瘋癲爺 拙痴无の戯言・放言・歯軋り
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本日より、牧野富太郎の『植物記』より「春の七草」を抜粋記載します。
 
セリ
 
 
セリは水斳(みずせり)で通常芹の字を使っているが実を言うと芹一字だけでは不徹底である。セリは原頭、山足などの水に生えその白いヒゲ根を泥中に下している。採って見ると白い根が多いので故に古歌にはネジログサと称えた。溝などの中を覘(のぞ)くと早春から既にそのセリが一杯に繁茂している。古人はこれを望み見てセリとは迫(せ)りこ迫りこして生えているからそれでそういうのだといっているが、果してそれが語原であるか否かなお再考を要する様に思う。この様に実際セリは常に密集して生えているが、考えて見るとセリにはそう生える原因が存している。セリの茎が立って梢に花の咲く時分前後モウ既にその茎の下部から四方八方に匐枝を引き長く泥面を這うている。その匐枝には多くの節がある。その各節から秋以後皆株をなして葉を萌出するのでそれで溝一杯に繁茂するのである。ツマリ株が多数に出来たのである。春にこのセリを摘む時分には最早その前年の匐枝は多くは既に腐り去っているから、そこでセリが一株一株の苗となって生えている事になる。
 
食う為めにセリを摘む事は昔からする事であるから古歌にはまたツミマシグサともいった。また『万葉集』に「君がため山田の沢にゑぐ採むと雪消の水に裳の裾ぬれぬ」という歌がある。このエグは人によりては今日いうクログワイだとしているが、その歌の意から見ればどうもこれはセリの事であらねばならないが今日の処私はセリにエグの一名ある事を知らない。そして却(かえ)って前記のクログワイにはエグあるいはイゴなどの方言がある。しかしこの者ではここは都合が悪い。
 
セリの葉は分裂して多くの小葉と成っている。すなわちいわゆる複葉である。柄本に葉鞘はかま)があるがこれがこの属する傘形科の特徴である。花は白くて小さく夏に咲いて傘形花穂を成し、花後に小さい実が集り熟し落ちると仔苗が生ずる。それゆえセリは種子からも生えれば匐枝からも萌出し繁殖甚はなはだ盛んである。
 
セリの栽培した者はよく八百屋に売っているが皆葉柄がすこぶる長い。これは水田に於て密に叢生させて作る故、上へ上へと延んでこんなに長く成っているのである。しかし野に在る者はカジケテ短いけれど香はズット高い。これを田ゼリと呼んでいる。
 
さて芹の字ダガこれは斳と同じである。また菫とも同じである。しかるに今この菫を二様に使い一は水斳のセリであるが、一は通常これを菫葉として別の一種に使っている。日本の学者はその一名を旱菫すなわち旱芹というもんだからセリが陸に生えた者の様に思ってこれをハタケゼリと訓じている。そして実は菫菜なるその本物を知らなかったのである。
 
 
右の菫菜なる者は支那、満洲、朝鮮には昔から圃に作って野菜にしていた。圃に作るから旱芹である。これは西洋にもあって西洋の者は前にはオランダミツバ(一にキヨマサニンジンという。これには一つの説話があれども今は略する)といっていたが今日ではセロリ(Celery)といって西洋野菜の一つとなっている。そして学術上の名は Apium graveolens L. である。
 
 
菫の字は前に書いた通りの芹の字と同じで、あるいはセリに使いあるいはセロリに使うべき字面であって、決してその他の植物に用うる事は出来ないものである。しかるに世人はこれをスミレに使って平然としてスマシているのは滑稽至極で、殊更に我が無学無識を広告している様なもんダ。もし世人がスミレを支那の名で書きたければ宜(よろ)しく菫々菜と書くべきである。そうすればまずはスミレとなるが、菫の一字もしくは菫菜の二字では絶対にスミレとは成らないのである。

ウェブニュースより
 
小池都知事、首都封鎖回避へ「一層協力を」 ――東京都は23日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、拡大防止のための「新たな対応方針」を公表した。重症患者の入院を受け入れる病床700床を整備するほか、テレワークの推進などを盛り込んだ。小池百合子知事は感染者が大きく増えると首都封鎖となる可能性を指摘し、都民や事業者への幅広い協力を呼びかけた。
 
 
都内での懸念材料として、海外からの帰国者らを起点として感染者が爆発的に増加する「オーバーシュート」がある。小池氏は同日の記者会見で「事態の推移によりロックダウン(都市の封鎖)の可能性がある」と指摘。「それはなんとしても避けなければならない。一層の協力をお願いしたい」と強調した。
 
 
患者が増える可能性に対しては「重篤・重症」「中等症」「軽症」と症状に応じた医療体制を整備する。都立・公社病院に民間病院も加えた医療機関で4000床規模の病床の確保を目指す。軽症者は一般病床のほか、自宅や宿泊施設で療養してもらうことも視野に入れる。
 
人の密集を防ぐため、企業にはテレワークへの協力を呼びかけた。小池氏はテレワークに取り組む中小企業対象の都の補助金について、想定をはるかに超える申し込みがあったことを明らかにした。その上で「いま審議中の(2020年度)予算案を超えて、何をすべきか今後まとめていきたい」と、補助制度の拡充を示唆した。   (日本経済新聞 2020/3/23 17:40


 

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