橘(たちばな)を詠める歌2
巻3-0410:橘を宿に植ゑ生ほし立ちて居て後に悔ゆとも験あらめやも
◎歌の意味ははっきりとは分からないのですが、どうやら「橘」を自身の娘に譬えて詠っている一首のようです。
坂上郎女には大嬢(おほをとめ)と二嬢(おとをとめ)という二人の娘がいますが、そんな「橘の樹のように大切に育てて来た娘を簡単に結婚させて、もし台無しになったらあとで後悔しても仕方がないでしょう」との、娘の結婚を心配している意味の歌でしょうか。
この頃、坂上郎女の二人の娘のうち、大嬢には大伴家持が、二嬢には大伴駿河麿がそれぞれ思いを寄せていました。この歌がどちらのことを詠ったものなのかはっきりとしませんが、娘の将来を心配する親心というのは何時の世も変わらないものなのでしょうね。
巻3-0411:我妹子がやどの橘いと近く植ゑてし故にならずはやまじ
※大伴駿河麻呂(おおとものするがまろ、?~776年)
奈良時代の公卿(くぎょう)です。天平18年越前守(えちぜんのかみ)。天平勝宝(てんぴょうしょうほう)9年橘奈良麻呂(たちばなの-ならまろ)の謀反にくみしたとして弾劾されますが、のち出雲守(いずものかみ)に任じられ、宝亀(ほうき)3年陸奥按察使(むつあぜち)となります。陸奥守・鎮守将軍として蝦夷(えみし)を攻略、6年参議にすすみます。「万葉集」に短歌11首があります。宝亀 7年7月7日死去しています。
巻3-0423:つのさはふ磐余の道を朝さらず.......(長歌)
標題:同石田王卒之時山前王哀傷作歌一首
標訓:同じ石田王(いはたのおほきみ)の卒(みまか)りし時に、山前王(やまくまのおほきみ)の哀傷(かなし)びて作れる歌一首
原文:角障經 石村之道乎 朝不離 将歸人乃 念乍 通計萬口波 霍公鳥 鳴五月者 菖蒲 花橘乎 玉尓貫 蘰尓将為登 九月能 四具礼能時者 黄葉乎 折挿頭跡 延葛乃 弥遠永 萬世尓 不絶等念而 将通 君乎婆明日従 外尓可聞見牟
万葉集 巻3-0423
作者:山前王(やまさきのおほきみ)
よみ:つのさはふ、磐余(いはれ)の道を、朝さらず、行(ゆ)きけむ人の、思ひつつ、通(かよ)ひけまくは、霍公鳥(ほととぎす)、鳴く五月(さつき)には、あやめぐさ、花橘(はなたちばな)を、玉に貫(ぬ)き、かづらにせむと、九月(ながつき)の、しぐれの時は、黄葉(もみちば)を、折りかざさむと、延(は)ふ葛(くず)の、いや遠(とほ)長く、万代(よろずよ)に、絶(た)えじと思ひて、通(かよ)ひけむ、君をば明日(あす)ゆ、外(よそ)にかも見む
意訳:磐余(いはれ)の道を朝毎に、(女性の元に)通いながら思われたことは。。。霍公鳥(ほととぎす)が鳴く五月には、あやめぐさ、花橘(はなたちばな)を、鬘(かづら)にしようと。そして九月のしぐれの時には、黄葉(もみちば)を折って髪飾りに、葛(くず)のようにいつまでも絶えることなく通おうと。。。。でも、あなた様を明日からは、あの世の人としてみることでしょう。
左注:右一首或云柿本朝臣人麻呂作
注訓:右の歌は、或は云はく、柿本朝臣人麿の作といへり。
◎左注によると一説には柿本朝臣人麿の作ともあるので山前王自身が詠んだ歌ではなく、人麿の代作であったのかも知れません。あるいは、山前王の長歌を後に人麿が修正した異伝であるのかも知れませんが…
「磐余(いはれ)の道」は奈良県桜井市や飛鳥を通る古代の主要道路で、石田王の邸宅は磐余にあったことからこの道を通て毎朝、朝廷に出仕していたのでしょう。
長歌の内容は、そんな磐余道を毎朝通って石田王が想像していたことは、「ほととぎすの鳴く五月には菖蒲草や橘の花を玉に連ねてかずらにしよう。九月の時雨の時期には、黄葉を折って頭にかざそうとのことだっただろう。」と、生前の石田王の心を想像して詠っています。そして、「延びる葛のようにとても遠く長く、万の世まで絶えることなくと思って通っただろう君を、明日から他界の人として見るのかなあ。」と、その死を悲しんでいます。
石田王については詳しいことはわかっていないのですが、一説によると山前王の弟であったともいい、「明日から他界の人として見るのかなあ。」とはそんな石田王を亡くした悲しみをよく表している表現ですよね。
※山前王(やまくまのおほきみ、?~724年)
飛鳥(あすか)~奈良時代、忍壁(おさかべ)親王の王子です。葦原(あしはら)王の父ともいわれます。石田王(いわたのおおきみ)の死をいたむ長歌1首のほか短歌2首が「万葉集」巻3に載っています。また「懐風藻」に詩1編が載っています。養老7年12月20日死去。名は「やまさきのおおきみ」とも読みます。
ウェブニュースより
監視技術の悪用阻止へ、米主導で枠組み 日本参加も期待 ―― バイデン米政権は10日閉幕した「民主主義サミット」に合わせて、監視技術の輸出を管理する多国間の枠組みを立ち上げると表明した。中国の人権侵害に対抗する狙いだが、発足時点で正式参加したのは米国含め4カ国だった。日本などハイテク企業を抱える国を巻き込めるかが成否を左右する。
米国はオーストラリアとデンマーク、ノルウェーとの共同声明で「輸出管理・人権イニシアチブ」を発足すると記した。カナダとフランス、オランダ、英国も支持を表明して、近い将来の参加を示唆した。
新たな枠組みは、強権国家の人権侵害に顔認証や監視カメラなどの監視技術が悪用されないよう輸出規制で足並みをそろえる。どこの国・地域に対してどのような品目の輸出を止めるのか検討し、各国が同じ措置を講じる。
米国が協力相手として期待する日本は発足メンバーに加わらなかった。日本には顔認証など高度な技術を持つ企業が多い。一方、人権侵害を理由にした明確な輸出管理法を持っておらず、企業の自主規制にとどまる。国内の法整備が欠かせない。
人権侵害を理由にした輸出規制では米国の動きが突出する。トランプ前政権の時代から、ウイグル族の弾圧に加担したとして監視カメラや遺伝子分析、顔認証などを手掛ける中国企業に米国製品の禁輸措置を相次いで課してきた。
監視カメラ市場は上位5社で世界シェアのほぼ半分におよび、そのうち4社は中国企業だ。米政府は2019年8月に世界最大手の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)などからの政府調達を禁止、20年8月には同社製品を使う企業を政府調達から排除した。しかし経営への打撃は限定的で、部品調達もサプライチェーン(供給網)の多様化で乗り切った。
米国が一方的に輸出規制を繰り出しても、ほかの国が同水準のハイテク製品を出荷し続ければ、中国やロシアなど強権国家への打撃は小さくなる。なるべく多くの国が同調しなければ、監視技術の供給や利用を断つのは難しい。
バイデン政権は「同盟国と協力を深めて中国に対抗する」と繰り返すが、経済分野で具体的な成果は乏しい。日本や欧州連合(EU)などハイテク企業を抱える民主主義国家を巻き込んで、枠組みを機能させられるかが試金石となる 【日本經濟新聞 2021年12月11日 21:00】
悪石島で地震続く 4日から265回観測 看護師ら現地に派遣 ―― 9日に震度5強を観測した十島村悪石島で10日午後8時14分ごろ、震度3の地震があった。気象庁によると、震源地はトカラ列島近海で、震源の深さは約30キロ。地震の規模はマグニチュード2.9と推定される。4日から続くトカラ近海の地震は10日までに計265回となった。
村の派遣要請を受けた日本赤十字社鹿児島支部の看護師らは同日、同島行きの村営フェリーに乗り込んだ。11日午前に到着し、島民の体調をチェックしたり健康相談に応じたりする。
島内の住民63人と工事関係者12人の計75人のうち、住民12世帯30人が島外に避難する予定。11〜12日、村営フェリーで奄美市と鹿児島市に向かう。
家族6人で一時避難する畜産業坂元裕幸さん(47)は「子どもが不安がっているので、徳之島の親戚の家に身を寄せたい。私は牛の世話のため、早めに島に戻ってくる」と話した。
村によると、地震による崖崩れとみられた箇所は落石だったと判明。人や建物、インフラの被害は確認されていない。第10管区海上保安本部によると、島の北東部に地震によるものとみられる崖崩れがあった。
鹿児島地方気象台は13日以降、職員2人を派遣し現地調査をする。 (南日本新聞 2021/12/11 07:08)
sechin@nethome.ne.jp です。
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