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伯父大木惇夫は、軍歌めいた詩もいくつか発表しています。でも、あまり勇ましい歌ではないようです。

 祖国の柱
    作詞 大木惇夫
    作曲 服部良一

高梁(こうりゃん)枯れて烏啼く
赤き夕陽の国境
思えば悲しつわものは
曠野の露と消え果てて
■今は眠るかこの丘に

祖国のために捧げたる
いとも尊き人柱
苔むすかばね霊あらば
わが呼ぶ声に谺(こだま)して
■塚も動けよ秋風に

手向(たむ)けの花は薫れども
赤き夕陽の血に染みて
風愁々の音を忍ぶ
幽魂ながくとどまりて
■祖国を護れ亡き友よ
https://www.youtube.com/watch?v=m3_a1ky-Gjo

 
ラジオテキストとして日本放送協会が発行した「国民歌謡」の楽譜が第一輯「心のふるさと・祖国の柱」(1936年11月16日発行)から第七六輯「国民協和の歌・歩くうた」(1940年12月15日発行)まで76冊あるそうです。

 「祖国の柱」は昭和11年、大木の徳八じいさんの危篤の知らせを受けた母に連れられて上京した時、大木の叔父たち(惇夫の弟たち)が口ずさんでいるのを真似て、私も歌っていたと言います。

 姉から口伝えに聴いて曲を書き取りましたが、時を越えて人の心を打つものがあります。ようやく見つけた楽譜は作詞作曲とも日本の一流の手になるもの。さすが。当時の状況からしてお二方とも意に染まぬ仕事であったと推察していますが、軍歌ゆえに偏見をもつのは如何かと考えます。
 軍のイメージソング、戦争昂揚という目的からは程遠いものと思います。軍歌の体裁はとっていますが音楽性もたかく、軍国主義への反骨反発が秘められていると感じるのは私だけでしょうか。軍には音楽的素養がなかったのか、よくこの曲を軍歌と認めたものだと思います。  (とあるブログより)

「海を征く歌(戦友別盃の歌)」
         
作詞:大木惇夫
         
作曲:古関裕而
君よ別れを言うまいぞ 口にはすまい生き死にを
 遠い海征くますらおが なんで涙を見せようぞ

熱い血潮を大君に 捧げて遂ぐるこの胸を
 がんと叩いて盃に 砕いて飲もうあの月を

僕は遥かなツンドラの 北斗の空を振るわすぞ
 君は群がる敵艦を 南十字の下に撃て

誓い誓うて征くからは きつと手柄をたてようぞ
 万里の雲にうそぶけば 波は散る散る雲の華


https://www.youtube.com/watch?v=79-YXGPPMQ0
https://www.youtube.com/watch?v=EWO4WjQImrw

 
この歌の出る2年余り前、大木惇夫はインドネシアのバタビアに文化部隊(兵隊を慰問したり現地をレポートする作家、音楽家等の一行)として赴任していました。その1年後、現地で「海原にありて歌へる」という詩集を発刊します。そしていつしかこの詩集が現地の兵隊のあいだで評判になり、さらには内地でも若者をはじめ多くの人に読まれるところとなります。
 「海を征く歌」は、その詩集の中でもとりわけ熱烈に支持された「戦友別盃の歌」をいわば自身の手でダイジェスト化したものです。さほど長くないのでその全文をのせますと、
言うなかれ、君よ、わかれを、
世の常を、また生き死にを、
海ばらのはるけき果てに
今や、はた何をか言わん、
熱き血を捧ぐる者の
大いなる胸を叩けよ、
満月を盃にくだきて
暫し、ただ酔いて勢(きほ)へよ、
わが征くはバタビヤの街、
君はよくバンドンを突け、
この夕べ相離(さか)るとも
かがやかし南十字を
いつの夜か、また共に見ん、
言うなかれ、君よ、わかれを、
見よ、そらと水うつところ
黙々と雲は行き雲は行けるを。
 
(「戦友別盃の歌」南支那海の海上にて 大木惇夫)

 戦時下という異常事態にあっての友との別離を抒情的にうたった詩で、戦争詩の最高傑作という評価さえあります。
 時代の空気というものがあるので、いまの若い人が読んでもピンとこないかもしれませんが、当時の若者の多くが熱烈に支持し、朗読したといわれています。


 


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1932/02/04
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