3.レートー
ティーターン神族のコイオスとポイベーの娘で、アステリアーと姉妹です。ポーロスとポイベーの娘という説もあります。ゼウスの子アポローン、アルテミスを生みました。レートーは黒衣をまとい、神々のうちで最も柔和な女神といわれています。鶉に変身したゼウスとの間に子アポローンとアルテミスを生んだが、そのためヘーラーの激しい嫉妬をかったとされています。
アポローンとアルテミスの出産の経緯については諸説があります。ヘーラーはレートーがゼウスの子を身ごもると、すべての土地にレートーに出産する場所を与えてはならないと命じ、イーリスとアレースに土地が命令に背かないように監視させました。あるいは太陽が一度でも照らしたことがある場所で出産してはならないと命じ、さらに蛇のピュートーンがレートーを追い回しました。というのは予言によって、レートーの産む子が自分を殺害すると知っていたからであるといいます。このためレートーは出産できる土地を求めて放浪しなければならなかったのです。またヘーラーの命令によってティテュオスという巨人も彼女を襲いましたが、ゼウスによって殺されたといいます。より特殊な説では、レートーは牝狼の姿となってヒュペルボレオイの国からやって来て出産したといいます。
ある時レートーはリュキアに立ち寄り、池の水を飲もうとすると、そこの村人たちがそれを止めようとしました。レートーは反論しますが、村人たちは池に足を入れて泥を立たせ、水を飲ませまいとしました。怒ったレートーは「この者たちがこの池から永遠に離れず、生涯をここで過ごすように」と願ったのです。すると村人たちは蛙になり、泥沼に変わった池に住むようになったと伝えられています。
このような苦難に耐えて、まずオルテュギアー島でアルテミスを産み、さらにアルテミスに手を引かれてデーロス島に渡りアポローンを産んだといいます。アルテミスはそのとき助産婦としてレートーを助けました。より新しい神話ではアポローンとアルテミスはデーロス島で生まれたとされ、その場合、オルテュギアー島とデーロス島は同一視されています。Hyginus(ヒュギーヌス、BC64~AD17、ラテン語の著作家)はレートーをデーロス島に連れて行ったのはゼウスの命を受けた北風ボレアースで、ポセイドーンが彼女を保護し、ポセイドーンはヘーラーの言葉に違反しないように、デーロス島を波で覆ったといいます。
こうしてレートーはデーロス島のキュントス山に背もたれして、シュロの木(オリーブとも)のそばでアポローンを出産しました。ヘーラーがエイレイテュイアを引き止めていたために、9日9晩にも及ぶ難産だったといいます。それを見かねたイーリスがエイレイテュイアを連れて来た事により、出産は成功したといいます。この出産にはディオーネー、レアー、テミス、アムピトリーテーなどの女神が立会い、アポローンが生まれると彼女らは歓声を上げ、大地は微笑み、天空には白鳥がめぐったといいます。アルテミスは出産時、母に苦痛を与えなかったので、産褥に苦しむ女性の守護神となりました。アポローンは生まれるとピュートーンを殺したとも、ヒュペルボレオイの地に運ばれたともいわれています。デロスはレートーの身悶えによって海底に根を張ったとも、海底から4本の柱が延びてきて支えられたとも伝えられています。
4.デーメーテール
クロノスとレアーの娘で、ゼウスの姉にあたる。ゼウスとの間に娘コレー(後の冥府の王妃ペルセポネー)をもうけましたたが、その経緯はゼウスがデーメーテールに無理やり迫った挙句、無理やり子供を作らされた為、ゼウスにあまり良い印象を持っていなかったようです(ただし子供であるペルセポネーには愛情を注いでいた)。さらに兄弟の海神ポセイドーンからも無理強いされ、秘儀の女神デスポイアと1頭の名馬アレイオーン(アリーオーン)を生んでいます。最も有名な恋人のイーアシオーンはゼウスの嫉妬によって稲妻に撃たれたといいます。
普段は温厚だが怒ると飢餓をもたらすため、ゼウスも一目置いています。テッサリアの王エリュシクトーンが屋敷を増築するため、デーメーテールの聖地である森の木を根こそぎ伐採したときには、彼の下へ「飢餓」を遣わしてエリュシクトーンをいくら食べても満たされないようにし、最終的にはエリュシクトーンが自身の体を貪り食う形で死に追いやったといいます。だが、彼の娘であるムネーストラーには同情し、恩恵を施したといわれています。
デーメーテールの娘コレー(ペルセポネー)は、行方が分からなくなります。何か悪いことに巻き込まれたのではないかと考えたデーメーテールは、犯罪に詳しい神と言われるヘカテーに問い掛けます。ヘカテーは「ペルセポネーはハーデースに冥界に連れ去られた」と答えました。女神は、ハーデースがペルセポネーを誘拐した事を知ったのです。しかし、ゼウス達他の兄弟と違い純真で心優しい性格であるハーデースがそんなことをするはずがないと考えたデーメーテールは、地上の事は何でも知っているとされるヘーリオスに確認を求めるのでした。ヘーリオスは、「ゼウスが、ペルセポネーを后に迎えたいと言ったハーデースを唆(そそのか)し拉致させた」と女神に教えました。デーメーテールはゼウスがこの誘拐に加担したことを知ったのです。デーメーテールはゼウスに抗議しますが、ゼウスは「冥界の王であるハーデースならば夫として不釣合いではないだろう」と言い訳するのでした。デーメーテールはこれに激怒し、天界を捨て老女に変身しアッティカのエレウシースに下ったといいます。この放浪の間のデーメーテールの行動についての伝説が各所に残されているといいます。デーメーテールが地を放浪する間、大地は荒廃した。ゼウスは虹の女神イーリスを遣わしデーメーテールを説得しましたが、女神は怒りを解かず、コレー(ペルセポネー)の帰還を求め、それを条件として大地の豊穣神としての管掌を果たすことを答えたのでした。
ゼウスはハーデースに女神の意向を伝え、ペルセポネーを地上に帰還させました。ペルセポネーの帰還はデーメーテールに喜びをもたらし、それによって大地は再び豊穣と実りを取り戻したといいます。これは穀物が地下に播かれ、再び芽吹いて現れることを象徴する神話とされています。
ペルセポネーは地上に帰還しましたが、冥府においてザクロの実を幾つか口にしてしまったのです。冥府の食物を食べたものは、冥府の住民となる定めがあったのですが、デーメーテールはこれにも抗議しました。ペルセポネーがどのような経緯で冥府の食物を食べたのか、自発的にか、ハーデースなどの策略によってか諸説があるあります。ザクロを食べた説でも、何粒食べたかについて、複数の説があります。
オリュンポスの秩序は守らねばなりませんが、デーメーテールの抗議も考慮せねばならないとして、ゼウスあるいは神々は、1年(12ヶ月)を食べてしまったザクロの実の数(4粒又は6粒)で割り、1/3(又は1/2)を冥府で、残りをデーメーテールの元で暮らすことで決着を付けました。デーメーテールはペルセポネーがハーデースの元で暮らしている間は実りを齎すのをやめるようになったのだといいます。これは季節・四季の起源譚(ばなし)であります。
Ovidius(オウィディウス、BC43~AD17、ローマの詩人)やApollodoros(アポロドーロス、2世紀後半頃のアテーナイの著述家)の主張によると、ペルセポネーがザクロを食べたことが明らかになったのは冥府の庭園の庭師アスカラポスの告げ口が原因であるといいます。これを恨んだデーメーテールは冥府の入り口付近でアスカラポスの上に巨岩を置いたといいます。アスカラポスはヘーラクレースによって助けられましたが、デーメーテールは彼をフクロウに変えてしまったといわれています。
アルカディアに伝わる神話では、デーメーテールは娘を捜して地上を放浪していた際、ポセイドーンに迫られます。デーメーテールは彼を避けて牝馬の姿となり、オンコス王の馬群の中に紛れ込みました。しかしポセイドーンは彼女を発見し、自分も牡馬の姿となって女神と交わりました。この結果、デーメーテールは一人の娘と名馬アレイオーンを生みました。娘の名はデスポイナと呼ばれますが、これは単に「女主人」の意に過ぎず、実際の名は密儀の参加者以外には明らかにされていません。この時のポセイドーンに対するデーメーテールの怒りはすさまじく、怒りの女神エリーニュースと呼ばれたほどでありました。風光明媚で名高いラードーン川の流れで沐浴するまで女神の怒りは続いたとされます。sechin@nethome.ne.jp です。
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