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景公出獵,上山見虎,下澤見蛇。歸,召晏子而問之曰:「今日寡人出獵,上山則見虎,下澤則見蛇,殆所謂不祥也?」

晏子對曰:「國有三不祥,是不與焉。夫有賢而不知,一不祥;知而不用,二不祥;用而不任,三不祥也。所謂不祥,乃若此者。今上山見虎,虎之室也;下澤見蛇,蛇之穴也。如虎之室,如蛇之穴,而見之,曷為不祥也!」

晏子春秋-内篇[諫下第二][10]

 

景公出猟(しゅつりょう)す、山に上りて虎を見、澤に下りて蛇を見る。

帰す、晏子を召して之を問ひて曰く、 「今日、寡人(かじん)出猟す、山に上らば則ち虎を見、澤に下らば則ち蛇を見る、殆(ほとん)ど所謂不祥なりや」と。

晏子対へて曰く、「国に三不詳あり、是れ與(あずか)らず。夫れ賢有りて知らざるは一の不詳なり。知りて用ひざるは二の不詳なり。用ひて任せざるは三の不詳なり。所謂不詳とは、乃ち此の若(ごと)き者なり。

今、山に上りて虎を見しは、虎の室なり。澤に下りて蛇を見しは、蛇の穴なり。虎の室に如(ゆ)き、蛇の穴に如(ゆ)き、而して之を見る、曷為(なんす)れぞ不祥ならん、と。

 

景公が出猟した。山に登ると虎と出会い、沢に下ると蛇に出会った。帰って晏子を召して問うて云った。

「今日、吾は狩りをしたが、山に行けば虎に出会い、沢に行けば蛇に出会った。これは何か好ましくないことなのではないか」と。

すると晏子が答えて云った。「国には三つの不詳がありますが、そのような出来事とは違います。野に遺賢ありて知らぬこと、これ一の不詳です。賢あるを知りながら用いない、これ二の不詳です。賢を用いながら任せることができない、これ三の不詳です。いわゆる不詳と申しますのは、このような事をいうのです。

今、山に登って虎に出会うは虎の室であり、沢を下って蛇に出会うは蛇の穴に過ぎません。虎や蛇の棲みかに自ら赴いてこれに出会う、それがどうして好ましくないことになりましょう」と。
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