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菖蒲(あやめぐさ)を詠んだ歌2
巻8-1490: 霍公鳥待てど来鳴かず菖蒲草玉に貫く日をいまだ遠みか
 
10-1955: 霍公鳥いとふ時なしあやめぐさかづらにせむ日こゆ鳴き渡れ
 
◎あやめぐさは、水辺に自生するさといも科の多年草(あやめ科のハナショウブとは別)です。根茎、葉など全体から独特の匂いを発し、 これが邪気を払い疫病を除くといわれて、端午の節句に使用されました。「あやめぐさを 縵にする日」は、五月五日。 『続日本紀』には、元正天皇が、「五月五日に宮廷に出仕する際、官人が菖蒲を縵にしてくるよう」にと詔したことが伝えられています。
 この歌は、巻18にも再録されている(4035)。左大臣橘諸兄の使者、田辺史福麻呂を、大伴家持が越中の館で饗応した時に、 福麻呂が自作の歌と共に、古詠として誦詠しました。
18-4035: 霍公鳥いとふ時なしあやめぐさかづらにせむ日こゆ鳴き渡れ
 
※田邊福麻呂(たなべ の さきまろ、生没年不詳)
 奈良時代の万葉歌人。姓は史(ふひと)。田辺氏(田辺史)は百済系渡来氏族で、西文氏のもとで文筆・記録の職掌についた史部の一族と想定されます。748年(天平20年)橘諸兄の使者として越中守・大伴家持のもとを訪れています。福麻呂の和歌作品は『万葉集』に44首が収められています。巻18に短歌13首があり、巻6・巻9にある長歌10首とその反歌21首は「田辺福麻呂の歌集に出づ」とあります。それらの歌は用字・作風などから福麻呂の作と見られています。

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