巻19-4238: 君が行きもし久にあらば梅柳誰れとともにか我がかづらかむ
※久米広縄(くめの-ひろなわ)
生没年不明。奈良時代の官吏。天平20年(748)から3年あまり越中掾(じょう)。越中守大伴家持(おおともの-やかもち)らと布勢水海(ふせのみずうみ)(富山県氷見(ひみ)市)をたずね、内蔵縄麻呂(くらの-なわまろ)宅の宴に参加するなどして歌をよみました。「万葉集」巻18・19に、長歌1首、短歌8首があります。名は「ひろただ」「ひろつな」ともよみます。
巻19-4241: 春日野に斎く三諸の梅の花栄えてあり待て帰りくるまで
※藤原清河(ふじわらの-きよかわ)
生没年不明。奈良時代の廷臣。房前(ふささき)の4男。天平12(740)年従五位下、天平勝宝元(749)年参議、翌年遣唐使となり、同4年副使吉備真備 (きびのまきび)らとともに玄宗皇帝に謁し帰国の途中、暴風にあい安南に漂着、阿倍仲麻呂と長安に戻り、唐朝に仕え特進秘書監となりました。日本の朝廷では清河を帰国させるために使者をつかわしましたが、安史の乱に妨げられて帰国できませんでした。宝亀8(777)年、次の遣唐使が入唐したときも勅して清河に帰国を促しましたが、帰りませんでした。
巻19-4277: 袖垂れていざ我が園に鴬の木伝ひ散らす梅の花見に
※藤原永手(ふじわらの-ながて)
[生]和銅7(714).奈良。[没]宝亀2(771).2.22. 奈良。
奈良時代後期の廷臣。藤原北家の祖房前の子。天平勝宝6 (754)年従三位、のち権中納言に任じ,恵美押勝 (藤原仲麻呂)の乱中に大納言に進み、道鏡の政権のもとにあっても、右大臣、左大臣となり、道鏡排斥の頂点に立ってこれを成功に導きました。また称徳天皇が後嗣を決めずに没すると、白壁王を立てて光仁天皇とし、その功により宝亀1 (770) 年正一位、山城国相楽郡に 200町の山地を賜わったといいます。
巻19-4278: あしひきの山下ひかげかづらける上にやさらに梅をしのはむ
巻19-4282: 言繁み相問はなくに梅の花雪にしをれてうつろはむかも
※石上宅嗣(いそのかみのやかつぐ、729~781年)
奈良時代の文人、政治家。古代の豪族物部氏の一族石上氏の出身で、祖父は左大臣の麻呂、父は中納言の乙麻呂です。宅嗣は才敏で姿、ようすがすぐれ、言語、動作が閑雅であったと伝えます。はじめ相模、三河、上総などの国守を歴任、761年(天平宝字5)に遣唐副使に任ぜられますが、翌年なぜかこの職を解かれています。このころ、藤原良継らとともに、当時の実力者藤原仲麻呂を除こうと企てますが、良継がひとり責を負って罪を許されたといいます。
巻19-4283: 梅の花咲けるが中にふふめるは恋か隠れる雪を待つとか
※茨田王(まんだのおほきみ)
生没年不明。奈良時代の官吏。
宮内大輔(たいふ)、越前守、越中守となります。従五位上。天平勝宝(てんぴょうしょうほう)5年(753)石上宅嗣(いそのかみの-やかつぐ)宅の宴でよんだ歌1首が「万葉集」巻19にみえます。
巻19-4287: 鴬の鳴きし垣内ににほへりし梅この雪にうつろふらむか
巻20-4496: 恨めしく君はもあるか宿の梅の散り過ぐるまで見しめずありける
※大原今城( おおはらの-いまき、生没年不詳)
奈良時代の皇別氏族出身の官僚です。歌人。姓は真人。もと今城王といいました。穂積皇子と大伴坂上女郎の子とにわれます。天平11(739)年高安王らと共に大原真人の氏姓を与えられました。同20年兵部少丞正七位下などを経て、天平勝宝9(757)年、従五位下、治部少輔。天平宝字7(763)年左少弁に任じられますが、藤原仲麻呂の乱に連座して官職位階を奪われたようです。宝亀2(771)年従五位下に復し兵部少輔になり、翌年駿河守に任じられたとあるのが史料にみえる官歴の最後です。『万葉集』に18首の歌を残し、大伴家持と親交のあったことが知られます。
巻20-4497: 見むと言はば否と言はめや梅の花散り過ぐるまで君が来まさぬ
巻20-4500: 梅の花香をかぐはしみ遠けども心もしのに君をしぞ思ふ
巻20-4502: 梅の花咲き散る春の長き日を見れども飽かぬ礒にもあるかも
※伊香王(いかごおう、生没年不詳)
奈良時代の官吏。敏達(びだつ)天皇の子孫といいます。天平勝宝(てんぴょうしょうほう)3年(751)甘南備(かんなび)の氏をあたえられました。主税頭(ちからのかみ)、越中守(かみ)などをつとめました。大伴家持(やかもち)と親交があり、「万葉集」に和歌4首がのせられています。
以上で、「梅を詠んだ歌」をおわります。
sechin@nethome.ne.jp です。
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