瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
ふと気がつくと、闇の川辺を徘徊している。何時まで経っても夜は明けない。東白鬚公園の南ゲートを入ると、煌(きら)びやかなイルミネーションが目を射た。南池にはスカイツリーと思しき像を挟んで「賀正」の2文字がオレンジ色に輝き、その左には「2010」の数字が、右側には辛うじて「虎」と見える絵が浮き出て、それらが池の面に対称に逆さまの像を投げかけている。

公園を抜け、水神大橋を渡っても、まだ暗い。汐入の遊歩道を南下する頃には、ぼつぼつ人影が見え始める。白鬚橋を通す明治通りに出る頃になって、漸く東の空が白み始める。曇空の所為か何時も観られる東雲の朝焼けはみられない。東天高く三日月が見えたかと思うとすぐに雲間にかくれる。橋場の遊歩道から見るスカイツリーは一段と高さを増したようである。テラスの昇降口にあがってカメラを構えたが、まだ薄暗くうまく収まったかどうか解らない。体は汗ばんでくるのに、手は冷たく悴(かじ)んでいる。両手を合わせ指の関節を力いっぱい伸ばしては、こぶしを握ったり平手を開いたりして指の屈伸を行う。そんなことを何回も繰り返しながら、桜橋辺りまで来た頃やっと明るくなった。本日の東京の日の出は6時51分とある。
ギリシア神話:黄金漬になったミダース王
Sileni (シーレーニ)はディオニュソスの従者であるIpotanes(イポタネス、半人半馬の種族)であり、彼等は酔っぱらいであった。他のイポタヌスと違う点は、通常、禿げた肥満体で、薄い唇とずんぐりした鼻をしていることである。脚も人間のそれであった。後にsileniは複数形であることの意味を失い、もっぱら独りのイポタヌス、Silenus (シーレーノス)を指すようになった。シーレーノスの伝説として名高いものにブリュギアの王Midas(ミダース)との出会いがある。
Midasは伝説によるとCybele(キュベーレ)女神の子であるといわれるコルディアースの子でブリュギア王朝の第二代目として豪富をもって知られていた。このMidas王が年寄りのSilenusを捕えたという話はヘーロドトス(BC485年頃~BC420年頃)やクセノポーン(BC427年?~BC355年?)にも出てくるが場所が一定していない。マケドニアともブリュキアともいうが、ともかく王はいつもSilenusがいつも水を飲みに来る泉に酒をしたたかに混ぜておかせた。Silenusが例により腹いっぱいに水を飲むと、いい気持ちに酔ってしまい、薔薇の咲き乱れている花園に入って花の香に戯れているうちに眠り込んでしまう。王は家来か農民か王宮へ連れてきたSilenusを鄭重に扱い、珍客の到来とばかり饗宴の主客と為して夜となく昼となく十日の間酒盛りを続けた。そして、十一日目の朝に彼を棲み慣れた元の野へ送り返してやった。
Silenusはディオニューソス(バッコス)の幼い時、彼を養い育てた謂わば養父格なのである。それゆえこの話を聞いたディオニューソスは王を大いに徳として何でも望むことを一つだけ叶えてやろうと王に対(むか)って言われた。ギリシア七賢人の一人といわれたSolon(ソローン、BD639年頃~BC559年頃)は「金持ちは金が増えるごとに一層それだけ欲深くなってゆくもの」と言っている通りMidasもだんだん身代が増えるに従って欲深になったのであろう。この御神の寛大な(あるいは性悪な)申出を承ると、思案の末答えた。「どうか私の体に触れる限りのものが、何でも皆黄金に変わりますように」
おおらかな微笑を口許に浮かべて、バッコスはMidaのこの素朴な願いを快く聞き届けてくださった。王は有頂天の歓びで王宮にかえると、早速色んな物に触って神から与えられた力を試してみた。初めは本気で信じようともしなかったが、物は試しと苑にある樫の木の下枝を折り取ってみた。すると指が触れたか触れないかのうちにそれは黄金の小枝になった。路地に敷いた小石を拾い上げると、これもピカピカと輝く黄金の球になった。枝から林檎をもぎ採って手に載せると、それはあのアプロディーテーがパリスから受け取ったヘスペリデスの林檎のように、美しい金色に輝いていた。王が手を水で洗うと、指の間を零れる水はあのダナエーが夢見たような黄金の雨の流れであった。全ての物が皆黄金に変わるのを見た王は、もう自分が正気なのか夢を見ているのか解らないほど胸が躍って茫然としてしまった。しかし、その歓びも王にとって残念至極の事ながら、そう長くは続かなかった。夕方になって食堂へ入った王の前へ、召使が肉とパンとを山盛りにした小卓を運んできた。王は歓びに忘れていた空腹をにわかに感じて、早速目の前に置かれたパンを手に掴むとそれは忽ち硬い金に変わった。あわてて今度は一変の肉を食べようとすると、歯が肉に触れるや否やカチンという音がして、王の歯は冷たい黄金の板を噛んでいるのであった。暗然として今度は、当の贈物の主であるデュオニューソスに酒を飲もうと盃を挙げると、咽喉を通るのは何の味もない、溶けた黄金の雫に過ぎなかった。
いかにも世界一の金持ちになれるという期待はあったが、餓(うえ)は彼に迫り、幾日生命を保てるかも最早解らなくなってしまった。この予期しなかったとんでもない災難に驚いて、王はもう今では富とか財産とかいものが、何にも増して空しい、どうでも好いことになっていった。いやいやそれどころか何にも増して忌まわしい、憎らしいものに変わってしまった。何にも使えないだけでなく自分の基本的な欲求をさえ妨げるもの、それが何の役に立つだろう。王は自分の願いもディオニューソスも疎ましく後悔されてきて、居ても立っても居られなくなった。咽喉は渇き、食べ物は山のように積んであるのに、腹の皮は背中につくほど、ひもじさが身に迫っている。とうとう彼は黄金に輝く手を天に差し伸べ、ディオニューソスに祈った。どうか自分の愚かさを憐み、自分の犯した思い上がりの罪を赦して、お慈悲をお垂くださいますよう。どうかこの外見ばかりは美しい呪いから、私を解き放してくださるようにと祈るのであった。
もともと本気で彼を辛い目に逢わせるつもりではなかったディオニューソスは早速この王の願いを肯(き)き入れて、彼の厄介な能力を取り除いてやられた。そしてこの上にも彼が先ほど愚かにも懇願したり祈りの虜にならないですむようにと、王に訓(おし)えてサルディスの町外れを流れる川をたどり、その源泉まで溯(さかのぼ)らせた。そしてリューディアの山々の間を分け、その源に行き着いたとき、湧き上がる泉に身を投じてこれまでの過怠の罪をすっかり洗い潔(きよ)めるがいい… これが御神の尊い指令だった。因より王はバッコス神の訓えの通りに実行した。王の体に触れるものが全て黄金に変わるという魔力は初めて王の体を離れ、洗い去られてその水に沁み込み、流れにと写っていった。そのために今日までもこのパクトーロス川からは砂金が出るのだという。後ろの山はその麓にSisyphus(シーシュポス)が住んだというトモーロス山がある。
ギリシア神話:黄金漬になったミダース王
Midasは伝説によるとCybele(キュベーレ)女神の子であるといわれるコルディアースの子でブリュギア王朝の第二代目として豪富をもって知られていた。このMidas王が年寄りのSilenusを捕えたという話はヘーロドトス(BC485年頃~BC420年頃)やクセノポーン(BC427年?~BC355年?)にも出てくるが場所が一定していない。マケドニアともブリュキアともいうが、ともかく王はいつもSilenusがいつも水を飲みに来る泉に酒をしたたかに混ぜておかせた。Silenusが例により腹いっぱいに水を飲むと、いい気持ちに酔ってしまい、薔薇の咲き乱れている花園に入って花の香に戯れているうちに眠り込んでしまう。王は家来か農民か王宮へ連れてきたSilenusを鄭重に扱い、珍客の到来とばかり饗宴の主客と為して夜となく昼となく十日の間酒盛りを続けた。そして、十一日目の朝に彼を棲み慣れた元の野へ送り返してやった。
おおらかな微笑を口許に浮かべて、バッコスはMidaのこの素朴な願いを快く聞き届けてくださった。王は有頂天の歓びで王宮にかえると、早速色んな物に触って神から与えられた力を試してみた。初めは本気で信じようともしなかったが、物は試しと苑にある樫の木の下枝を折り取ってみた。すると指が触れたか触れないかのうちにそれは黄金の小枝になった。路地に敷いた小石を拾い上げると、これもピカピカと輝く黄金の球になった。枝から林檎をもぎ採って手に載せると、それはあのアプロディーテーがパリスから受け取ったヘスペリデスの林檎のように、美しい金色に輝いていた。王が手を水で洗うと、指の間を零れる水はあのダナエーが夢見たような黄金の雨の流れであった。全ての物が皆黄金に変わるのを見た王は、もう自分が正気なのか夢を見ているのか解らないほど胸が躍って茫然としてしまった。しかし、その歓びも王にとって残念至極の事ながら、そう長くは続かなかった。夕方になって食堂へ入った王の前へ、召使が肉とパンとを山盛りにした小卓を運んできた。王は歓びに忘れていた空腹をにわかに感じて、早速目の前に置かれたパンを手に掴むとそれは忽ち硬い金に変わった。あわてて今度は一変の肉を食べようとすると、歯が肉に触れるや否やカチンという音がして、王の歯は冷たい黄金の板を噛んでいるのであった。暗然として今度は、当の贈物の主であるデュオニューソスに酒を飲もうと盃を挙げると、咽喉を通るのは何の味もない、溶けた黄金の雫に過ぎなかった。
いかにも世界一の金持ちになれるという期待はあったが、餓(うえ)は彼に迫り、幾日生命を保てるかも最早解らなくなってしまった。この予期しなかったとんでもない災難に驚いて、王はもう今では富とか財産とかいものが、何にも増して空しい、どうでも好いことになっていった。いやいやそれどころか何にも増して忌まわしい、憎らしいものに変わってしまった。何にも使えないだけでなく自分の基本的な欲求をさえ妨げるもの、それが何の役に立つだろう。王は自分の願いもディオニューソスも疎ましく後悔されてきて、居ても立っても居られなくなった。咽喉は渇き、食べ物は山のように積んであるのに、腹の皮は背中につくほど、ひもじさが身に迫っている。とうとう彼は黄金に輝く手を天に差し伸べ、ディオニューソスに祈った。どうか自分の愚かさを憐み、自分の犯した思い上がりの罪を赦して、お慈悲をお垂くださいますよう。どうかこの外見ばかりは美しい呪いから、私を解き放してくださるようにと祈るのであった。
もともと本気で彼を辛い目に逢わせるつもりではなかったディオニューソスは早速この王の願いを肯(き)き入れて、彼の厄介な能力を取り除いてやられた。そしてこの上にも彼が先ほど愚かにも懇願したり祈りの虜にならないですむようにと、王に訓(おし)えてサルディスの町外れを流れる川をたどり、その源泉まで溯(さかのぼ)らせた。そしてリューディアの山々の間を分け、その源に行き着いたとき、湧き上がる泉に身を投じてこれまでの過怠の罪をすっかり洗い潔(きよ)めるがいい… これが御神の尊い指令だった。因より王はバッコス神の訓えの通りに実行した。王の体に触れるものが全て黄金に変わるという魔力は初めて王の体を離れ、洗い去られてその水に沁み込み、流れにと写っていった。そのために今日までもこのパクトーロス川からは砂金が出るのだという。後ろの山はその麓にSisyphus(シーシュポス)が住んだというトモーロス山がある。
ギリシア神話:生き剥ぎにされたマルシュアース
今まで述べてきたApollōn(アポーローン)神にまつわる伝説はこれらの他にも数々ある。彼の優しい面、優雅な面だけでなく、烈しさ恐ろしさ厳しさを物語るもの、たとえば既に記したCassandr(カッサンドラー)の物語も多分に彼の残酷なまでの愛情を語っている。主神Zeus(ゼウス)とLētō(レートー)との息子で、アルテミスとは双子である。後に光明神の性格を持つことからヘーリオスと混同され太陽神とされたが、本来は予言と牧畜、音楽(竪琴)、弓矢の神である。また、オリュンポス十二神には(諸説があるが)ほぼ確実に名を連ねる。既に幼少の頃、母親Lētōに邪(よこしま)な恋を仕掛けあるいは彼女を迫害した巨人ティテュオスを殺した。それ以来この巨人は冥府の底タルタロスに固く縛られ二羽の鷲に両側から肝臓を啄ばまれている。その姿は冥界めぐりをしたOdysseus(オデュッセウス)さえ戦慄させるに足るものだったという。神々と人間との争い、ことに技競(くら)べはしばしば説話化された人間像であり、人間が常に高みを冀い、しばしばその能力を夢想したギリシア人の間においては、幾度となくさまざまのヴァリエーションで物語られるが、もとより人気のあるアポーロンにこれが缼ける謂れはなかった。
Marsyas(マルシュアース)はシーレーノスの一人であった。小さな角を頭のこめかみに付け毛むくじゃらな山羊の足をした彼が、よい天気の日にうかうかと野を散歩していた折、ふと小径に落ちている1管の笛を見つけた。それはアテーナー女神が棄てていった物であった。技芸の司(つかさ)である女神は、手先の巧みに任せてさまざまな器具を拵えられた中に、喇叭や竪笛も数えられた。しかし、笛を吹くのに頬を膨らませ、見っともよからぬ面持ちになるのを厭われた女神はこれをうち棄てられたのである。これを手に入れたMarsyaは、生まれつきの剽軽(ひょうきん)さとすばしっこく働く小器用さから、いろいろと試みるうちに自ずからこの術を会得し、野山を巡り歩くたびに、曲(ふし)無面白く、歌い奏でてはニンフたちを興がらせていた。アテーナー女神はこれを嫌がられて、こっぴどく槍の柄で打擲(ちょうちゃく)されたが、彼は一向に懲りずに、いろいろと工夫を凝らすのであった。そして遂には大変な天狗になり、技自慢の果てはアポローン神にもおさおさ敗(ひ)けは執るまいなどと言って歩いた。
ついにアポローン神とMarsyasとが技競べをする日がやってきた。立会いはオリュンポスの神々であった。そして競技の条件は勝者が敗者を思うままに処分し得ることというのであった。競技の模様についてはどんな歌が歌われか二人の妙技がそれぞれどんなであったかなど誰も伝えるものはない。しかし、言うまでもなくアポローンはその入神のわざをもって鄙びたMarsyasを容易く打ち破った。
Marsyasが笛に敗れて受けた審判は、生きながらにして皮を剥がれることであった。「何故、あなたは私自身から私を引き剥がすのか。もう後悔しました。許してください。笛でこんな目に遭わすのはあんまりです」このように哀れなMarsyasは叫んだと言われている。全身は一つの傷となり一面の地に塗れた。その態(さま)をみて仲間のシーレーノスたち、また牧人たちは群れいるかぎり、ひとしく涙を流し、大地はそのためにしとどに濡れた。そのあまりは地下を潜って清冽な泉と化し、このようにしてブリュギア地方に比べるものなく澄んだ流れの、彼の名を負うマルシュアース川が出来たのだという。
Marsyas(マルシュアース)はシーレーノスの一人であった。小さな角を頭のこめかみに付け毛むくじゃらな山羊の足をした彼が、よい天気の日にうかうかと野を散歩していた折、ふと小径に落ちている1管の笛を見つけた。それはアテーナー女神が棄てていった物であった。技芸の司(つかさ)である女神は、手先の巧みに任せてさまざまな器具を拵えられた中に、喇叭や竪笛も数えられた。しかし、笛を吹くのに頬を膨らませ、見っともよからぬ面持ちになるのを厭われた女神はこれをうち棄てられたのである。これを手に入れたMarsyaは、生まれつきの剽軽(ひょうきん)さとすばしっこく働く小器用さから、いろいろと試みるうちに自ずからこの術を会得し、野山を巡り歩くたびに、曲(ふし)無面白く、歌い奏でてはニンフたちを興がらせていた。アテーナー女神はこれを嫌がられて、こっぴどく槍の柄で打擲(ちょうちゃく)されたが、彼は一向に懲りずに、いろいろと工夫を凝らすのであった。そして遂には大変な天狗になり、技自慢の果てはアポローン神にもおさおさ敗(ひ)けは執るまいなどと言って歩いた。
ついにアポローン神とMarsyasとが技競べをする日がやってきた。立会いはオリュンポスの神々であった。そして競技の条件は勝者が敗者を思うままに処分し得ることというのであった。競技の模様についてはどんな歌が歌われか二人の妙技がそれぞれどんなであったかなど誰も伝えるものはない。しかし、言うまでもなくアポローンはその入神のわざをもって鄙びたMarsyasを容易く打ち破った。
間もなく、初場所がはじまる。今朝のウェブニュースはその相撲界から。
【大相撲】角界の旧弊に風穴明けるか 貴乃花親方の強行出馬 ―― 会合の開始からおよそ2時間後、貴乃花親方が一人で途中退席した。報道陣に「立候補させていただきますということでお話ししました。一門を出るということです」と話し、無所属で理事選に出馬するのかを確認されると「そういうことですね」と言い切った。/会合は、さらに1時間後に終了。「穏便に話をしようと思っていたが(貴乃花親方が)乗ってくれなかった」。一門の取りまとめ役の放駒親方は話し、「本人の意志が固く、どういう形になっても立候補したいということだ」と説明した。/理事選で投票権を持つ評議員は現在105人いる年寄に、大関以上の日本人力士2人(魁皇、琴光喜)、立行司2人の計109人。外部理事を除く理事の定員は10だから、当選に必要な票数は10前後となる。5つの一門は票に見合った数の理事を出しており、29票を持つ二所ノ関一門の理事枠は3。4人が出馬すれば共倒れとなるだけに、調整が図られてきた。37歳と若い貴乃花親方には「もう1期(2年)待ってはどうか」と自重を促す意見もあったが、耳を貸さなかった。/角界では一昨年の力士暴行死事件以来、大麻問題など不祥事が続発。イメージの悪化に有効な手段を打てない協会執行部に対して、若手親方を中心に不満がくすぶっている。貴乃花親方は以前からファンサービスやチケット販売方法などで持論を展開するなど改革の意欲が強く、若手の意見を取り入れ、現状を早期に是正したい考えだという。/優勝22回など一時代を築いた貴乃花親方は、平成15年の引退後は「将来の理事長候補」とされてきた。出馬を強行するのは改革の近道との思いからだろうが、同門の尾車親方(元大関琴風)が「数年後にはあいつの時代が来るのに、何でそんなに急ぐんだ」と語るなど批判の声も少なくない。/一方で、「私は一人で立候補するのではない」と話すように、同門の大嶽親方(元関脇貴闘力)や阿武松親方(元関脇益荒雄)らのほか、一門外にも複数の支持者がいるとされる。当選ラインの得票を可能と見る関係者も多く、理事当選後に賛同者を増やせれば早期の改革実現も可能になる。/「なくした方がいい」という声すらある一門制に反旗を翻した貴乃花親方。賛否両論ある今回の行動だが、かつての自民党の派閥にも似た角界の旧弊に風穴を開けたという意義はありそうだ。 (産経ニュース、2010.1.8 22:36)
ギリシア神話:アポローンの愛を拒絶したカッサンドラー
Cassandra(カッサンドラー)はトロイア地方の首都イーリオスの王Priamos(プリアモス)の娘であって、Alexandra(アレクサンドラー)とも呼ばれた。早くからアポローンの寵を蒙り、おそらくは巫女としてその宮に仕えていたものと思われる。アポローンの神寵はいと細やかに、くさぐさの賜物のうちにも、御神のとりわけて秀で給う予言の術があった。こうして彼女は末先々の出来事まで予知しこれを託宣として伝える力を授かったのであった。彼女の誇らかに透徹して冷ややかな輝きを帯びる白玉のような美しさは銀弓の御神に対してそれほどまでの蠱惑(こわく)を持っていたのである。 しかし、それほどまでのアポローン神の有難い心遣いに対しても容易に彼女の心はすべてを打ち明けて許そうとはしなかった。生まれつきの冷たい心ばえからか、慎み深い乙女の臆病さの故か、それとも何か神性というものに本能的な警戒心を持っていたのか、はたまた一度靡くと見せてまた変心したのか、伝えにより話し手により種々であるが、ともかくいろいろな贈物を受けながら、ついに恩神に従わなかったか、背いたかしたことは事実にちがいなかった。
腹立ち紛れにアポローン神は一度遣った贈物を取り返そうとした。しかし人間にそれは許されても、神々に対しては一度授けたものを取り返すことは許容されなかった。それは神格を毀す振舞いとされた。そこでアポローンは彼女に授けた予言の力が無効になるよう、如何程真実な予言であっても人からそれが信じられないようにしてしまった。御神にはこの権限は許されていた。この時からして、Cassandraはこの上ない悲劇的な運命を負わされることになった。彼女は祖国の危難に対してParis(パリス)の生まれるとき予言し、また例の木馬がイーリオス城内に引き入れられようと言う際にも制止しようとした。しかし誰一人として彼女の戒めに耳を貸そうというものは無かったのである。
そして遂にイーリオス城は落城した。雪崩のように乱入するギリシア軍に城中は蹂躙(じゅうりん)され火は放たれ財物は奪われた。彼女はアテーナー神殿に逃げ込み、神像に縋って助けを求めたが、ついにロクリスのAias(アイアース)のために陵辱を受けた(この非行のためAiasは女神から震怒を蒙り、海上で溺れ死ぬことになる)。それから後も捕えられてギリシア軍の陣中に曳かれ、戦功褒章の折総帥Agamemnon(アガメムノーン)の手に渡った。アポローン神さえ拒んだ誇らかな王女が今は婢妾(ひしょう)としてアカイア人の臥床を調えねばならないとは。そして帰国と共に追うとひとしく王妃Klytaimnestra(クリュタイムネーストラー)の陰謀に係り、敢え無い最後を遂げるのである。
ギリシア神話:アポローンの愛を拒絶したカッサンドラー
腹立ち紛れにアポローン神は一度遣った贈物を取り返そうとした。しかし人間にそれは許されても、神々に対しては一度授けたものを取り返すことは許容されなかった。それは神格を毀す振舞いとされた。そこでアポローンは彼女に授けた予言の力が無効になるよう、如何程真実な予言であっても人からそれが信じられないようにしてしまった。御神にはこの権限は許されていた。この時からして、Cassandraはこの上ない悲劇的な運命を負わされることになった。彼女は祖国の危難に対してParis(パリス)の生まれるとき予言し、また例の木馬がイーリオス城内に引き入れられようと言う際にも制止しようとした。しかし誰一人として彼女の戒めに耳を貸そうというものは無かったのである。
今朝のウェブニュース(少々長いがいずれもロイター)から。
12日にハワイで日米外相会談、普天間移設問題も協議=米国務省 ―― [ワシントン 7日 ロイター] クリントン米国務長官と岡田克也外相は12日にハワイで会談する。米軍普天間基地の移設問題についても協議する見込み。国務省のクローリー次官補(広報担当)が7日明らかにした。/同次官補は「普天間(基地)問題が取り上げられても驚かない」と語った。その上で、アフガニスタン情勢など安全保障に関する他の問題も協議する公算が大きいと述べた。/国務省によると、クリントン長官はオーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニア歴訪の際にハワイに立ち寄る。(2010年 01月 8日 05:04 JST )
菅直人副総理兼財務・経済財政担当相の就任会見の一問一答 ―― [東京 7日 ロイター] 菅直人副総理兼財務・経済財政担当相は7日午後、財務相就任を受けて記者会見を行った。/会見の一問一答は以下のとおり。
──就任のあいさつとして。
「大臣は役所の代表ではなく、国民が役所に送り込んだ国民の代表だ。その役目として大臣に就任した。副総理の役割もあり、内閣全体についても総理を支える立場で十分に目配りしなくてはならない」 「財務省について一、二点、推し進めたいことがある。一つは、予算執行についての透明化だ。歳出、つまり予算執行の中身を国民に公開し、国民のためになっているか判断できるような運営、支出の管理を実行していきたい」「民主党マニフェストの中では、207兆円の一般・特別会計を含む総予算を全面的に見直すとなっているが、まだこの3カ月半では着手したという段階に留まっている。あらゆる特別会計、独立行政法人、公益法人について、主に行政刷新会議が担当することになると思うが、多くの関わりを持つ財務省の立場で、この問題にしっかり取り組んでいきたい」「経済財政担当は継続するよう総理から話があった。日本を元気にしていく前向きの事については、経済財政の観点から明るい未来を展望するような、すでに成長戦略の基本方針を打ち出しており、そういうものへの肉付けも含めて取り組んでいきたい。財務省の仕事は現実社会での仕事が多い。現実の中に埋もれることがないよう、坂の上の雲を目指して歩めるような方向性を、経済財政担当という立場の中でも合わせてまとめていきたい」
──予算執行の透明化について話があったが、厳しい財政の再建について。消費税、環境税、いわゆる埋蔵金の活用をどう考えるか。
「今日の財政状況となった原因をしっかり押さえなければならない。12月30日に発表した成長戦略をしっかり推し進めることが第一になければならない。環境、健康、アジア、地域・観光、科学技術、雇用と6本の柱になっているが、基本的には需要拡大でいろいろな政策を展開するのが、財政再建の基本的な道筋だ」「税制については207兆円の国の総予算を徹底的に見直す作業が始まったばかり。その中から無駄なもの、必要のない制度、あるいは間違った制度を変えていく。その上で、ある時期には消費税といった議論も必要になるかと思うが、少なくとも増税から入っていくのではなくて、まずは、今までの財政のあり方を徹底的に洗い出すところから入っていくべきだと思っている。環境税については、税制調査会あるいは省庁間をまたぐ議論をすることになると認識している」「かつて埋蔵金は一切ないと言っていた自民党の政治家も、かなり埋蔵金を使った。私たちが組んだ予算の中でも、いわゆる埋蔵金をかなり掘り出して予算に計上した。もちろん埋蔵金は無限にある訳ではなく、まだ使えるもの、使っても良いものについては精査していきたいが、基本的には、埋蔵金は無限にある訳ではないとの認識を持ちながら、207兆円の色々な見直しをしっかりと、全ての省庁の大臣、副大臣、政務官が先頭になってやって頂くよう努力していきたい」
──財政面について。
「昨年の段階で、今年の5、6月ごろに複数年度予算も含めて中期財政フレームを出すと申し上げてきた。内閣としては、すでに閣議決定している方針に沿って出していく。納税番号はマニフェストにも盛り込まれている課題であり、国家戦略室が中心になるとしても、財務省にも関わりの深い課題であり、協力して取り組んでいく」
──為替についてうかがいたい。前任の藤井氏は、自国の通貨が強いことは好ましいとの考えだったが、菅財務相は円が強いことについて、どのように考えているか。
「為替については、そういう質問にあまりうかつに答えると、とんでもないことになることを私もよく知っているので、本当なら答えない方がいいと思うが、少なくてもこの間、私が経済財政担当相として取り組んできた事で言えば、ある時期、円が非常に高くなって、経済界からすれば(1ドル)90円台、できれば半ばあたりが貿易の関係で適切ではないかとの見方が多い。まさに為替が日本経済に与えるいろいろな影響を考えながら、適切な水準になるように、日銀との連携も含めて、対応して努力しなければならない。現状は比較的、一時のドバイ・ショックのころと比べれば円安の方向にかなり是正されているので、もう少し、是正が進めばいいなと、円安の方向に進めばいいなと思っている」
──どのように脱官僚を成し遂げていくのか。
「鳩山総理が少し言葉を継ぎ足して脱官僚依存、という表現をしている。私もそういうスタンスだ。3カ月あまりの、この内閣の中で、行き過ぎた官僚依存は相当程度変わったと思っている」
──207兆円の予算の組み替えについて、特別会計や公益法人、独立行政法人の改革の具体的イメージや財源ねん出は。
「行政刷新会議が中心にやる課題だと思っている。実は昨日昼間、まだ財務相に任じられるのが分かる前に、仙谷大臣を含めて数人で相談しており、各省庁の3役に管轄分野での特別会計等を精査するよう、早ければ次の閣議の閣僚懇談会の中で多少、資料を含めて提示しようと話をしていた」
──過去最大規模に膨らんだ予算や他閣僚に関して。
「史上最高規模の予算になったこと自体は、リーマンショック以来の日本経済をみる中で、いろいろ私と、例えば亀井大臣(亀井静香郵政・金融担当相)で議論があったと見られているが、私自身も、今緊縮財政にしていいと一度として思っていなかったし、そういう主張はしてこなかった。ある程度、景気刺激的な財政で、来年度予算を組むべきと、私を含め多くの内閣メンバーが考えていた。額が大きいから良いと悪いという人の両方あるが、ある程度、この経済情勢の中では景気刺激的な意味を持つ予算であることは、ある意味当然のことだと思う。中身はコンクリートから人へという基本方針を明確に打ち出した予算になっている。約44兆円の国債発行は藤井前財務相も強く主張され、それはぎりぎり守られて、マーケットから信認も何とか得られた」
──今回の予算編成での政治主導は果たせたのか、その評価は。
「国家戦略担当の立場で予算編成にかなり深く関わってみたが、国家戦略室が財務省主計局の代わりに査定するならば、代わりに主計局の人間を全部持ってくるしかない。財務省主計局がそういう仕事をすることが、財務省依存とか財務省支配とかいう見方はしていない。移したからといって、今度は国家戦略局官僚依存になってしまい結局は同じこと」「非常に今回の予算では政治主導が貫かれた」
──今後の省運営を考える中で、菅財務相の判断で幹部人事を動かす考えはあるか。
「一般的に言って憲法15条には、公務員を選任または罷免する権利は国民固有の権利であると書かれている。ある意味で政治家もそうだが、一般公務員も含めて選ぶ・辞めさせる権利は国民にある。省庁の官僚人事については、各省庁の大臣が国民固有の権限を預かっている。ですから、やるべき時には人事権を行使するのは当然のことだと思っている」
──日本航空(9205.T: 株価, ニュース, レポート)の再建問題に、どのような方向性で取り組んでいくのか。
「基本的にこれまでと同じでよいと思っている。まずは再生支援機構に、日本航空と、最終的には日本航空に融資をしているいくつかの主な銀行が支援要請をすると。すでに日本航空は要請している訳だが。その支援要請に対して、支援機構が支援をするしないを決める段階で、どのような再生がありうるかを提案するという形になってくるとみられている。私の立場からすると、支援機構が支援をすることになるとすれば、支援機構の考え方、日本航空に多額の融資をしている多くの金融機関の考え方、日本航空自身の考え方、さらには運航の行政的責任を持つ国交省の考え方、こういうものの中からしっかりした合意を形成して、関係者が協力して再生に取り組めるという全体の状況を生み出すため、政権としての支援をしていく。中身そのものを直接こういうやり方がいい、あれはだめだとか、そういう立場ではない」
──2011年度予算の概算要求、マニフェスト関係の予算確保について。
「かなり気が早いね。やっと来年度予算の審議が始まるかどうかで、次の予算の概算要求の時期までは考えていません。一般的に参議院選挙は7月中の可能性が高いとすれば、それ以前にしなければならない理由は現時点では必ずしも思い当たらない」
──景気の二番底懸念があるが、補正の可能性について。
「ほんと気が早いね。この国会が一応18日ということになりそうだが、開かれれば、まず2次補正を出して成立させ、それから来年度予算の審議に入っていく。その中身を含めて、金融政策の連動も含めて、何とか二番底という状態は回避したい、そうならないようにしたいという考えの下に2つの予算を作っている。その先に、さらにそういう時どうするかは、仮定の仮定が重なっており、申し上げる段階にはない」
──鳩山首相からの指示はどのようなものか。国際会議日程で2月と4月にG7があるが大臣自身が出席するのか。
「首相からは是非よろしくとの短い言葉があった。私にとっては十分気持ちが分かった」「2月初めにG7が予定されていると聞いているが、まだ準備まで行っていない。一般的には財務相が出ていたケースが多いと思うので、過去のケースや会議の重要性をよく精査する中で、必要であれば、もちろん私自身出かけたい。国会日程との関係もあり確定的なことは…」(2010年 01月 7日 18:47 JST)
菅財務相が就任記者会見:識者はこうみる ―― [東京 7日 ロイター] 菅直人副総理兼財務・経済財政担当相は7日午後、財務相就任を受けて記者会見し、一般会計と特別会計を合わせた総予算の見直しに積極的に取り組むとともに、財政再建には需要拡大に向けた政策展開が基本的な道筋になるとの見解を示した。/また、為替政策に関して、為替相場が適切な水準になるように日銀と連携して取り組むとし、現在の為替水準について「ドバイ・ショックのころに比べて円安だが、もう少し円安方向に進めばいい」と語った。/同記者会見での発言内容に関する識者の見方は以下の通り。
●為替水準の言及に違和感<みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト 上野泰也氏>
産業界を引き合いに出しているとはいえ、為替水準に明確に言及していることには違和感がある。一方、特別会計や公益法人を含めた207兆円の総予算見直しに関しては、2011年度予算編成をにらんだ埋蔵金の積み増しが視野にあってのことではないか。消費税率は4年間上げない方針を打ち出しており、どこかで「つじつま合わせ」が必要になる。中期的な財政健全化も念頭にありそうだ。/焦点になるのは、外為特会のストックの埋蔵金だ。為替が円安になれば比較的、含み損のレベルが低くなり、使いやすくなる。/政府・日銀間で軋轢(あつれき)が生じる可能性は小さい。昨年12月の追加緩和が円安・株高につながったことに対し、菅氏は高い評価を繰り返し表明している。日銀が導入した固定金利の新オペをめぐっては、為替対策が必要な際、期間を延ばしたり金額を増やしたりと柔軟な対応が可能だ。国債買いきりの増額論議は、浮上しにくいのではないか。
●日本経済の現状踏まえた意思表明<三菱東京UFJ銀行 チーフアナリスト 高島修氏>
日本経済の現状を考えれば、菅財務相がもう少し円安方向に進めばいいとの意思表明をしたことは評価できる。ただ、為替介入については、国際関係を考えれば実施しにくい環境にあることも事実だ。/現在は、米雇用統計や1月の米連邦公開市場委員会(FOMC)をにらんでドル高・円安に振れやすい局面。この地合いに沿った発言だったことでインパクトを持った。今の流れのなかでは、ドル・円は94~95円程度まで円安に振れてもおかしくない。
●ソブリン・リスク意識して円売り<草野グローバルフロンティア代表取締役 草野豊己氏>
菅財務相の発言で円が売られた背景は「緊縮財政にしていいとは一度も思ったことはない」とのコメントだ。ヘッジファンド業界の今年のテーマはソブリン・リスク。海外投資家の間でも、ブラックロック(BLK.N: 株価, 企業情報, レポート)やベアリング・アセット・マネジメントなど、政府債務の増大や中央銀行の政策が景気回復を頓挫させかねないとの見方から、米国債や英国債の保有を減らす動きが出てきている。/そうしたなか、政府債務が主要国の中でも突出している日本の財務相が財政拡張政策を意識させる発言をすれば、本格的な日本国債売り・円売りを誘発しかねない。海外勢は、自民党から民主党への政権交代を受けて日本の改革への期待を高めていたが、これも剥落しつつある。/「もう少し円安方向に進めばいい」などの発言で為替介入が頭をよぎった向きもあろうが、今の水準で介入はあり得ない。」 (2010年 01月 7日 18:35 JST)
菅直人副総理兼財務・経済財政担当相の就任会見の一問一答 ―― [東京 7日 ロイター] 菅直人副総理兼財務・経済財政担当相は7日午後、財務相就任を受けて記者会見を行った。/会見の一問一答は以下のとおり。
──就任のあいさつとして。
「大臣は役所の代表ではなく、国民が役所に送り込んだ国民の代表だ。その役目として大臣に就任した。副総理の役割もあり、内閣全体についても総理を支える立場で十分に目配りしなくてはならない」 「財務省について一、二点、推し進めたいことがある。一つは、予算執行についての透明化だ。歳出、つまり予算執行の中身を国民に公開し、国民のためになっているか判断できるような運営、支出の管理を実行していきたい」「民主党マニフェストの中では、207兆円の一般・特別会計を含む総予算を全面的に見直すとなっているが、まだこの3カ月半では着手したという段階に留まっている。あらゆる特別会計、独立行政法人、公益法人について、主に行政刷新会議が担当することになると思うが、多くの関わりを持つ財務省の立場で、この問題にしっかり取り組んでいきたい」「経済財政担当は継続するよう総理から話があった。日本を元気にしていく前向きの事については、経済財政の観点から明るい未来を展望するような、すでに成長戦略の基本方針を打ち出しており、そういうものへの肉付けも含めて取り組んでいきたい。財務省の仕事は現実社会での仕事が多い。現実の中に埋もれることがないよう、坂の上の雲を目指して歩めるような方向性を、経済財政担当という立場の中でも合わせてまとめていきたい」
──予算執行の透明化について話があったが、厳しい財政の再建について。消費税、環境税、いわゆる埋蔵金の活用をどう考えるか。
「今日の財政状況となった原因をしっかり押さえなければならない。12月30日に発表した成長戦略をしっかり推し進めることが第一になければならない。環境、健康、アジア、地域・観光、科学技術、雇用と6本の柱になっているが、基本的には需要拡大でいろいろな政策を展開するのが、財政再建の基本的な道筋だ」「税制については207兆円の国の総予算を徹底的に見直す作業が始まったばかり。その中から無駄なもの、必要のない制度、あるいは間違った制度を変えていく。その上で、ある時期には消費税といった議論も必要になるかと思うが、少なくとも増税から入っていくのではなくて、まずは、今までの財政のあり方を徹底的に洗い出すところから入っていくべきだと思っている。環境税については、税制調査会あるいは省庁間をまたぐ議論をすることになると認識している」「かつて埋蔵金は一切ないと言っていた自民党の政治家も、かなり埋蔵金を使った。私たちが組んだ予算の中でも、いわゆる埋蔵金をかなり掘り出して予算に計上した。もちろん埋蔵金は無限にある訳ではなく、まだ使えるもの、使っても良いものについては精査していきたいが、基本的には、埋蔵金は無限にある訳ではないとの認識を持ちながら、207兆円の色々な見直しをしっかりと、全ての省庁の大臣、副大臣、政務官が先頭になってやって頂くよう努力していきたい」
──財政面について。
「昨年の段階で、今年の5、6月ごろに複数年度予算も含めて中期財政フレームを出すと申し上げてきた。内閣としては、すでに閣議決定している方針に沿って出していく。納税番号はマニフェストにも盛り込まれている課題であり、国家戦略室が中心になるとしても、財務省にも関わりの深い課題であり、協力して取り組んでいく」
──為替についてうかがいたい。前任の藤井氏は、自国の通貨が強いことは好ましいとの考えだったが、菅財務相は円が強いことについて、どのように考えているか。
「為替については、そういう質問にあまりうかつに答えると、とんでもないことになることを私もよく知っているので、本当なら答えない方がいいと思うが、少なくてもこの間、私が経済財政担当相として取り組んできた事で言えば、ある時期、円が非常に高くなって、経済界からすれば(1ドル)90円台、できれば半ばあたりが貿易の関係で適切ではないかとの見方が多い。まさに為替が日本経済に与えるいろいろな影響を考えながら、適切な水準になるように、日銀との連携も含めて、対応して努力しなければならない。現状は比較的、一時のドバイ・ショックのころと比べれば円安の方向にかなり是正されているので、もう少し、是正が進めばいいなと、円安の方向に進めばいいなと思っている」
──どのように脱官僚を成し遂げていくのか。
「鳩山総理が少し言葉を継ぎ足して脱官僚依存、という表現をしている。私もそういうスタンスだ。3カ月あまりの、この内閣の中で、行き過ぎた官僚依存は相当程度変わったと思っている」
──207兆円の予算の組み替えについて、特別会計や公益法人、独立行政法人の改革の具体的イメージや財源ねん出は。
「行政刷新会議が中心にやる課題だと思っている。実は昨日昼間、まだ財務相に任じられるのが分かる前に、仙谷大臣を含めて数人で相談しており、各省庁の3役に管轄分野での特別会計等を精査するよう、早ければ次の閣議の閣僚懇談会の中で多少、資料を含めて提示しようと話をしていた」
──過去最大規模に膨らんだ予算や他閣僚に関して。
「史上最高規模の予算になったこと自体は、リーマンショック以来の日本経済をみる中で、いろいろ私と、例えば亀井大臣(亀井静香郵政・金融担当相)で議論があったと見られているが、私自身も、今緊縮財政にしていいと一度として思っていなかったし、そういう主張はしてこなかった。ある程度、景気刺激的な財政で、来年度予算を組むべきと、私を含め多くの内閣メンバーが考えていた。額が大きいから良いと悪いという人の両方あるが、ある程度、この経済情勢の中では景気刺激的な意味を持つ予算であることは、ある意味当然のことだと思う。中身はコンクリートから人へという基本方針を明確に打ち出した予算になっている。約44兆円の国債発行は藤井前財務相も強く主張され、それはぎりぎり守られて、マーケットから信認も何とか得られた」
──今回の予算編成での政治主導は果たせたのか、その評価は。
「国家戦略担当の立場で予算編成にかなり深く関わってみたが、国家戦略室が財務省主計局の代わりに査定するならば、代わりに主計局の人間を全部持ってくるしかない。財務省主計局がそういう仕事をすることが、財務省依存とか財務省支配とかいう見方はしていない。移したからといって、今度は国家戦略局官僚依存になってしまい結局は同じこと」「非常に今回の予算では政治主導が貫かれた」
──今後の省運営を考える中で、菅財務相の判断で幹部人事を動かす考えはあるか。
「一般的に言って憲法15条には、公務員を選任または罷免する権利は国民固有の権利であると書かれている。ある意味で政治家もそうだが、一般公務員も含めて選ぶ・辞めさせる権利は国民にある。省庁の官僚人事については、各省庁の大臣が国民固有の権限を預かっている。ですから、やるべき時には人事権を行使するのは当然のことだと思っている」
──日本航空(9205.T: 株価, ニュース, レポート)の再建問題に、どのような方向性で取り組んでいくのか。
「基本的にこれまでと同じでよいと思っている。まずは再生支援機構に、日本航空と、最終的には日本航空に融資をしているいくつかの主な銀行が支援要請をすると。すでに日本航空は要請している訳だが。その支援要請に対して、支援機構が支援をするしないを決める段階で、どのような再生がありうるかを提案するという形になってくるとみられている。私の立場からすると、支援機構が支援をすることになるとすれば、支援機構の考え方、日本航空に多額の融資をしている多くの金融機関の考え方、日本航空自身の考え方、さらには運航の行政的責任を持つ国交省の考え方、こういうものの中からしっかりした合意を形成して、関係者が協力して再生に取り組めるという全体の状況を生み出すため、政権としての支援をしていく。中身そのものを直接こういうやり方がいい、あれはだめだとか、そういう立場ではない」
──2011年度予算の概算要求、マニフェスト関係の予算確保について。
「かなり気が早いね。やっと来年度予算の審議が始まるかどうかで、次の予算の概算要求の時期までは考えていません。一般的に参議院選挙は7月中の可能性が高いとすれば、それ以前にしなければならない理由は現時点では必ずしも思い当たらない」
──景気の二番底懸念があるが、補正の可能性について。
「ほんと気が早いね。この国会が一応18日ということになりそうだが、開かれれば、まず2次補正を出して成立させ、それから来年度予算の審議に入っていく。その中身を含めて、金融政策の連動も含めて、何とか二番底という状態は回避したい、そうならないようにしたいという考えの下に2つの予算を作っている。その先に、さらにそういう時どうするかは、仮定の仮定が重なっており、申し上げる段階にはない」
──鳩山首相からの指示はどのようなものか。国際会議日程で2月と4月にG7があるが大臣自身が出席するのか。
「首相からは是非よろしくとの短い言葉があった。私にとっては十分気持ちが分かった」「2月初めにG7が予定されていると聞いているが、まだ準備まで行っていない。一般的には財務相が出ていたケースが多いと思うので、過去のケースや会議の重要性をよく精査する中で、必要であれば、もちろん私自身出かけたい。国会日程との関係もあり確定的なことは…」(2010年 01月 7日 18:47 JST)
●為替水準の言及に違和感<みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト 上野泰也氏>
産業界を引き合いに出しているとはいえ、為替水準に明確に言及していることには違和感がある。一方、特別会計や公益法人を含めた207兆円の総予算見直しに関しては、2011年度予算編成をにらんだ埋蔵金の積み増しが視野にあってのことではないか。消費税率は4年間上げない方針を打ち出しており、どこかで「つじつま合わせ」が必要になる。中期的な財政健全化も念頭にありそうだ。/焦点になるのは、外為特会のストックの埋蔵金だ。為替が円安になれば比較的、含み損のレベルが低くなり、使いやすくなる。/政府・日銀間で軋轢(あつれき)が生じる可能性は小さい。昨年12月の追加緩和が円安・株高につながったことに対し、菅氏は高い評価を繰り返し表明している。日銀が導入した固定金利の新オペをめぐっては、為替対策が必要な際、期間を延ばしたり金額を増やしたりと柔軟な対応が可能だ。国債買いきりの増額論議は、浮上しにくいのではないか。
●日本経済の現状踏まえた意思表明<三菱東京UFJ銀行 チーフアナリスト 高島修氏>
日本経済の現状を考えれば、菅財務相がもう少し円安方向に進めばいいとの意思表明をしたことは評価できる。ただ、為替介入については、国際関係を考えれば実施しにくい環境にあることも事実だ。/現在は、米雇用統計や1月の米連邦公開市場委員会(FOMC)をにらんでドル高・円安に振れやすい局面。この地合いに沿った発言だったことでインパクトを持った。今の流れのなかでは、ドル・円は94~95円程度まで円安に振れてもおかしくない。
●ソブリン・リスク意識して円売り<草野グローバルフロンティア代表取締役 草野豊己氏>
菅財務相の発言で円が売られた背景は「緊縮財政にしていいとは一度も思ったことはない」とのコメントだ。ヘッジファンド業界の今年のテーマはソブリン・リスク。海外投資家の間でも、ブラックロック(BLK.N: 株価, 企業情報, レポート)やベアリング・アセット・マネジメントなど、政府債務の増大や中央銀行の政策が景気回復を頓挫させかねないとの見方から、米国債や英国債の保有を減らす動きが出てきている。/そうしたなか、政府債務が主要国の中でも突出している日本の財務相が財政拡張政策を意識させる発言をすれば、本格的な日本国債売り・円売りを誘発しかねない。海外勢は、自民党から民主党への政権交代を受けて日本の改革への期待を高めていたが、これも剥落しつつある。/「もう少し円安方向に進めばいい」などの発言で為替介入が頭をよぎった向きもあろうが、今の水準で介入はあり得ない。」 (2010年 01月 7日 18:35 JST)
今朝のウェブニュースから2つ。
菅氏の財務相起用 不安を口にする霞が関 ―― 藤井裕久財務相の後任に菅直人副総理が就任することが6日決まり、東京・霞が関の官庁街では、通常国会への対応が迫っている時期だけに、官僚と対峙(たいじ)してきた菅氏への不安を口にする官僚も目立った。/「菅氏の就任で財務省の力は弱まるのではないか」と、菅氏の姿勢を警戒する官僚は少なくない。一方で「(菅氏でも)ある程度のばらまき予算を認めざるを得ない立場になる。閣内で明快に厳しい意見を言えず、存在感が弱まるのでは」(総務省幹部)とし、影響力の低下を懸念する声も。農林水産省の課長は「評価に関しては何も言えない」と素っ気ない反応。国家戦略担当相の菅氏を支えてきた内閣府のある幹部は「報道以上のことは分からない」と繰り返した。(産経ニュース、2010.1.6 21:58)
「菅財務相は予算委で攻めやすい」 加藤元自民幹事長 ―― 衆院予算委員会で自民党理事を務める加藤紘一元幹事長は6日夜、民放BS番組に出演し、藤井裕久財務相の後任に菅直人副総理が決まったことについて「すぐカッとなる方なので攻めやすい」と述べ、就任を“歓迎”する意向を示した。/加藤氏は「財務相内定後の菅氏の表情は硬く、あまりやりたくなかったのでないか。何かあったのかとすら思う」と指摘。「事業仕分けなどで平成22年度予算案の厳しさを知る仙谷由人行政刷新担当相が最適任者と思っていたが、菅氏は予算案の構図にかかわっておらず攻めやすい」と述べた。(産経ニュース、2010.1.6 23:29)
ギリシア神話:勇敢なる少女キュレーネー
Kyrene(キュレーネー)はテッサリアの河ペーネイオスの河神の息子Hypseus(ヒュプセウス)の娘であった。彼女は単に容姿が優れていたばかりでなく、男勝りの闊達さでいつも身軽な装いで美しい肌を惜しげもなく風になぶらせ、野山を馳せ回ってただ狩猟にのみ身を打ち込んでいた。アポローンが初めて彼女を見かけたのは、丁度彼女が単身武器をも持たず、獅子と組討していたところのことであった。銀弓の御神はこの様子を見て吃驚されると同時に、その大胆さ向こう見ずさに心を動かされた。ともかくこの美しい、かつ勇敢な少女に激しい愛情を覚え給うたアポローン神は、まず獅子を容易く眠らせてから、彼女を自らの黄金の馬車に乗せ、ペリーオンの山から遥かに空を馳せて、地中海を越える南のアフリカはリビアまで運んで行かれた。

そこで彼女はAristaios(アリスタイオス)の母になった。このAristaiosは恐らくこの地方の古くからある土地神で、農牧の神として知られ、土民に養蜂やオリーブ樹の栽培、狩猟の方法等を教えたと言い伝えられる。Kyreneが運ばれて行ったのは、アフリカはリビアのキュレーネ市であって、後にキュレナイカ地方の首都として栄えた町である。さすれば、この伝説もこの都市の縁起としてその縁故の人々によって形づくられたものであろう。Aristaiosは土地の伝説にあった農神が、人類に光りを与えるアポローンの子として、ギリシア名をつけたられたものであろう。
菅氏の財務相起用 不安を口にする霞が関 ―― 藤井裕久財務相の後任に菅直人副総理が就任することが6日決まり、東京・霞が関の官庁街では、通常国会への対応が迫っている時期だけに、官僚と対峙(たいじ)してきた菅氏への不安を口にする官僚も目立った。/「菅氏の就任で財務省の力は弱まるのではないか」と、菅氏の姿勢を警戒する官僚は少なくない。一方で「(菅氏でも)ある程度のばらまき予算を認めざるを得ない立場になる。閣内で明快に厳しい意見を言えず、存在感が弱まるのでは」(総務省幹部)とし、影響力の低下を懸念する声も。農林水産省の課長は「評価に関しては何も言えない」と素っ気ない反応。国家戦略担当相の菅氏を支えてきた内閣府のある幹部は「報道以上のことは分からない」と繰り返した。(産経ニュース、2010.1.6 21:58)
ギリシア神話:勇敢なる少女キュレーネー
Kyrene(キュレーネー)はテッサリアの河ペーネイオスの河神の息子Hypseus(ヒュプセウス)の娘であった。彼女は単に容姿が優れていたばかりでなく、男勝りの闊達さでいつも身軽な装いで美しい肌を惜しげもなく風になぶらせ、野山を馳せ回ってただ狩猟にのみ身を打ち込んでいた。アポローンが初めて彼女を見かけたのは、丁度彼女が単身武器をも持たず、獅子と組討していたところのことであった。銀弓の御神はこの様子を見て吃驚されると同時に、その大胆さ向こう見ずさに心を動かされた。ともかくこの美しい、かつ勇敢な少女に激しい愛情を覚え給うたアポローン神は、まず獅子を容易く眠らせてから、彼女を自らの黄金の馬車に乗せ、ペリーオンの山から遥かに空を馳せて、地中海を越える南のアフリカはリビアまで運んで行かれた。
今朝のウェブニュースから2つ。
東京地検、小沢氏に近く出頭要請 「陸山会」土地購入疑惑で聴取へ ―― 民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」が平成16年に購入した土地をめぐる疑惑で、東京地検特捜部が小沢氏から任意で事情聴取する方針を固めたことが5日、関係者への取材で分かった。近く聴取に応じるよう要請する。/小沢氏は疑惑に関する告発の対象になっていない。しかし、小沢氏が土地取引をめぐる陸山会と関連政治団体間の複雑な資金移動に関与した疑いが強いことから、疑惑の全容解明には小沢氏本人の事情聴取が不可欠と判断したもようだ。/特捜部は通常国会が18日召集予定となったことを踏まえ、来週中にも陸山会の会計責任者だった民主党の石川知裕衆院議員(36)=北海道11区=に対する政治資金規正法違反容疑での処分内容を最終判断する方針だが、その前に小沢氏に出頭を求め、土地取引の経緯や不記載の認識などについて説明を求めるとみられる。政権与党の幹事長が捜査機関から事情聴取を受けるのは極めて異例。/関係者によると、陸山会は16年10月、東京都世田谷区の土地を約3億4千万円で購入。複数の関連政治団体を経由するなどして、土地購入の直前に現金約4億円が陸山会に入り、直後にも約1億8千万円が入金された。取引直後には4億円の定期預金が組まれ、小沢氏名義で4億円を借り入れていた。/石川氏は特捜部の任意聴取に「小沢先生の指示で土地を購入した。運転資金が足りなくなり、小沢先生に相談して個人資金約4億円を貸付金として受け取り、土地代金に充てた」と供述したが、この資金を含む約5億8千万円は収支報告書に記載されていない。石川氏は不記載を認め、「ずさんだった」としている。/また、翌17年3月にも別の4億円が陸山会などの口座に入金され、5月に引き出されていたほか、19年には陸山会が小沢氏に4億円を借入金返済名目で支出していたとされる。いずれも収支報告書に記載はなく、不記載の総額は10億円以上に上る可能性もある。/特捜部は小沢氏本人しか分からない資金の移動が不記載となっていることなどから、事情聴取が不可欠と判断したもようだ。 (産経ニュース、2010.1.6 02:00)
藤井氏辞任で政権に痛手 背景に小沢氏との確執、「政治とカネ」も? ―― 18日召集予定の通常国会を控え、鳩山由紀夫首相の大きな後ろ盾となってきた藤井裕久財務相が辞意を固めたことは、政権に大きな痛手となった。後任人事をめぐり、政府・民主党ではすでに熾烈な綱引きが始まっており、これが政局の序章となる可能性もある。/「藤井さんは大丈夫ですか? 次を用意した方がいいんじゃないですか」/民主党の山岡賢次国対委員長は4日、党本部で首相にこう詰め寄った。/首相が最優先課題に掲げる平成21年度第2次補正予算案と22年度予算案の審議では財務相が最前線に立たされる。後任には即戦力を求められるが、首相は「どうなんですかねえ…」と曖昧に答えるだけだった。/首相は昨夏、政界引退を表明していた藤井氏を必死に説得し、衆院選で比例代表の名簿に登載した。財務相起用には民主党の小沢一郎幹事長が難色を示したが、これも押し切った。いかに首相が藤井氏に絶大な信頼を置いていたかの証左といえる。/にもかからわず、唐突な辞意は腑に落ちない。藤井氏は「健康上の理由」の一点張りだが、小沢氏との確執を指摘する声もある。/小沢、藤井両氏はかつて盟友だったが、次第に疎遠となり、昨年12月の22年度予算編成をめぐり、対立は表面化した。/藤井氏は子ども手当への所得制限導入や診療報酬引き上げ反対を主張したが、小沢氏は次々に覆し、12月16日の民主党の重点要望の際には「財務省は予算編成を『急げ、急げ』と言っているが、国民の声をちゃんと聞いてやってくれ!」と藤井氏を面罵した。この件を機に藤井氏は財務相を続けることに嫌気が差したといわれている。/もう一つ、辞意を固めた理由として「政治とカネ」問題も取りざたされる。/藤井氏は旧自由党で小沢党首の下、幹事長を務め、平成14年に政党助成金など党費から組織活動費として約15億2千万円が藤井氏あてに支出されたことが明らかになっている。/この件について、藤井氏は複数の議員に「おれ、あれ知らないんだよなあ」と漏らしているが、自民党は通常国会でこの問題を徹底追及する構えを見せており、藤井氏が矢面に立たされる公算は大きかった。/首相が藤井氏の慰留をあきらめても後任人事は難航が予想される。/即戦力として仙谷由人行政刷新担当相、野田佳彦財務副大臣の名が挙がるが、両氏は小沢氏と距離があり、無理に起用すれば首相と小沢氏の関係にヒビが入る可能性がある。菅直人副総理・国家戦略担当相の起用も有力視されるが、菅氏にあまりに権限が集中するとの見方もある。ピンチヒッターとして峰崎直樹財務副大臣の起用も取りざたされている。/「あれは検査入院じゃないだろ?」/藤井氏が入院した翌日の12月29日夜、小沢氏は与党幹部との懇談会の席上で冷ややかにこう言い放ったという。こういう事態になることを予測していたのかも知れない。 (産経ニュース、2010.1.6 00:02)
ギリシア神話:神よりも人間を伴侶に選んだマルペーッサ
Marpessa(マルペーッサ)は武神Arēs(アレース)の息子と言われるエウエーノスの娘で、夫と聞こえたIdas(イーダース)は「地のうえにある武士(もののふ)のうち、とりわけていと力の勝れた者で、さても美しい踝の若妻ゆえ、ボイボス・アポローンのみことに向かい弓矢を執った」と記され、この伝説の由緒が極めて古いことを想像させる。
Idasはアパレウスの子であるが、母アレーネーがポセイドーンによって生んだといわれ、ポセイドーン神から翼の付いた戦車を与えられていた。ところで、Marpessaには早くからアポローン神が思いをかけ、しばしば言い寄っていたのを、Idasが一図にはやる恋心から父親の許しも得ずに、我武者羅にかの戦車に載せて奪っていったのである。父親のエウエーノスは固より烈火のごとく憤って、自ら馬を駆り後を追ったが、神車には到底敵(かな)いえなかったので、その頃はリュコルマースと呼ばれていた川の畔に着いたとき、遂に断念すると共に無念やるかたなく、馬を殺し自分もこの川に身を投げて死んだ。この川は彼に因んでエウエーノス川と呼ばれるようになったと言う。
その後、Idasはメッセーネーに赴いたが、前々からMarpessaに思いを寄せていたアポローンが今度は出かけて行った彼女を連れ去ろうとした。そこでこの二人の愛人同志は当然のことながら激しい鞘当てを演じ、あわや一大事に及ぶところを、天上より大神ゼウスが認めて仲裁に入り、もっとも合理的な方法として、Marpessa自身にどちらでも彼女の望む方を選び取らせることにした。Marpessaは思案の末に、Idasを生涯の伴侶に選んだ。その理由は、おそらく彼女が他日年老いた時不死身であるアポーロン神は自分を見棄てて、誰か若い容姿麗しい女の許へ行かれるであろう、しかし人間であるIdasは恐らく自分を愛して渝(か)わるまいというのであった。
東京地検、小沢氏に近く出頭要請 「陸山会」土地購入疑惑で聴取へ ―― 民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」が平成16年に購入した土地をめぐる疑惑で、東京地検特捜部が小沢氏から任意で事情聴取する方針を固めたことが5日、関係者への取材で分かった。近く聴取に応じるよう要請する。/小沢氏は疑惑に関する告発の対象になっていない。しかし、小沢氏が土地取引をめぐる陸山会と関連政治団体間の複雑な資金移動に関与した疑いが強いことから、疑惑の全容解明には小沢氏本人の事情聴取が不可欠と判断したもようだ。/特捜部は通常国会が18日召集予定となったことを踏まえ、来週中にも陸山会の会計責任者だった民主党の石川知裕衆院議員(36)=北海道11区=に対する政治資金規正法違反容疑での処分内容を最終判断する方針だが、その前に小沢氏に出頭を求め、土地取引の経緯や不記載の認識などについて説明を求めるとみられる。政権与党の幹事長が捜査機関から事情聴取を受けるのは極めて異例。/関係者によると、陸山会は16年10月、東京都世田谷区の土地を約3億4千万円で購入。複数の関連政治団体を経由するなどして、土地購入の直前に現金約4億円が陸山会に入り、直後にも約1億8千万円が入金された。取引直後には4億円の定期預金が組まれ、小沢氏名義で4億円を借り入れていた。/石川氏は特捜部の任意聴取に「小沢先生の指示で土地を購入した。運転資金が足りなくなり、小沢先生に相談して個人資金約4億円を貸付金として受け取り、土地代金に充てた」と供述したが、この資金を含む約5億8千万円は収支報告書に記載されていない。石川氏は不記載を認め、「ずさんだった」としている。/また、翌17年3月にも別の4億円が陸山会などの口座に入金され、5月に引き出されていたほか、19年には陸山会が小沢氏に4億円を借入金返済名目で支出していたとされる。いずれも収支報告書に記載はなく、不記載の総額は10億円以上に上る可能性もある。/特捜部は小沢氏本人しか分からない資金の移動が不記載となっていることなどから、事情聴取が不可欠と判断したもようだ。 (産経ニュース、2010.1.6 02:00)
ギリシア神話:神よりも人間を伴侶に選んだマルペーッサ
Marpessa(マルペーッサ)は武神Arēs(アレース)の息子と言われるエウエーノスの娘で、夫と聞こえたIdas(イーダース)は「地のうえにある武士(もののふ)のうち、とりわけていと力の勝れた者で、さても美しい踝の若妻ゆえ、ボイボス・アポローンのみことに向かい弓矢を執った」と記され、この伝説の由緒が極めて古いことを想像させる。
Idasはアパレウスの子であるが、母アレーネーがポセイドーンによって生んだといわれ、ポセイドーン神から翼の付いた戦車を与えられていた。ところで、Marpessaには早くからアポローン神が思いをかけ、しばしば言い寄っていたのを、Idasが一図にはやる恋心から父親の許しも得ずに、我武者羅にかの戦車に載せて奪っていったのである。父親のエウエーノスは固より烈火のごとく憤って、自ら馬を駆り後を追ったが、神車には到底敵(かな)いえなかったので、その頃はリュコルマースと呼ばれていた川の畔に着いたとき、遂に断念すると共に無念やるかたなく、馬を殺し自分もこの川に身を投げて死んだ。この川は彼に因んでエウエーノス川と呼ばれるようになったと言う。
ギリシア神話:ヒュアキントス
Hyakinthos(ヒュアキントス)は、Kyparissos(キュパリッソス)と同じようにギリシア神話でアポローンに愛された美少年である。アポローンとの円盤投げの遊戯中に、その跳ね返りを頭に受けて死ぬ。その際、ヒュアキントスの頭部から流れた血から、花が咲きヒヤシンスの名がついた。現在のアイリス、ラクスパ、あるいはパンジーであるとも。一説には西風の神Zephyros(ゼピュロス)もヒュアキントスを愛していたが、彼に拒絶される。ある日アポローンとHyakinthosが仲睦まじく円盤投げをしているのを見て、ゼピュロスは嫉妬に狂った。そしてアポローンの投げた鉄輪がヒュアキントスに当たるよう風を操り、それを頭に受けたヒュアキントスは死んだ。
Hyakinthosはラコーニアの首都スパルテの南の地アミュクライの生まれて、その開祖アミュクラースの子ともいわれる。秀でた眉に紅をさした豊かな頬をして元気一杯に野山を駈ける彼の姿は、とりわけ銀弓の御神の御心に叶うものだった。御神はしばしばデルボイの神殿を空しくして、信託を伺いに群れ寄れる信者たちに待ちぼうけを食わせ、はるばるアミュクライの野に降臨されるのであった。少年を誘っては町外の、柔草(にこぐさ)が緑に一面のふっくらとした畳を敷き詰める辺りに出て、運動の競技にうち興じられた。今しもティーターン太陽(ヘーリオス)神はまさしく頭上に進めていた。二人は衣を脱いで裸体となり、豊かなオリーブの油で肌を輝(てら)せながら、大き目の円盤(デイスコ)を手に、技を競い合った。春もはや過ぎようかという頃であった。Zephyros(ゼピュロス)が静かに梢を揺すっていた。この西風の神Zephyros(男神)もまた、Hyakinthosに思いを寄せる若者の一人であった。しかし、眉の匂やかな少年は、ただ一途にアポローン神を頼んで、他のもの共の言葉には一顧も与えなかった。それらは彼にとって、ただ煩わしいお節介に過ぎなかった。
アポローンの投げる番が廻って来た。よく釣り合いを取り、弾みをつけて御神はその円盤を勢いよく空中に投げた。重い円盤は風を切って飛び、ややあって投げ手投げ手の技倆(うでまえ)と力を示しながら地上に落ちかかった。勝負に熱中していたアミュクライの少年は危ないのも忘れてディスクの飛ぶほうへ走り寄って行った。疚ましげにこの様子を見ていた西風(ゼピュロス)が、ふとむらむらと燃え上がった嫉妬心から、その円盤を押し付けて方向を変えさせ、少年の額に真っ向から落ちかからせた。二人のあまりに親しげな様子と、楽しそうな語らいとが、彼の心を彼自身に反(そむ)かせこんな悪戯(わるさ)をさせてしまったのである。何故なら、彼はすでに額を割られ、朱に染まって倒れる少年を見て、言いようのない後悔と悲しみとに胸を貫かれるのだったから。ああ、何という一瞬時の性急な怒りが、おぞましい振舞いが、取り返しのつかない悔いを、我々に与えることだろう。
デルボイの御神はこの様を見るなりすぐに駆け寄って、地上に倒れ身を縮めた少年を抱き上げようとした。御神の面はさながら地にもえる若草と同じように蒼ざめていた。どのように温めてみても、恐ろしい傷に手当てをしてしゅっけつをとめても、いろいろと薬草を門でつけても、去りかける彼の生命を、引き留めることはできなかった。あらゆる方策(てだて)も尽きて、アポローンは深い吐息と共にこういうばかりだった。
「スパルテーの子よ、お前は子供らしい熱心さから死んでしまった。私はお前の傷に自分の罪を認めなければならない。お前は私の悩みの原因として何時までも留まるだろう。お前を思い出すたびに我と我が身が情けなくなる。私は自分をお前を殺した下手人として告発しなければなるまいから。だが、私の罪というのは何だろうか。もしもお前と馴れ親しんだことが罪といわれず、お前を愛したことが咎でないなら。 ああ、愛しいお前のためとあらば私の不死の命さえ断念(あきら)めたい。お前と一緒に冥府へ行けるものだったらば。だが運命によって一つに結ばれた私とお前は、いつまでも別れはしないだろう。私の唇から、お前の忘られる時はないのだ。お前は私の竪琴になろう。そして私の手によって奏でられ、私の哀歌をうたうだろう。お前は新しい花に変わって何時までも私の愛を受け、その色合いで私の嘆きを永遠になぞえることになろう。」
アポローン神が真心を篭めて言い放ったとき、傷口から地に滴り落ちて柔草(にこぐさ)を濡らしていた血が見る見る色相を変え、黒い土からテュロスの紅よりも鮮やかな花が葉を擡げた。その花は百合に似た姿をしていて、ただその花弁が純白の代わりに、濃い紫の悔いを湛えていた。しかし御神はこれでもまだ思い足りずに、自分の胸の嘆きの言葉をその花弁に刻みつけた。この時からヒヤシンスの花は花びらの上に「アイアイ」という字を誌(しる)されているのだという。その時から、スパルテーの全国では、かくも深くデルホイの御神の鍾愛を受けた少年が、自分の息子であるのを誇りとし、例年の祭りの日が来るごとに、祖先の祭りと同様いとも厳粛にこのヒュアキンティアの祭を執り行うのである。
Hyakinthosはラコーニアの首都スパルテの南の地アミュクライの生まれて、その開祖アミュクラースの子ともいわれる。秀でた眉に紅をさした豊かな頬をして元気一杯に野山を駈ける彼の姿は、とりわけ銀弓の御神の御心に叶うものだった。御神はしばしばデルボイの神殿を空しくして、信託を伺いに群れ寄れる信者たちに待ちぼうけを食わせ、はるばるアミュクライの野に降臨されるのであった。少年を誘っては町外の、柔草(にこぐさ)が緑に一面のふっくらとした畳を敷き詰める辺りに出て、運動の競技にうち興じられた。今しもティーターン太陽(ヘーリオス)神はまさしく頭上に進めていた。二人は衣を脱いで裸体となり、豊かなオリーブの油で肌を輝(てら)せながら、大き目の円盤(デイスコ)を手に、技を競い合った。春もはや過ぎようかという頃であった。Zephyros(ゼピュロス)が静かに梢を揺すっていた。この西風の神Zephyros(男神)もまた、Hyakinthosに思いを寄せる若者の一人であった。しかし、眉の匂やかな少年は、ただ一途にアポローン神を頼んで、他のもの共の言葉には一顧も与えなかった。それらは彼にとって、ただ煩わしいお節介に過ぎなかった。
デルボイの御神はこの様を見るなりすぐに駆け寄って、地上に倒れ身を縮めた少年を抱き上げようとした。御神の面はさながら地にもえる若草と同じように蒼ざめていた。どのように温めてみても、恐ろしい傷に手当てをしてしゅっけつをとめても、いろいろと薬草を門でつけても、去りかける彼の生命を、引き留めることはできなかった。あらゆる方策(てだて)も尽きて、アポローンは深い吐息と共にこういうばかりだった。
「スパルテーの子よ、お前は子供らしい熱心さから死んでしまった。私はお前の傷に自分の罪を認めなければならない。お前は私の悩みの原因として何時までも留まるだろう。お前を思い出すたびに我と我が身が情けなくなる。私は自分をお前を殺した下手人として告発しなければなるまいから。だが、私の罪というのは何だろうか。もしもお前と馴れ親しんだことが罪といわれず、お前を愛したことが咎でないなら。 ああ、愛しいお前のためとあらば私の不死の命さえ断念(あきら)めたい。お前と一緒に冥府へ行けるものだったらば。だが運命によって一つに結ばれた私とお前は、いつまでも別れはしないだろう。私の唇から、お前の忘られる時はないのだ。お前は私の竪琴になろう。そして私の手によって奏でられ、私の哀歌をうたうだろう。お前は新しい花に変わって何時までも私の愛を受け、その色合いで私の嘆きを永遠になぞえることになろう。」
ギリシア神話:糸杉になった青年
Kyparissos(キュパリッソス)は、取り分けすらりとした背丈に、伸びやかな手肢をして、理知的な広い額に真っ黒な瞳をいかにも真摯(まじめ)らしく閃(ひらめ)かせる美しい青年だった。彼はボイオーティアの豪族ミニュアース家の息子であった。彼は牧場の生活を好み、真昼間の憩いの時にはアポローンとさまざまな運動競技にうちつれて遊ぶのを常としていた。かれは生まれつき生物が好きで、自分から牧場に来るようになったのも、ひとつにはこの獣たちの世話をしたいからであった。このKyparissosには一つご自慢の飼養物がいた。それは巨(おお)きな牡鹿で、その郷の田舎の人々が恐れかしこむ女神たち、山や野を治めるニンフたちにとって神聖な獣だった。その額にはありふれた野鹿とは格段にたち優れた立派な角がいくつにも分かれて枝を飾って誇らしく拡がっていた。朝日夕日の輝くときはこの角は彼の神聖さを誇示するかのように金色に照り映えるのであった。その円やかによく肥えた頸には、宝石を鏤めた銀の首輪が嵌められていた。額には生まれたときから銀の丸鋲を幾つもつけた皮の垂が下がり、両耳には煌く大きな真珠の玉が吊り下げられていた。しかもこの牡鹿は世の常の鹿とは変わって、少しの怖れ気もなく立ち回り人里を訪れ、近寄る者に頸を撫でさえさせるのであった。
Kyparissosがこの鹿を大切にし可愛がり、また何よりの誇りとしていたのも当然のことといえよう。彼は日毎にこの鹿を新しい牧ヘ伴(ともな)い、また清らかな泉へ水を飲ませに行くのを日課としていた。閑なときには美しく咲いた野の花々を積み集めて花冠を作り、この鹿の角にかけてやった。時にはその背に跨って紅の手綱を揺らせ、此処彼処(ここかしこ)と涼しい木陰を拾って進んだ。彼のこの喜びがついに際限もなく深い悲しみに変わる日がとうとうやって来た。それはとりわけて暑い夏の日盛りだった。疲れた鹿はすっかり伸びてしまって草原に身を臥せていたが、やがて渇を覚えたものか、起ち上がると繁みの中の涼しい木立の陰にある泉の水を飲みに出かけた。Kyparissosは昼の憩いに槍を投げて練習していた。青年は疲れを知らない。何時しか熱中していた彼は槍を抜き取ると、力の限り庭のほうへ投げ返した。槍は思ったより勢いよく空を切って、木立の中に突き刺さった。何者かの倒れる音、微かな呻き声。不審に思って駆け寄った少年が見つけたものは、鋭い穂先に胸を貫かれてもう息も絶え絶えな鹿の姿だった。
その無惨な様を見るより、悔いと悲しみとに、少年は自分も共に死をひたすら願うのであった。アポローンはいうまでもなく、すぐ馳せつけて彼を慰めた。そして嘆きも程ほどにして身を傷(やぶ)らぬようにと諌めた。しかし少年はただひたすら身も世もあられず、泣き悲しむばかりだった。涙にくれながら御神にせめてもの慈(めぐ)みの徴(しるし)に永遠(とこしえ)に自分がこの愛する者の死をいたむことを容(ゆる)たもうよう願うのだった。その頬からすべての歓喜が去って色蒼ざめ、やがて身体じゅうから血の気が退いてなく成り果てると、絶え間もない嘆きに生の力は尽き、固い痺れが手足を襲い始めた。やがてそれらは凝固して感覚のない樹の皮で蔽われ始めた。今しがた迄匂やかな眉の上に垂れ下がっていた髪の毛は緑の色の葉添えに変わった。とうとう彼は星空にまで高い梢を揺る、それでも優雅に憂いに満ちたくろずんだ緑の喬木に変わった。御神は深い溜息をされると、樹に向って言われた。
「私は永遠にお前を悼(くや)もう、お前はまた永遠にいつも他(ひと)を悼んでゆくがいい。そしてお前の場所はこれからはいつも墓傍に定められよう」
これがKyparissos、あの糸杉(キュパリッソス)、つまりCypress(サイブレス)樹の身の上であった。
その無惨な様を見るより、悔いと悲しみとに、少年は自分も共に死をひたすら願うのであった。アポローンはいうまでもなく、すぐ馳せつけて彼を慰めた。そして嘆きも程ほどにして身を傷(やぶ)らぬようにと諌めた。しかし少年はただひたすら身も世もあられず、泣き悲しむばかりだった。涙にくれながら御神にせめてもの慈(めぐ)みの徴(しるし)に永遠(とこしえ)に自分がこの愛する者の死をいたむことを容(ゆる)たもうよう願うのだった。その頬からすべての歓喜が去って色蒼ざめ、やがて身体じゅうから血の気が退いてなく成り果てると、絶え間もない嘆きに生の力は尽き、固い痺れが手足を襲い始めた。やがてそれらは凝固して感覚のない樹の皮で蔽われ始めた。今しがた迄匂やかな眉の上に垂れ下がっていた髪の毛は緑の色の葉添えに変わった。とうとう彼は星空にまで高い梢を揺る、それでも優雅に憂いに満ちたくろずんだ緑の喬木に変わった。御神は深い溜息をされると、樹に向って言われた。
これがKyparissos、あの糸杉(キュパリッソス)、つまりCypress(サイブレス)樹の身の上であった。
午前、北海道は旭川勤務に単身赴任している塾友のK氏が年賀の挨拶に訪ねてくれた。仕事部屋に飾ってある昨年暮れの忘年会の写真を見て懐かしがりながら、「早く、忘年会に復帰したいものですね」と言っていた。息子さんは昨年トヨタに就職、娘さんはこの春大学受験とのことである。
Dáphnê(ダプネー)は、テッサリアを貫通する大河Peneios(ペーネイオス)の河神の娘であった。アポローン神がピュートの大蛇を退治したとき退治したとき(何となく「八岐大蛇」の話に似ている)、彼は天上で愛神Eros(エロース、Cupido)に出遭った。この小童は、人も知るように裸形でいつも弓と矢を手挟んでいる。今しも悪龍を退治した手柄に心膨れたアポローンは、その小賢しい様子を見るなり揶揄って言った。「おい、悪戯小僧奴、大人の持つ武器を玩具にして、どうしようってんだ。そいつは僕の道具だよ。僕は十分な力と確かな技倆を持っている。それで狙いも誤たず、野獣でも悪い奴でも射て取るんだ。今が今とてほら、あそこに谷々を覆って延びている巨龍を退治してきたのだぞ。お前はせいぜい炬火(たいまつ)でも持って隠れた恋の通い路を照らしてやるのが分相応だろう。僕と腕比べをして争おうなんて考えちゃいけないよ」
こういうとErosは可愛い眉を昂(あ)げて、「君の箭はいかにも何でも射通すそうだがね、僕の矢は君でさえ射抜いてしまうんだよ。人間が神々に劣るくらい、丁度それだけ君の誉れも、僕の力に敵うまいというものさ」こう言って彼は翼を揺(ゆ)り立てて、遥かの空へそのまま翔って行ったが、パルナッソスの頂に着くと、背の箙から2本の矢を取り出して、それを弦にあてがった。一方は鋭いぴかぴか光る黄金の鏃のついた箭で、当たった者を愛しい思いに燃立たせる矢、もう一方は鈍く曇った鉛を端につけた矢でこれに当たれば、ただ人が疎ましく厭(いと)ましく思われてくるのだった。エロースはこの鉛の箭を取ってペーネイオスの河の神の娘に向けて射た。それからもう一方は、密にアポローンの胸を狙って射放たれた。
Dáphnêはまだ恋などという言葉を耳にするのも厭わしくただ森の寂(しず)けさを愛して、野山に獣を追って歩いた。彼女の髪はただ一条の細いバンドで束ねられたばかりに白い項(うなじ)に垂れかかり、すんなりとした肩には箙(えびら)を吊るした。短い上衣は膝に達せず、紅の行縢(むかばき)が形の良い脹脛(ふくらはぎ)をしっかと締め付けているだけだった。彼女の手を求め、父の河神を訪ねる若殿原は、近隣の国だけではなく、遥かな山を越えたラピタイの中にも数多くあった。しかし彼女は求婚者等というものには一顧も与えず、婚礼のことを父から言われると、耳までまっ赤に染めて強く首を振るのだった。そして父親の首に縋りながら甘えた声で、「お父様お願いですから、私に何時までも処女(きむすめ)のままでいさせて下さいまし。あのアルテミス女神さまの御父親だっても、それをお許しになっておいでですのに」と言うのであった。彼女の父ペーネイオスは止むを得ず娘の言うままに、それを見過ごしていたが、彼女の美しさが、何時までもその願いを容(ゆる)してはおかなかった。アドメートスの羊を監督(みと)るアポローン神は、時折牧場を横切って行く少女の姿にずっと前からもう胸を焦がしていた。彼女の暁の星のようにきらきらしく仄めく瞳に、さすが神の予言の力も早くから失われていた。彼は少女の匂やかな口許を見つめ鮮やかなその色に見とれはするが、やがてそれだけでは満足できなくなった。白い指や臂(ただむき)、形地のよい頚すじから肩、それらは見惚れる隙(ひま)も与えず、木立の中へ突き入って消えてしまう。そして彼が呼んでも振り向いてもみず答えようともしない。さすがの御神も一介の鄙びて荒くれた牧夫にしか彼女の眼には写らないのか。いつの間にか彼は我ともなく少女の後を追いかけていた。
逃げ行く少女の姿は、一際愛らしく見えた。風に翻る衣は形の好いふっくらした腿を露に見せた。そして爽やかな五月の風に彼女の亜麻色の髪は、煌きながら靡いて流れた。若々しい御神はもう甘たるい言葉で誘うのは止めた。一段の切なさを加えた胸のとどろきが彼の足に拍車をかけた。競走も最早や終わりに近付くと見えた。アポーロンは今にも達せられようという望みに歩みを速め、少女はひたすら恐れに足を駆り立てられた。それにしてももう彼女の力は尽き果てるに近かった。恐怖に色も蒼ざめて、背中に迫ってくる足音に総毛立ちなが、やっと眼の前に現れてきた父であるペーネイオスの流れに対って、彼女は叫んだ。
「お父様たすけて。私をこの男の人から護って。もしお父様が神様ならば、私の美しさをこの人のものにさせないでくださいまし」少女の祈りが、まだ口許から去るか去らないかに、劇しい痺れが彼女の足を捉えた。そしてその脇腹は見る間に固い樹皮で覆われて行った。ふさふさと初夏の太陽に輝いていて波打っていた金髪は緑の葉に変わり、両腕は同じようにすんなりとした枝となった。今しがた迄あれほど疾(はや)く馳っていた両脚も、今は地中に深く入り込んだ根に変じ、その頭は今では微風にそよぐ梢に過ぎない、ただ変わらないのは趣こそ異なれ前に等しく輝かしい美しさである。この新しい姿になっても、アポローンはまだ彼女を愛していた。其の気の幹へ手を当てると樹皮の下ではまだ心臓が優しく鼓動しているように感じられた。彼は樹の幹を耐え切れぬ思いで胸に抱きしめると、そっと唇を押し当てた。すると今でもまだその木は、縮かんで彼を避けるかのように思われた。とうとう耐え切れずに御神は樹に向かって声を上げて名を呼んでさけぶのであった。
月桂樹がアポーロンの栄えの象徴として、文武の誉を獲た人々の頭に、栄冠として献ぜられるのはこうした謂れに基くと言い伝えられる。月桂樹はギリシア名はダプネーである。
ギリシア神話:ApollonとAdmetos(2009年12月31日より続く)
アポローンの胸のうちはこれで収まるものではなかった。最愛の息子に対する過酷な処置に激昂したが、さすがにゼウスに対してははむかうことは出来なかった。そこで息子を殺害した道具である雷火の製造人Cyclopes(キュクローペス)を虐殺して僅かに胸中の憤悶を遣った。しかし、たとえアポローンであろうが、神々の間でのこの乱暴は容(ゆる)されえなかった。身内の者の血を流せば追放されなければならない。この不文の掟によって、アポローンは1年の間オリュンポスを追われ、死ぬべき人間の召使となり、隷従の憂目を忍ばねばならなかった。とはいえ、これもゼウスの格別の情によって、彼が送り出されたのは、人間のうちでも取り分けて正義を愛し慈悲に豊かな者の許へであった。テッサリアはペライの領主Admetus(アドメートス)がその人である。勿論アポローンは身元引受人なしで彼の受領に入ったわけであるが、情の厚い彼の待遇に気を良くしたアポローンは、早速得意の畜産学を用いて王の飼養する牛や羊などをどんどんと太らせ、また蕃殖させた。王の家畜は病気に罹らず、狼や豺(やまいぬ)などにも襲われず、王の作物には蝗やその他の害虫もつかず、野鼠も荒らさなかった。当然のことながら王はこの若い牧場管理者の手腕に感服し、十分に報いてやったに違いない。それに対してアポローンの方も、根がお人好しの坊ちゃん育ちときているから、一段と気を好くして、腕を揮った次第であった。王の息子Eumelos(エウメーロス)が後にトロイア遠征に加わったとき、彼の馬は抜群の駿足として聞こえたほどであったが、それはアポローンが常日頃ペライの町外れの名高いヒューペレアの水を飲ませていた馬だった。

アポローンが王のために働いたのは、この農場管理についてだけではなかった。同じテッサリアで程遠からぬイオールコスの町はPelias(ペリアース)の支配下にあったが、その娘Alkestis()は、父親に似ぬ気立ての優しさと、それ以上に容姿の美しさで、国々に聞こえていた。従ってその手を求めて群がる若殿原も決して尠(すくな)い数ではなかった。それに対する最大の障害と言うのはこの片意地な父親であった。それは車駕を一匹の獅子と一匹の野猪とに牽かせて花嫁御を迎えに来る者へという難題であった。Admetusも勿論Alkestisに思いを常日頃から寄せた青年の一人であった。予言の神であるアポローンが彼の胸中を察するのはいと容易(たやす)いことであったろう。御神は何とか辞を設けてAdmetusに告白させ、そんなことはお易い御用でと山中に分け入ると、忽ち獅子と野猪を手馴づけて車を牽かせて出てきた。こうしてAlkestisはAdmetusと賑々しく婚儀を挙げることになったが、そのうちに早くも彼の任期である一年が経ってしまって、訣(わか)れを告げねばならないことになった。アポローンは過ぐる一年の間の親切な持成しの褒美として、将来Admetus王が寿命を待たずに病のために死のうというとき、誰か自ら進んで変わりに冥府(よみ)へ行こうというものがあれば、命を助けられることを約束した。こうして、間(あいだ)に一子Eumelos(エウメーロス)が生まれて間(ま)もなく彼が遽(にわ)かの病で死のうというとき、父も母も、勿論他の何人も代わりに死のうと言わないのを、最愛の妻Alkestisが代わりに死んだのである。
ついでながら、Asklepios(アスクレーピオス)は、この事件の後、アポローンの憤慨ももっともとあって天上に神とせられ、Hippolytus(ヒッポリュトス)も同じく神化された。その後もAsklepioは医療の神として広く信仰され、各地に神殿や治療所が多く置かれた。Asklepiosの表徴としては第一に蛇、それから遊行者の杖と医者の薬を飲ませる盃などで、神前に捧げる贄(にえ)としては雌鶏が普通とされている。
プロフィール
ハンドルネーム:
目高 拙痴无
年齢:
93
誕生日:
1932/02/04
自己紹介:
くたばりかけの糞爺々です。よろしく。メールも頼むね。
sechin@nethome.ne.jp です。
sechin@nethome.ne.jp です。
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