瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
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Hēraklēs(ヘーラクレース)の第12の難行は黄泉の国から番犬Kerberos(ケルベロス)を捕らえてくることでした。 ケルベロスもEchidna(エキドナ)とTȳphōn(テュポン)の子で、3つの犬の頭に竜の尾を持ち、 背中にはたくさんの蛇が生えている奇妙な怪物です。またHādēs(ハーデース)の愛犬でもありました。 王Eurystheus(エウリュステウス)はヘラクレスを殺すつもりで、最後にこんな難題を出したのです。


 


さすがにたじろぐヘーラクレースでしたが、Athēnā(アテーナー)とHermēs(ヘルメース)に励まされ黄泉に行く準備をするのでした。 しかし黄泉の国へ入る方法が解りません。唯一入り口を知っている宗教があり、そこに入会しなくてはいけなかったのです。 前述したように、第8の難事でAdmētos(アドメートス)の妻Alkēstis(アルケスティス)を黄泉の国から連れ戻しているはずなのですが、 神話においては矛盾は仕方のないことなのでしょう。ヘーラクレースが道順を忘れてしまったと思うことにしましょう。


その秘教に入会するため、Eleusis(エレウシース)の地へやってきました。そこでEumolpos(エウモルポス、ギリシャ神話に登場するエレウシース秘教の創建者。母Chionē〈キオネ〉に海に捨てられるが、Poseidōn〈ポセイドーン〉が拾い海の女神Benthesikyme〈ベンテシキュメ、〉に育てられます。Thracia〈トラーキア〉王Tegyrios〈テギュリオス〉のもとに逃れ、のちに王国を継ぎます)を訪ねますが、 この宗教は異邦人の入会を認めていませんので、とりあえずPylios(ピューリオス)という男の養子となって入会することにしました。


だが、ここでまた問題が発生します。ヘーラクレースは先のKentauros(ケンタウロス)殺人事件の罪を清めてもらっていませんでしたので、会合に参加することができませんでした。急いでエウモルポスに罪を清めてもらい、なんとか黄泉の国への入り口があるというLakonía(ラコニア、ペロポネソス半島南部に位置します)のTainaron(タイナロン)に到着します。


黄泉に足を踏み入れたヘーラクレースの姿を見た霊は驚いて逃げだしますが、Medoūsa(メドゥーサ)だけは逃げませんでした。 ヘーラクレースは彼女の姿を見て剣を抜きますが、案内人ヘルメースが無駄なことだから放っておけと彼を先へ促すのでした。 少し行くと、英雄Meleagros(メレアグロス)の霊と遭遇します。


「やあ、君は英雄ヘーラクレース。こんなところで会えるとは感激だな。」


「そういうあなたはCalydon(カリュドン)の大猪退治の大英雄メレアグロス。奇遇だな。」


「相手が君なら申し分ない。頼みがあるんだが、妹Deianeira(デイアネイラ)を嫁にもらってやってくれないか?」


「生きてるのか?」


「生きてるよ。じゃあ頼んだよ。」


「…… 勝手だなあ。ま、いっか。」

※ Jan Gossaert(ヤン・ホッサールト):ルネサンス期のフランドル人画家。フランドルに「イタリア風の」絵画を紹介し、歴史的寓意に満ちた裸婦像をフランドルへともたらしたた最初期の画家の一人です。

 黄泉の国の門の近くでヘーラクレースはまたも英雄と遭遇します。
「あいつら…… 生きているのか?」
「ああ、Persephonē(ペルセポネ)さま誘拐事件で失敗して捕らわれているThēseus(テーセウス)とPeirithoos(ペイリトオス)だよ。」
「ヘルメースよ、あいつらを助けることは出来るのか?」
「生きている者があいつらの体を触れば、蘇生することができるだろう。」
 ヘーラクレースはテーセウスの手を取って彼を生還させましたが、 ペイリトオスの手を取ろうとした時いきなり大地が揺れて彼は奈落へと落ちていってしまったのです。

 そこへやってきたのはKeuthōnymos(ケウトニュモス)の子でHādēs(ハ-デ-ス)の牛飼いMenoitēs(メノイテース)でした。 彼は無謀にもヘーラクレースにレスリングの挑戦をしましたが、あっけなく粉砕されてしまいます。 そして見かねたPersephonē(ペルセポネ、ハーデースの妻で、冥界の女王)に救ってもらったのでした。
 さて、玉座に着いたヘラクレスはハーデースにケルベロスの件を要求します。
「あ? ケルベロスを連れて行く? いいよ。素手で捕まえたらね。」
「素手で、ですか。」
 そこで例のライオンの毛皮をまとって、Acheron(アケロン、地下世界(冥府)への分岐点と信じられていました)の門にいるケルベロスめがけて大乱闘が始まりました。首を押さえつけ、ようやくおとなしくなったケルベロスでした。

※ Francisco de Zurbarán(フランシスコ・デ・スルバラン):バロック期のスペインの画家。スペイン絵画の黄金時代と言われる17世紀前半に活動した画家であり、宗教画、静物画に優れていました。

 観念したケルベロスを連れてTroizḗn(トロイゼン)を通ってArgos(アルゴス)へ戻ったヘーラクレースは、 約束通りエウリュステウスに見せて存分に怖がらせたのです。

 そしてすぐにケルベロスを黄泉の国へ返してやったのです。こうしてヘーラクレースの12の難事はすべて終了しました。


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