聖母マリア像とともに、南蛮渡りの珍しい食べ物がお目見えして、すっかり日本人を魅了してしまいます。現代のわれわれにも身近なものが沢山あります。
はじめに菓子の話から始めることにしましょう。もともと菓子は果子で現代の水菓子(くだもの)が本体でした。従って、第十一代垂仁天皇の時、田道間守(たじまもり)が朝鮮から橘の木を持ってきたのが、日本の菓子の始まりというわけで、爺の小学生の頃には唱歌で「田道間守の歌」までありました。
http://bunbun.boo.jp/okera/w_shouka/s_kokumin/s1_tajima_mori.htm
しかし、果子でない菓子も奈良時代から見え唐果物(からくだもの)と呼ばれました。饅頭・羊羹(蒸し羊羹は江戸時代)・志留粉餅などは鎌倉・室町時代に中国から僧侶により日本にはいって来ました。さびしかったおやつもこれらによって余程潤ったことでしょう。康永2(1343)年には京都に菓子の組合ができたほどでした。ここにいよいよ「南蛮菓子」が登場するのです。解りやすく一覧にしてみましょう。
1.パン(葡: pão、英:bread ブレッド) 2.カステーラ(葡: Castella)
3.ボーロ (葡: bolo) 4.カルメラ(葡: caramelo)
5.アルヘイトウ(葡: alféloa) 6.コンペイトウ(葡: confeito)
1.パン(葡: pão、英:bread ブレッド)は基本的に、小麦粉やライ麦粉などに水・酵母(イースト)を加えてパン生地(en:dough ドウ)にし、それを焼いた食品を指します。発酵のためのイーストと糖類(砂糖など)をセットで加えることも一般的です。なお、酵母を入れずに生地をつくるパンもあり、これを「無発酵パン」や「種なしパン」などと言います(その場合、酵母で発酵させてから焼いたパンのほうは「発酵パン」と言います。)。無発酵パンとしては、生地を薄くのばして焼くパンがあり、アフリカ・中東からインドまでの一帯でさかんに食べられています。なお、生地を発酵させるのは主として気泡を生じさせ膨張させるためですが、酵母で時間をかけて気泡を生じさせる代わりに、ベーキングパウダーや重曹を加えることで簡便に気泡を生じさせるものもあります。また、生地にレーズン、ナッツなどを練り込んだり、別の食材を生地で包んだり、生地に乗せて焼くものもあります(変種として、焼く代わりに、蒸したもの(蒸しパン)、揚げたもの(揚げパン)もあります。) 。パンは多くの国で主食となっています。アブラハムの宗教では儀式(ミサ)において用いられます。
日本ではドン・ロドリゴ(Don Rodrigo)の呼び名で知られるロドリゴ・デ・ビベロ・イ・アベルッサ(Rodrigo de Vivero y Aberrucia、1564年 - 1636年)は、エスパーニャ貴族、植民地政治家で、江戸時代初期に日本を訪れた人物ですが、江戸時代初期に遭難して日本に漂着した際の見聞をまとめた『ドン・ロドリゴ日本見聞録』によれば、「江戸Jendo市は日本の他の市のごとく、多数の住民をもたないが、これを有名にさせる特別な点がある。此市は住民十五万をもち、海水その岸をうち、また市の中央に水多い川流れ、相当に大きい船が入る。パンpãnは果物と同じく、常食外の品として用いるに過ぎないが、此市で造るパンは世界中最高のものというのも過言ではない。そしてこれを買うものが少ないゆえにほとんど無料に等しい。此市および街路には見るべきものがはなはだ多く、市政もまた大いに見るべきところがある。ローマの政治と争そうことが出来よう。――ドン・ロドリゴ、日本見聞録――」とあります。これは、パンの名のごく古い記録と言われています。
2.カステーラ(葡: Castella)は漢字表記で「家主貞良」「加須底羅」と書きますが、、鶏卵を泡立てて小麦粉、砂糖(水飴)を混ぜ合わせた生地をオーブンで焼いた菓子のひとつです。名前の由来は一般的には、スペインの地方名カスティーリャ(Castilla)のポルトガル語発音であるカステーラ(Castela)と言われています。また異説として、カステラ製造過程でのメレンゲを作る際、高く高く盛り上げる時「城(castelo)のように高くなれ!」と言ったことから、カステロ=カステラとなったという説もあります。いずれにせよ、パン・デ・カスティーリャ(pão de Castela、カスティーリャ地方のパン)や、ビスコチョ(元は乾パン状の船乗りの保存食だったが、16世紀末頃、柔らかく焼き上げるレシピが生まれています)が由来とされます。ポルトガルの焼菓子であるパン・デ・ロー(pão de ló)が製法的に似ていることから、こちらを始祖とする説も有力です。
(以下、次回へ)
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