瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
[3073] [3072] [3071] [3070] [3069] [3068] [3067] [3066] [3065] [3064] [3063]

(たく)を詠める歌5
20-4408: 大君の任けのまにまに島守に.......(長歌)
題詞:(天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)陳防人悲別之情歌一首[并短歌]
題訓(天平勝宝七歳乙未二月、相替わりて筑紫に遣さゆる諸国〈くにぐに〉の防人〈さきもり〉らの歌)防人の別れを悲しむ情〈こころ〉を陳〈の〉ぶる歌一首幷に短歌
原文:大王乃 麻氣乃麻尓々々 嶋守尓 和我多知久礼婆 波々蘇婆能 波々能美許等波 美母乃須蘇 都美安氣可伎奈埿 知々能未乃 知々能美許等波 多久頭怒能 之良比氣乃宇倍由 奈美太多利 奈氣伎乃多婆久 可胡自母乃 多太比等里之氏 安佐刀埿乃 可奈之伎吾子 安良多麻乃 等之能乎奈我久 安比美受波 古非之久安流倍之 今日太仁母 許等騰比勢武等 乎之美都々 可奈之備麻勢婆 若草之 都麻母古騰母毛 乎知己知尓 左波尓可久美為 春鳥乃 己恵乃佐麻欲比 之路多倍乃 蘇埿奈伎奴良之 多豆佐波里 和可礼加弖尓等 比伎等騰米 之多比之毛能乎 天皇乃 美許等可之古美 多麻保己乃 美知尓出立 乎可之佐伎 伊多牟流其等尓 与呂頭多妣 可弊里見之都追 波呂々々尓 和可礼之久礼婆 於毛布蘇良 夜須久母安良受 古布流蘇良 久流之伎毛乃乎 宇都世美乃 与能比等奈礼婆 多麻伎波流 伊能知母之良受 海原乃 可之古伎美知乎 之麻豆多比 伊己藝和多利弖 安里米具利 和我久流麻埿尓 多比良氣久 於夜波伊麻佐祢 都々美奈久 都麻波麻多世等 須美乃延能 安我須賣可未尓 奴佐麻都利 伊能里麻乎之弖 奈尓波都尓 船乎宇氣須恵 夜蘇加奴伎 可古登〃能倍弖 安佐婢良伎 和波己藝埿奴等 伊弊尓都氣己曽
              万葉集 巻20-4408
           作者:大伴家持
よみ:大君(おほきみ)の 任()けのまにまに 島守に 我が立ち来れば ははそ葉の 母の命(みこと)は み裳()の裾 摘み上げ掻き撫で ちちの実の 父の命(みこと)は 栲(たく)づのの 白ひげの上(うへ)ゆ 涙垂り 嘆きのたばく 鹿子(かこ)じもの ただひとりして 朝戸出の 愛(かな)しき我が子 あらたまの 年の緒長く 相見ずは 恋しくあるべし 今日だにも 言どひせむと 惜しみつつ 悲しびませば 若草の 妻も子どもも をちこちに さはに囲み居 春鳥の 声のさまよひ 白栲の 袖泣き濡らし たづさはり 別れかてにと 引き留め 慕ひしものを 大君(おほきみ)の 命(みこと)(かしこ)み 玉桙の 道に出で立ち 岡の崎 い廻()むるごとに 万(よろづ)たび かへり見しつつ はろはろに 別れし来れば 思ふそら 安くもあらず 恋ふるそら 苦しきものを うつせみの 世の人なれば たまきはる 命も知らず 海原(うなはら)の 畏(かしこ)き道を 島伝ひ い漕ぎ渡りて あり廻(めぐ)り 我が来るまでに 平(たひら)けく 親はいまさね 障(つつ)みなく 妻は待たせと 住吉(すみのゑ)の 我が統()め神に 幣(ぬさ)(まつ)り 祈(いの)り申して 難波津に 船を浮け据ゑ 八十(やそ)()貫き 水手(かこ)(ととの)へて 朝開き 我は漕ぎ出ぬと 家に告げこそ
 
意訳:大君の仰せのままに、島守として私が家を出て来た時、ははその母の君は裳の裾をつまみ上げて私の頭を撫で、ちちの実の父の君は栲づのの白いひげ伝いに涙を流して、こもごも嘆いておっしゃることに、「鹿の子のようにただひとり家を離れて朝立ちして行くいとしい我が子よ、年月久しく逢わなかったら恋しくてやりきれないだろう、せめて今日だけでも存分に話をしよう」と、名残を惜しみながら悲しまれると、妻や子たちもあちらこちらからいっぱいに私を取り囲んで、春鳥の鳴き騒ぐようにうめき声をあげてせつながり、白い袖を泣き濡らして、手に取り縋って別れるのはつらいと私を引き留め追って来たのに、大君の仰せの恐れ多さに旅路に出で立ち、岡の出鼻を曲がるごとに、いくたびとなく振り返りながら、こんなにはるかに別れて来ると、思う心も安らかでなく、恋い焦がれる心も苦しくてたまらないのだが・・・、生身のこの世の人間である限り、たまきはる命のほども計りがたいとはいえ、どうか、海原の恐ろしい道、その海原の道を島伝いに漕ぎ渡って、旅路から旅路へとめぐり続けて私が無事に帰って来るまで、親は親で幸福でいてほしい、妻は妻で達者でいてほしいと、我が神と縋る住吉の海の神様に幣を捧げてねんごろにお祈りをし、難波津に船を浮かべ、櫂をびっしり取り付け水手を揃えて、朝早く私は漕ぎ出して行ったと、家の者に知らせて下さい。


 

この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
URL
コメント
パスワード Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
プロフィール
ハンドルネーム:
目高 拙痴无
年齢:
92
誕生日:
1932/02/04
自己紹介:
くたばりかけの糞爺々です。よろしく。メールも頼むね。
 sechin@nethome.ne.jp です。


小冊子の紹介
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
最新コメント
[m.m 10/12]
[爺の姪 10/01]
[あは♡ 09/20]
[Mr.サタン 09/20]
[Mr.サタン 09/20]
[ままだいちゅき 09/20]
[ままだいちゅき 09/20]
[ままだいちゅき 09/20]
[爺 09/20]
[ままだいちゅき 09/20]
最新トラックバック
ブログ内検索
カウンター
Powered by ニンジャブログ  Designed by ゆきぱんだ
Copyright © 瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り All Rights Reserved
/