7.エウリュノーメー
エウリュノーメーはオーケアノスとテーテュースの娘で、ゼウスとの間にカリス、また一説に河神アーソーポスを生んだといいます。ロドスのApollōnios (アポローニオス、BC3世紀初期~BC246年以降、叙事詩人、学者、アレクサンドリア図書館長)によると、エウリュノメーは蛇神オピーオーンの妻で、オリュンポスの最初の支配者であったといいます。しかしオピーオーンがクロノスとの力比べに負けたとき、オピーオーンとエウリュノメーはクロノスとレアーに王権を譲り、海の中に姿を消したといいます。その後エウリュノメーはヘーラーがヘーパイストスを海に投げ捨てたとき、テティスとともにヘーパイストスを匿(かくま)ったといいます。アルカディアのピガリアーにはエウリュノメーの聖域があり、年に一度の祭礼のときだけ閉ざされていた聖域は人々に解放されました。聖域にはエウリュノメーの神像があり、上半身は女性、下半身は魚の姿をしており、金の鎖で縛られていたといいます。
イギリスの詩人Robert Graves(ロバート・グレーヴス、1895~1985年、イギリスの詩人、小説家、評論家)は独自に再構築した原ギリシアの創造神話を「ペラスゴイ人の創世神話」として紹介していまいが、そこではエウリュノメーは創造神とされています。カオスの中に最初に裸で存在したエウリュノメーは、空と海を分離してから波の中で踊り狂い、その動きから北風を発生させました。続いて北風を両手で捕まえ、激しくこすり伸ばしてオピーオーンを生み出し、その後も体を温める為に踊り続けましたが、欲情したオピーオーンと交わって身籠り、鳩に姿を変えて波の上に宇宙卵を産んだといいます。卵は孵化して太陽・月・水星・金星・火星・木星・土星を初めとする無数の星々と美しい自然と生物たちに満ちた大地が生まれ、2人はオリュンポス山に移ったというものです。しかし卵を孵化させて慢心したオピーオーンが、自分こそが宇宙の創造者であると主張したのでエウリュノメーはオピーオーンを踏み付け、牙を蹴り折って地下深くの洞窟に追放しました。その後、太陽と月、及び5つの惑星に神秘の力を生み与え、光明を司る太陽にテイアーとヒュペリーオーンを、魅惑を司る月にポイベーとアトラースを、知恵を司る水星にメーティスとコイオスを、愛を司る金星にテーテュースとオーケアノスを、生長を司る火星にディオーネーとクレイオスを、掟を司る木星にテミスとエウリュメドーンを配置し、平和を司る土星にクロノスとレアーを配置するといった具合に、男女の巨人であるティーターンとティターニアをそれぞれの惑星に配置したというものです。その後、アルカディアの土から最初の人間であるペラスゴスが生まれたといいます。
8.ムネーモシュネー
ムネーモシュネーはギリシア神話に登場する記憶を神格化した女神であります。
ウーラノスとガイアの娘で、ティーターン族の一人であり、オーケアノス、コイオス、クレイオス、ヒュペリーオーン、イーアペトス、クロノス、テイアー、レアー、テミス、ポイベー、テーテュースと兄弟です。
ゼウスとの間に9人のムーサ(ミューズ)たちを生みました。
9柱それぞれの名前と司る分野は以下の通りです。( )内は、名前の意味と分野を示します。
カリオペー(美声、叙事詩)、クレイオー(讃美する女、歴史)、エウテルペー(喜ばしい女、抒情詩)、タレイア(豊かさ、喜劇・牧歌)、メルポメネー(女性歌手、悲劇・挽歌)、テルプシコラー(踊りの楽しみ、合唱・舞踊)、エラトーエラトー(愛らしい女、独唱歌)、ポリュムニアー(多くの讃歌、讃歌・物語)、ウーラニアー(天上の女、天文)
ヘーシオドスの『神統記』によると、ムネーモシュネーはエレウテールの丘の主で、Pieria(ピーエリア)においてゼウスと9日間に渡って添い臥し、人々から苦しみを忘れさせる存在として9人のムーサたちを産んだといわれています。
ムネーモシュネーは名前をつけることを始めたとされ、また学問の道を究めるときにはムネーモシュネーとムーサたちに祈願されたといます。
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