳、いくら寿命が伸びたといっても、とうの昔に人生の峠は越えている。あとは下り坂だけ、どこでお陀仏しても不思議はない。まあ、天と地の間にあって、人生なんて余計なものでしかありえまい。
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01374ad8.JPG 行く手前方に建築中のバブルの塔が、天をも突き破らんか威容を見せてはいるが、これとても百年も経たないうち継接(つぎは)ぎだらけになるのは眼に見えている。精々神の祟り(天災)で倒壊などないよう願うだけ。
 冬来たりなば春遠からじ 白木蓮(はくもくれん)の花芽も膨(ふく)らんだ。気の早い梅はもう花を付けている。まあ、人生下り坂でも楽しむ術は色々あろう。人生開き直れば、金や権力、立身出世などお笑い種に見えてくる。

47c9f140.JPG 女神Artemis(アルテミス)はギリシア神話に登場する狩猟・純潔の女神である。のちに月の女神ともなった。アルテミスはアポローンの姉妹としてゼウスとレートの間の子とされている。この二神は双子ともいわれ、あるいはアルテミスが先にオルテギュア(「うずらの里」)で生まれ、ついでデーロスでアポローンが生まれたということになっている。この「うずらの里」というのも瞭(はっ)きりせずイオーニアの大市あるいはアイトーリア州の古都カリュードンとも、更にはシチリア島の大都シュラクーサイにあるオルテュギアー島だとも、又デロース島に他ならないともいわれ、アレクサンドリア期以降は専らこの最後のデロースと説が通用してきた。
ギリシア神話:ニンフ・Kallisto(カリストー)は通例はアルカディア族の祖リュカーオーンの娘、あるいは孫となっている。彼女は世の常の少女のように糸を紡いだり織ったりするのを好まず、身なりを整え粧いを凝らすことにも意を用いず、流れる髪を白い紐で束ねたまま、槍や弓を手にして、もっぱら女神アルテミスの扈従(こじゅう)に連なりアルカディアの山野を馳せて狩猟にのみ日を送っていたという。女神からも厚い寵愛を受けていたが、ある日のこと天上から遥かに大神ゼウスがその姿を認め、活き活きとして愛くるしい彼女に対して例のごとくに劇(はげ)しい欲情を抱き初めた。夏のある真昼のこと疲れて一人伴侶から離れ、深い森の樹陰で彼女が箙を枕に柔らかい草の上に仮睡していたとき、ゼウスは目ざとくそれを見つけ、こっそりとオリュンポスの峯を降って来らしゃった。アルテミス女神の姿に変じてその傍に立ち、今日の狩倉の様子を訊ねた。無邪気な少女は一点の疑念も挟まず、嬉々として女神に答え、優しい愛情とはにかみとを示すのにゼウスは遂に耐え切れず、いきなり胸に抱き取って接吻した。それはいつもの女神らしくもない荒々しく劇しいものであったという。御神は遂に真の姿を現され、驚きと共に畏れて拒む乙女の力もついにゼウス神には抗い得なかった。それから暫く彼女は秘密を知る森を憎んで槍も箙も壁に掛けたまま棄て置かれた。しかし、やがてまた狩倉の魅惑に抗いきれず、彼女はいつとはなくにアルテミスの扈従の群れに加わるようになった。初めはゼウスの変身かと恐れられた女神からも、付き添う他のニンフたちにも迎え取られ、疚(やま)しさからの恥じらいも気付かれずに済んだ。
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4c35522d.JPG だが、ついに彼女の秘密が露(あら)われるときが来た。いつの間にか九つの月が経ったある日、アルテミスは森あいの池で暑さを沈めに自らも沐浴(ゆあみ)し、伴のニンフたちにも衣を脱いで沐浴させた。そして羞(はじ)らいに頬を染める少女にも強いて仲間入りさせられるのであった。その姿を見るとアルテミスは眉を険しく顰めて、決然として語調で叫ばれるのであった。「向こうへ、遠くへ行っておしまい。この聖(きよ)らかなる泉を汚すのは私が赦しません」
 こうして憐れな乙女は尊いまた懐かしい狩の群れから追い斥けられたのであった。彼女の不幸はこれに止まらなかった。ゼウスの妃で嫉(やっか)み深いヘーラーは、夙(はや)くからこれに気付いており、十月(とつき)が経って、Kallistoがいよいよ母に似て愛くるしい男児を分娩したとき、ヘーラーは彼女の産褥に自ら赴き、烈しく彼女を罵り辱めた上、その姿を変じて牝熊に変えてしまった。かつての美しい唇は今は厚い醜い腭(あぎと)に変わり、ゼウスに冤(むじつ)を訴えるはずの優しい声も今は人間の声音ではなく、嗄(しわが)れた唸り声と聞こえるばかりであった。しかし、熊になっても彼女の優しい乙女心は変わらなかったので、今では呻くばかりの嘆きを天にまで訴えようと、前脚を揚げてはたち、あるいは寂しい森にも居つかれず、もとの住居の辺りへ宵闇に紛れて立ちもとほることも屡であった。そのうちに月日は流れて彼女の息子のArkas(アルカス)は早くも十五歳の少年となった。彼は自分の母親のもの成り行きも知らずに元気よく生い育ち、母に似てまだ狩猟を好んだ。このようにして彼が何時ものように野獣を狩りにマイナロスの山の懐深く入っていった折、ふと自分の母親であるかの黒い牝熊に出くわした。
 Kallistoは、はやくもそれが自分の愛しい子であることを覚った。悲しい思いが彼女の胸を満たした。そして森間に立ち止まりじっとその姿に見入った。そのうち今の姿も身の上も、少年の手にある槍もすっかり忘れ果ててただ愛おしさ哀しさの思いに息子の方へ進んでいった。少年は夙(と)くにじっと自分を凝視する二つの黒く光る眼に気付いていた。そして言い知れぬ不思議な恐れに身を捉えられていた。しかし、いよいよその獣が木の陰から躍り出てこちらへ向って来るのを見たとき、彼は夢から醒めたよう初めて驚き、手にした槍を構え牝熊の心臓めがけていつもの熟練した手つきで力を篭めて放り投げた。高きに坐すゼウスはこのとき恐ろしい罪科が果たされるのを妨げようと、素早く御手を下して、両人を一陣の疾風(とかぜ)と共に天上に拉し去って夜空に相隣り合って燦めく星座と化し給うたといわれる。大熊座と小熊座がこれである。さりながらヘーラー妃神の憎しみはそれでもなお去らず、大洋神オケーアノスを唆して、この両星座が海中に没(い)ろうとするのを拒絶させた。こうしてこの2つの星座は今も尚永久(とわ)に海に沈むことなく、そのむくつけき姿を曝しながら天極を常に回り巡っているのである。
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目高 拙痴无
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92
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1932/02/04
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くたばりかけの糞爺々です。よろしく。メールも頼むね。
 sechin@nethome.ne.jp です。


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